「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第6部
琥珀暁・天帝伝 4
神様たちの話、第353話。
ゲートとアロイの「バケモノ退治」。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
4.
「解決? どうやって?」
尋ねたゲートに、モールは玉座の背後に回り込みながら答えた。
「例えばさ、ヒトに姿を変えられるバケモノがいたとして、ソイツが7年前から、ゼロにすり替わっていたとしたらどうよ?」
「……なるほど」
ゲートは苦笑いし、その提案を吟味する。
「そうなりゃ南への無茶な遠征も、遠征隊へ下したひでえ命令も全部、そのバケモノがやったって話にできるってわけか。で、その事実に気付いた俺とゲートが、ゼロの姿をしたバケモノを討った、と。確かにいい話に変わるな。ちょっとした英雄譚だ。
だがちょっと、強引過ぎやしないか? 大体、バケモノなんて話したって、絶滅しちまった今となっちゃ、嘘にしか聞こえんし」
「証拠がありゃいい。実際バケモノがいるってんなら、みんな信じるね」
そう言って、モールは肩に掛けていたかばんから、紫色に光る金属板を取り出した。
「コイツを刺せば、バケモノに変わる。変わったところで、討ち取りゃいいね」
「用意がいいな、あんた。まるで最初からこうしようと思ってたみたいだな」
ゲートの言葉に、モールはニヤリと口角を上げた。
「コイツが自分で勝手に死んだってコト以外は、大体計画通りさ。ソレ以外に、コイツの暴走を止める手は無かったね。例えば君、コイツと真正面からぶつかって、まともに話ができると思ってたね?」
「いや、……正直どうしようかなーとは思ってたところだった」
「えっ!?」
アロイが目を丸くし、ゲートの顔を見る。
「で、ではゲートさん、あなた、何も考えずにここまで来たのですか!?」
「そうなる。いやー、まいったぜマジで」
そう言ってゲラゲラ笑うゲートに、モールも噴き出す。
「ふっふ……、エリザの言った通りのヤツだねぇ、君は。度胸一発、出たトコ勝負の熱血漢。ま、そんだけ潔いバカなら私ゃ、むしろ嫌いじゃないね」
「なーるほど、エリちゃんも最初から一枚噛んでたのか。道理で覚悟決めたツラ作って俺に手ぇ貸してたワケだ。普通はあんな顔しないからな、あの娘は」
「さっすがぁ。……っと、話し込みたいのは山々だけど、手早く済まさなきゃ、いい加減みんなが様子見に来ちゃうだろうしね」
モールはゼロの背中に、金属板を差し込んだ。途端にゼロの姿が変形し始め、着ていた服がびりびりと破け始める。
と、そこでゲートが剣を抜き、モールに向けた。
「何だよ? 早いトコ始末しなって」
「いっこだけ聞きたいことがある。あんた、そうやって簡単に人をバケモノに変えたが――まさかあんたは30年前にも、同じことをやってたんじゃないだろうな?」
「はっは」
モールはゼロだったものから離れ、ゲートの横に立った。
「コレは『リバースエンジニアリング』ってヤツさね。既にはびこってたバケモノたちを研究する過程で出来ちゃった、副産物みたいなもんさ。犯人だと思ってんなら人違いだね」
「……嘘じゃないんだろうな、その口ぶりだと」
「私がやるんならもっと要領良くやるさ。あんなクッソ回りくどいプロトコルなんか組んだりせずにね。……さ、来るよ」
10分後、ゲートとアロイは謁見の間に皆を集め、事の次第を「説明」した。
「……ってわけで、バケモノは俺とアロイが何とかやっつけた。死体はまだ、中にある」
「な、なんと……!?」
閣僚たちが恐る恐る中を確かめ、口々に悲鳴を上げる。
「ひえっ……」
「た、確かにあれは、……どうもバケモノらしい」
「しかしよもや、陛下がバケモノに成り変わられていたとは……」
「道理でなぁ……。確かに最近のあいつは、何かヤバいと思ってたけど」
「……では、本物の陛下は今、どちらに?」
問われて――これもモールに用意してもらった通りに――ゲートが答える。
「恐らくはあのバケモノに食われたんだろう。でなきゃいない理由が付かない。そうだろう?」
「むう……何と言うことだ」
騒然としている閣僚たちから距離を取り、ゲートとアロイは目配せし合った。
(ってことで、後は……)
(ええ。合わせます)
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ゲートとアロイの「バケモノ退治」。
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4.
「解決? どうやって?」
尋ねたゲートに、モールは玉座の背後に回り込みながら答えた。
「例えばさ、ヒトに姿を変えられるバケモノがいたとして、ソイツが7年前から、ゼロにすり替わっていたとしたらどうよ?」
「……なるほど」
ゲートは苦笑いし、その提案を吟味する。
「そうなりゃ南への無茶な遠征も、遠征隊へ下したひでえ命令も全部、そのバケモノがやったって話にできるってわけか。で、その事実に気付いた俺とゲートが、ゼロの姿をしたバケモノを討った、と。確かにいい話に変わるな。ちょっとした英雄譚だ。
だがちょっと、強引過ぎやしないか? 大体、バケモノなんて話したって、絶滅しちまった今となっちゃ、嘘にしか聞こえんし」
「証拠がありゃいい。実際バケモノがいるってんなら、みんな信じるね」
そう言って、モールは肩に掛けていたかばんから、紫色に光る金属板を取り出した。
「コイツを刺せば、バケモノに変わる。変わったところで、討ち取りゃいいね」
「用意がいいな、あんた。まるで最初からこうしようと思ってたみたいだな」
ゲートの言葉に、モールはニヤリと口角を上げた。
「コイツが自分で勝手に死んだってコト以外は、大体計画通りさ。ソレ以外に、コイツの暴走を止める手は無かったね。例えば君、コイツと真正面からぶつかって、まともに話ができると思ってたね?」
「いや、……正直どうしようかなーとは思ってたところだった」
「えっ!?」
アロイが目を丸くし、ゲートの顔を見る。
「で、ではゲートさん、あなた、何も考えずにここまで来たのですか!?」
「そうなる。いやー、まいったぜマジで」
そう言ってゲラゲラ笑うゲートに、モールも噴き出す。
「ふっふ……、エリザの言った通りのヤツだねぇ、君は。度胸一発、出たトコ勝負の熱血漢。ま、そんだけ潔いバカなら私ゃ、むしろ嫌いじゃないね」
「なーるほど、エリちゃんも最初から一枚噛んでたのか。道理で覚悟決めたツラ作って俺に手ぇ貸してたワケだ。普通はあんな顔しないからな、あの娘は」
「さっすがぁ。……っと、話し込みたいのは山々だけど、手早く済まさなきゃ、いい加減みんなが様子見に来ちゃうだろうしね」
モールはゼロの背中に、金属板を差し込んだ。途端にゼロの姿が変形し始め、着ていた服がびりびりと破け始める。
と、そこでゲートが剣を抜き、モールに向けた。
「何だよ? 早いトコ始末しなって」
「いっこだけ聞きたいことがある。あんた、そうやって簡単に人をバケモノに変えたが――まさかあんたは30年前にも、同じことをやってたんじゃないだろうな?」
「はっは」
モールはゼロだったものから離れ、ゲートの横に立った。
「コレは『リバースエンジニアリング』ってヤツさね。既にはびこってたバケモノたちを研究する過程で出来ちゃった、副産物みたいなもんさ。犯人だと思ってんなら人違いだね」
「……嘘じゃないんだろうな、その口ぶりだと」
「私がやるんならもっと要領良くやるさ。あんなクッソ回りくどいプロトコルなんか組んだりせずにね。……さ、来るよ」
10分後、ゲートとアロイは謁見の間に皆を集め、事の次第を「説明」した。
「……ってわけで、バケモノは俺とアロイが何とかやっつけた。死体はまだ、中にある」
「な、なんと……!?」
閣僚たちが恐る恐る中を確かめ、口々に悲鳴を上げる。
「ひえっ……」
「た、確かにあれは、……どうもバケモノらしい」
「しかしよもや、陛下がバケモノに成り変わられていたとは……」
「道理でなぁ……。確かに最近のあいつは、何かヤバいと思ってたけど」
「……では、本物の陛下は今、どちらに?」
問われて――これもモールに用意してもらった通りに――ゲートが答える。
「恐らくはあのバケモノに食われたんだろう。でなきゃいない理由が付かない。そうだろう?」
「むう……何と言うことだ」
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