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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第6部

    琥珀暁・女神伝 2

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    神様たちの話、第356話。
    血の濃さ。

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    2.
     エリザは事業拡大の一環として、中央大陸の東に横たわる大海洋をひたすら東へと突き進み、新たな島や大地が無いか、複数の船団を派遣して探検・探査を繰り返していた。その過程で、エリザは大海洋の果てに無数の島が連なっている地域を発見し、その近辺の集中的な探索を始めていた。
     その内にエリザ自身も、若い頃の血がたぎり出してしまい――孫や側近の子供たちを伴って、自らこの海にこぎ出してしまったのである。



    「ホンマにじっとせえへん人やで、ばーちゃん」
    「ホンマなー」
     孫のゼラナとプリムに両側から挟まれる形で、エリザはケラケラ笑っていた。
    「若さの秘訣や。アンタらも老け込みたくなかったら、キビキビ動きよし」
    「ソレなー。ビートのおっちゃんなんかもう、ばーちゃんより老けた顔してはるもんなぁ」
    「なー」
     三人揃って煙草をふかしているところに、シェリコがやって来た。
    「女将さん、とりあえずぐるーっと回って来ました。無人島っスね、ココ。人っ子一人見当たりませんわ」
    「さよか。食べれそうなんは何かあったか?」
    「ヤシの実的なんがチョコチョコと。後は浜辺でカニみたいなんも見かけました」
    「安全そうやね。ほなアタシらも見て回ろか」
    「はーい」
     ゼラノとプリムが揃って手を挙げたところで、エリザがニヤ、と笑う。
    「プリムちゃんはシェリコくんと一緒にご飯作っといて」
    「ぅえ? な、何で?」
     戸惑うプリムの狐耳に、シェリコがぼそ、と耳打ちする。
    「女将さんにバレた」
    「マジで?」
    「マジや」
     それを聞いていたエリザは、ぺら、と手を振る。
    「ほな1時間くらい散策して来るわ。美味しいもん期待しとるで」
    「は、は~い」
     エリザはゼラナを連れて、その場から離れて行った。

     島はヤシやシュロが生い茂り、まさに南国そのものと言った様相を呈していた。
    「あっづー……」
     尻尾の先からぽたぽたと汗を垂らしているゼラナを見て、エリザはクスクス笑う。
    「お父ちゃん似やな、そう言うトコは。央中来はったばっかりの頃、よおそう言う顔してはったで」
    「えぇー、何か嫌やぁ」
    「嫌やあるかいな。ええヤツやないの、ロウくんは。嫌なヤツに似たら最悪やで」
    「え、ソレってお母ちゃんのコト?」
    「や、そうやないけども。例えや、例え。
     しかしアンタ見てると、いっつも不思議に思うわ。お父ちゃん真っ黒な人やし、アンタもちょこっとくらい、黒いのん入りそうなもんやけどなぁ」
     エリザはゼラナの狼耳をハンカチで拭きながら、言葉通り不思議そうにつぶやく。
    「ゴールドマンの血がめっちゃめちゃ強いんやないのん? プリムも金と赤やし、レオンくんもお母ちゃんが茶色やのに、全然毛に出てへんし」
    「血かー」
     ゼラノの汗を拭き終え、エリザは自分の尻尾に目をやる。
    「血と言えばな、アンタのお母ちゃんと伯父さんのお父さん――ま、おじーちゃんやね――めっちゃ顔色悪い系の人やってんけど、ソレ出たんは伯父さんだけやねんな。リンダはドコから出てんのっちゅうくらい元気やし、アンタらもええ顔色やし」
    「じーちゃんってアレやろ、……ヒミツの」
    「せや、ヒミツのアレや」
     二人してクスクス笑いつつ、昔話に花を咲かせる。
    「ま、もうバラしても構わへんかもなんやけど、やっぱり『向こう』で青い顔しはるやろからな」
    「ヒミツにしとくわ、うふふ……」
    「頼むわ、アハハ……」
    「ってか、伯父さん言うたらや」
     と、ゼラナが小声になる。
    「いつ結婚しはんの? もう40超えとるやんな?」
    「40どころか、50も来よるかくらいやで」
    「ヤバない?」
    「ヤバいな。結婚してももう子供でけへんのとちゃうやろか」
    「そらヤバいわ。あたしとプリムが頑張らなな」
    「頑張ってや。言うてもプリムちゃん、じきやと思うけどな」
     それを聞いて、ゼラナが笑い転げる。
    「アレやろ、さっきのん? 尻尾ぶわーってなっとったで、あの子」
    「なっとったなー。傑作やわ」
    「帰る頃にはデキとんのちゃう?」
    「色んな意味でな」
    「アッハッハッハ……、上手いわー、ばあちゃん」
     と、祖母と孫とで、いささか下品な笑い話をしていたところで――。
    「……ん?」
     エリザの狐耳が、ぴくんと跳ねた。
    「どないしたん、ばーちゃん?」
     尋ねたゼラナに、エリザが首をかしげて返す。
    「今……、何や聞こえへんかったか?」
    「へ? ……んーん、何も」
    「さよか。や、何か人の声みたいなんが聞こえたかなーと思たんやけど」
    「ちょっ」
     ゼラナは両腕を組んで、尻尾を震わせる。
    「怖いコト言わんといてーや」
    「ゴメンゴメン、気のせいや。……多分」
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