「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第6部
琥珀暁・女神伝 4
神様たちの話、第358話。
饕餮の後悔。
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4.
「頭? ……や、そうか、アンタ1000年とか言うてはりましたもんな。幽霊さんなんですな?」
《そう言うことになるな。この姿は生前の、と言うか、私がまだ正気を保っていた頃のものだ》
「ふーん……?」
饕餮はエリザに手招きし、島の奥へ付いてくるよう促す。
《私はとある一派に属していた。その名も克一門、克大火と神道理(しんとう・まこと)を双璧と仰ぐ、地下組織の一員であった。と言っても非道や不善を働いていたわけではない。ある巨大な組織に、義憤と正義感、そして因縁によって対抗しようと試みる、ゲリラ集団だったのだ。
色々とあって、まあ、その組織の壊滅には成功したわけであるが、結局のところ、世界の崩壊を食い止めることまではできず、一門は崩壊に伴ってちりぢりになってしまった。師匠の行方も分からず、門弟も生き残っているのか死んでしまったか》
「ソレについてなんですけど」
と、エリザが手を挙げる。
「アンタ、ホウオウって知ってはります?」
《ほ、鳳凰!? と言うと、お父上に良く似たお顔とお母上と同じ茶髪で、いつも浮世離れしていた、あの鳳凰か! おお、存じているとも!》
「顔のコトは知りませんけども、茶髪は茶髪でしたな。いっぺん、そのホウオウさんから同じよーな話を聞いたコトあるんですわ。チラっとだけですけども」
《え……? 本人から?》
意外そうな顔をした饕餮に、エリザはニヤ、と笑って返す。
「克一門は不屈揃いやて言うてはりましたわ。『殺しても死なないよーなのが一杯いる』と」
《はははは……、うむ、左様である。師を筆頭に、そんな者ばかりだった。……が、実際はこの通りだ。まあ、自業自得ではあるのだが》
「っちゅうと?」
《それをこれから説明する。見てもらわないと、私の頼みについて具体的には、理解してはもらえんだろうからな》
話している間に、二人は島の中央に到着する。そこには饕餮と、真っ黒な服を着た男が対峙しており、会話を交わしていた。
《あれは1000年前の――まだこの姿を保っていた頃の私と、我が師である克大火だ》
そこにいた饕餮は、土気色の顔でうずくまっていた。
「はあ……はあっ……」
対する大火は、どこか呆れたような様子で彼を見下ろしていた。
「お前には過分に知恵が足りんと思ってはいたが、まさかこんな暴挙に出るほどに愚かだったとは、な」
「はあ……はあ……すみません……師匠……」
「とは言え、あいつら相手にたった一人では、致し方無いことか」
大火は建物の外に目をやる。
「……?」
エリザのいた側からは何も見えなかったが、案内してくれた方の饕餮に手招きされ、大火と同じ視点に移動したところで、その禍々しいモノの大群を、建物の窓越しに確認することができた。
「うわっ……アレは」
《師が『難訓』と呼んでいた女は――師匠の、かつての一番弟子だったが――はっきり言って狂っていた。一体どう言うつもりであったのか、崩壊した後の世界に、あんな名状しがたきモノ共を、嬉々としてバラ撒いていたのだ》
「バケモノやんか……。そうか、そのナンクンとかっちゅうのんの仕業やったんか、ほんなら」
エリザがまだ少女の頃に目にしたバケモノと同じような、異質な造形物たちは、今にも建物に迫ろうとしていた。いや、実際に迫ったものもいたらしく、建物の入口辺りに血だまりができている。
「アレ、アンタがやらはったんです?」
《左様。だが師匠が助太刀に来てくれるまでに、相当の間があった。待っていては到底、持ちこたえられないほどに。そこで私は、妹弟子の麒麟が編み出していた術を使い、一掃を試みたのだが……》
話している間に、回想の方の饕餮の背中が裂け始め、そこから紫色のまばゆい光が走る。
「あ、アレ、……アレ何ですのん!?」
《術には重大な欠陥があった。一言で言うなら、暴走したのだ》
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饕餮の後悔。
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4.
「頭? ……や、そうか、アンタ1000年とか言うてはりましたもんな。幽霊さんなんですな?」
《そう言うことになるな。この姿は生前の、と言うか、私がまだ正気を保っていた頃のものだ》
「ふーん……?」
饕餮はエリザに手招きし、島の奥へ付いてくるよう促す。
《私はとある一派に属していた。その名も克一門、克大火と神道理(しんとう・まこと)を双璧と仰ぐ、地下組織の一員であった。と言っても非道や不善を働いていたわけではない。ある巨大な組織に、義憤と正義感、そして因縁によって対抗しようと試みる、ゲリラ集団だったのだ。
色々とあって、まあ、その組織の壊滅には成功したわけであるが、結局のところ、世界の崩壊を食い止めることまではできず、一門は崩壊に伴ってちりぢりになってしまった。師匠の行方も分からず、門弟も生き残っているのか死んでしまったか》
「ソレについてなんですけど」
と、エリザが手を挙げる。
「アンタ、ホウオウって知ってはります?」
《ほ、鳳凰!? と言うと、お父上に良く似たお顔とお母上と同じ茶髪で、いつも浮世離れしていた、あの鳳凰か! おお、存じているとも!》
「顔のコトは知りませんけども、茶髪は茶髪でしたな。いっぺん、そのホウオウさんから同じよーな話を聞いたコトあるんですわ。チラっとだけですけども」
《え……? 本人から?》
意外そうな顔をした饕餮に、エリザはニヤ、と笑って返す。
「克一門は不屈揃いやて言うてはりましたわ。『殺しても死なないよーなのが一杯いる』と」
《はははは……、うむ、左様である。師を筆頭に、そんな者ばかりだった。……が、実際はこの通りだ。まあ、自業自得ではあるのだが》
「っちゅうと?」
《それをこれから説明する。見てもらわないと、私の頼みについて具体的には、理解してはもらえんだろうからな》
話している間に、二人は島の中央に到着する。そこには饕餮と、真っ黒な服を着た男が対峙しており、会話を交わしていた。
《あれは1000年前の――まだこの姿を保っていた頃の私と、我が師である克大火だ》
そこにいた饕餮は、土気色の顔でうずくまっていた。
「はあ……はあっ……」
対する大火は、どこか呆れたような様子で彼を見下ろしていた。
「お前には過分に知恵が足りんと思ってはいたが、まさかこんな暴挙に出るほどに愚かだったとは、な」
「はあ……はあ……すみません……師匠……」
「とは言え、あいつら相手にたった一人では、致し方無いことか」
大火は建物の外に目をやる。
「……?」
エリザのいた側からは何も見えなかったが、案内してくれた方の饕餮に手招きされ、大火と同じ視点に移動したところで、その禍々しいモノの大群を、建物の窓越しに確認することができた。
「うわっ……アレは」
《師が『難訓』と呼んでいた女は――師匠の、かつての一番弟子だったが――はっきり言って狂っていた。一体どう言うつもりであったのか、崩壊した後の世界に、あんな名状しがたきモノ共を、嬉々としてバラ撒いていたのだ》
「バケモノやんか……。そうか、そのナンクンとかっちゅうのんの仕業やったんか、ほんなら」
エリザがまだ少女の頃に目にしたバケモノと同じような、異質な造形物たちは、今にも建物に迫ろうとしていた。いや、実際に迫ったものもいたらしく、建物の入口辺りに血だまりができている。
「アレ、アンタがやらはったんです?」
《左様。だが師匠が助太刀に来てくれるまでに、相当の間があった。待っていては到底、持ちこたえられないほどに。そこで私は、妹弟子の麒麟が編み出していた術を使い、一掃を試みたのだが……》
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