「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 あとがき
「琥珀暁」あとがき ③ゼロの変遷と変質
シュウ「さあ、あとがきインタビュー第3回です。ゲストはこの方!
今作の可愛い方のヒロイン! 双月世界の元祖お嬢様! クラム・タイムズさんです!」
クー「よろしくお願いいたします。ところで『可愛い方の』と仰いましたが、
それは可愛くない方がいらっしゃる、と仰りたいのかしら?」
――ではなくて、今作可愛いのと格好良いのと綺麗なのがいるってことです。
まあ、ヒロインの多さは今作に限りませんが。
クー「誰が誰であるとは、言及いたせるのかしら」
――してもいいですが、今日の議題はそれじゃないので割愛です。
前回エリザがどうなのって話をしたので、今回はもう一柱の神様、ゼロについて話します。
シュウ「第1部では裏表の無い善人、誰もが敬愛するヒーローって立ち位置でしたが、
第3部辺りから猜疑心と名誉欲の強さが鼻に付くようになっちゃいましたよね。
そして第6部ではマリアさんをはじめ、大勢の兵士を見殺しにするような暴挙に。
一体何でこんなに人間性がねじ曲がっちゃったのか? ソレを考察したいと思います」
クー「そのお話を、当事者の娘の前でされるのかしら。随分とご趣味のよろしいこと」
シュウ「やんわりした口調ながらトゲがすごい」
――ご批判はごもっともですが、話を進めます。
まず大前提ですが、僕個人の趣味・嗜好としていわゆる「最強チート系主人公による無双モノ」
が大嫌いと言う話は何度かしていますが、ゼロはほぼほぼこれに当てはまると思います。
シュウ「言われてみれば無明の何にも無いって世界、文明も文化も大きく立ち遅れた異世界に来て、
魔術をはじめとする色んな技術をどっさり持ち込んで、ソコにはびこる凶悪なはずの敵たちをあっさり蹴散らしちゃう、
……ってまさに無双モノの王道パターンですよね。
でも何で嫌いだって言ってるのに、そんなキャラを登場させたんですか?」
――嫌いである理由は3つあって、1つは安易・安直であること。
2つ目は主人公が優遇され過ぎなこと。そして最後に、リアリティに乏しいことです。
「才能と実力にあふれた正義漢が神や天を味方に付けて悪から世界を救いました、おしまい」
……で終わる物語など、嘘臭さとご都合主義の塊です。
正義は勝つ、正義だから勝つなどと言うお話は、
勝った側が自分を良く見せたいだけの欺瞞と自己弁護に過ぎません。
本当の戦争とは、勝利のその裏で、勝つために努力と苦心、策略を巡らせていないはずがないのです。
数多の戦記と戦術書が、それを証明していると言っていいでしょう。
むしろその要素が一切無いにもかかわらず、来た、見た、勝ったなどと豪語したところで、
そこに本物らしさなどどこにも感じられない。そんなご都合主義の塊に、リアリティは欠片も無いのです。
安っぽい英雄譚を紐解けば、すぐ「神様が助けてくれる」「神様が知恵を授けてくれる」「神様が武器をくれる」、
そんな展開ばかりです。ちょっとは自分でどうにかしようと思わないのか、と。
なのでまず、第1部において、ゼロには神の御加護と言うような奇跡や都合のいい偶然などと言うものは
一切起こさせませんでしたし、とことん厳しい状況に置き続けました。それが僕の書く無双モノです。
「無敵の能力がある? 超絶実力者? それじゃノーマルモードなんかやらせてたまるか。
イージーなんかもってのほかだ。ハードだって生ぬるい。お前はルナティックモードだ!」
と艱難辛苦に放り込むスタイルです。
クー「ひどいお方ですわね」
――無双チーターなんだからそれくらいで丁度いいんです。
実力のある人間には、それ相応の苦難を与えないと話になりませんし。
それにこんだけ窮地に追いやっても結局、「僕つえーwwwww」となっちゃったんですから。
シュウ「第6部で言及されてたコトですね。確かに相手をなめてかかってなきゃ、敵陣上陸はしませんよね、普通」
――人間である以上、他人より強い力を得れば増長するものです。
謙虚な強者など、それこそファンタジーやメルヘン、弱者の自分勝手な理想と言うもの。
どこの世界に「自家用ヘリや高級車を持ってるのにわざわざ普通の満員電車に乗る大富豪」がいますか。
仮に使わない者がいるとすれば、それは遠慮や謙遜から来る行動ではなく、単なる趣味でしょう。
話を戻しますが、「琥珀暁」後半における偏執と暴走は、長年優位に立ってきた故の増長に加え、
その優位を脅かす存在が現れたことも一因です。
クー「エリザさんのことかしら」
シュウ「本人自体が優秀な上、ゼロさんの親友が指導したワケですからね。
自分と互角か、あるいはソレ以上の力量を持ってると感じたのも無理からぬ話ですね」
――人間、一度得たモノを手放すのは惜しいと思うもの。
ましてや多大な苦労や犠牲と引き換えにして、となればなおさらです。
「いつかエリザが自分の築き上げたモノをすべて奪ってしまうかも知れない」と言う恐怖は、
恐らく僕たちが想像している以上に感じていたのかも知れません。
世界を手に入れた男なのですから。
クー「それを顧みれば、やはりあなたは過酷な運命に導いているように存じますわ。
普段からあなた、『物語はハッピーエンドじゃないと嫌だ』と仰っているのでしょう?
もっと幸せな結末を、皆に与えられたのではございませんこと?」
――それに関しては、自分の構成力不足であることは否めません。
ハッピーエンドにしようとなると、ものすごく安易にまとめるか、
ものすごくシナリオを練りに練らないと到達しにくいものでして。
もう10年悩んだらもっと改善したのかも知れませんが、
今作の元となった作品を書いたのが、その10年よりも前のこと。
元作品よりは格段に面白くなったことは間違い無いと思いますが、
それでも現時点ではこのクオリティが精一杯でした。
この期に及んでさらに10年待たせるわけには行かないので、今作はこの出来で勘弁して下さい。
クー「そんな殊勝を装ったような言葉でごまかされると……」
シュウ「でもクーさんは幸せになりましたよね」
クー「んっ、……ええまあ」
シュウ「結局お父さんも絶頂にいたまま、名誉が傷付かない形で自然に亡くなったワケですから、
まあまあ良いんじゃないですか?
もっとひどい死に方した人は大勢いるワケですし」
クー「……そうですわね、仰る通りと存じますわ。いいでしょう、溜飲を下げておきますわ」
シュウ(コレ以上難癖付けられると、インタビューがいつまで経っても終わりませんからね)
クー「何か申されましたかしら」
シュウ「イエイエナンデモナイデスヨー。……ソレじゃ今日はこの辺でっ!」
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今作の可愛い方のヒロイン! 双月世界の元祖お嬢様! クラム・タイムズさんです!」
クー「よろしくお願いいたします。ところで『可愛い方の』と仰いましたが、
それは可愛くない方がいらっしゃる、と仰りたいのかしら?」
――ではなくて、今作可愛いのと格好良いのと綺麗なのがいるってことです。
まあ、ヒロインの多さは今作に限りませんが。
クー「誰が誰であるとは、言及いたせるのかしら」
――してもいいですが、今日の議題はそれじゃないので割愛です。
前回エリザがどうなのって話をしたので、今回はもう一柱の神様、ゼロについて話します。
シュウ「第1部では裏表の無い善人、誰もが敬愛するヒーローって立ち位置でしたが、
第3部辺りから猜疑心と名誉欲の強さが鼻に付くようになっちゃいましたよね。
そして第6部ではマリアさんをはじめ、大勢の兵士を見殺しにするような暴挙に。
一体何でこんなに人間性がねじ曲がっちゃったのか? ソレを考察したいと思います」
クー「そのお話を、当事者の娘の前でされるのかしら。随分とご趣味のよろしいこと」
シュウ「やんわりした口調ながらトゲがすごい」
――ご批判はごもっともですが、話を進めます。
まず大前提ですが、僕個人の趣味・嗜好としていわゆる「最強チート系主人公による無双モノ」
が大嫌いと言う話は何度かしていますが、ゼロはほぼほぼこれに当てはまると思います。
シュウ「言われてみれば無明の何にも無いって世界、文明も文化も大きく立ち遅れた異世界に来て、
魔術をはじめとする色んな技術をどっさり持ち込んで、ソコにはびこる凶悪なはずの敵たちをあっさり蹴散らしちゃう、
……ってまさに無双モノの王道パターンですよね。
でも何で嫌いだって言ってるのに、そんなキャラを登場させたんですか?」
――嫌いである理由は3つあって、1つは安易・安直であること。
2つ目は主人公が優遇され過ぎなこと。そして最後に、リアリティに乏しいことです。
「才能と実力にあふれた正義漢が神や天を味方に付けて悪から世界を救いました、おしまい」
……で終わる物語など、嘘臭さとご都合主義の塊です。
正義は勝つ、正義だから勝つなどと言うお話は、
勝った側が自分を良く見せたいだけの欺瞞と自己弁護に過ぎません。
本当の戦争とは、勝利のその裏で、勝つために努力と苦心、策略を巡らせていないはずがないのです。
数多の戦記と戦術書が、それを証明していると言っていいでしょう。
むしろその要素が一切無いにもかかわらず、来た、見た、勝ったなどと豪語したところで、
そこに本物らしさなどどこにも感じられない。そんなご都合主義の塊に、リアリティは欠片も無いのです。
安っぽい英雄譚を紐解けば、すぐ「神様が助けてくれる」「神様が知恵を授けてくれる」「神様が武器をくれる」、
そんな展開ばかりです。ちょっとは自分でどうにかしようと思わないのか、と。
なのでまず、第1部において、ゼロには神の御加護と言うような奇跡や都合のいい偶然などと言うものは
一切起こさせませんでしたし、とことん厳しい状況に置き続けました。それが僕の書く無双モノです。
「無敵の能力がある? 超絶実力者? それじゃノーマルモードなんかやらせてたまるか。
イージーなんかもってのほかだ。ハードだって生ぬるい。お前はルナティックモードだ!」
と艱難辛苦に放り込むスタイルです。
クー「ひどいお方ですわね」
――無双チーターなんだからそれくらいで丁度いいんです。
実力のある人間には、それ相応の苦難を与えないと話になりませんし。
それにこんだけ窮地に追いやっても結局、「僕つえーwwwww」となっちゃったんですから。
シュウ「第6部で言及されてたコトですね。確かに相手をなめてかかってなきゃ、敵陣上陸はしませんよね、普通」
――人間である以上、他人より強い力を得れば増長するものです。
謙虚な強者など、それこそファンタジーやメルヘン、弱者の自分勝手な理想と言うもの。
どこの世界に「自家用ヘリや高級車を持ってるのにわざわざ普通の満員電車に乗る大富豪」がいますか。
仮に使わない者がいるとすれば、それは遠慮や謙遜から来る行動ではなく、単なる趣味でしょう。
話を戻しますが、「琥珀暁」後半における偏執と暴走は、長年優位に立ってきた故の増長に加え、
その優位を脅かす存在が現れたことも一因です。
クー「エリザさんのことかしら」
シュウ「本人自体が優秀な上、ゼロさんの親友が指導したワケですからね。
自分と互角か、あるいはソレ以上の力量を持ってると感じたのも無理からぬ話ですね」
――人間、一度得たモノを手放すのは惜しいと思うもの。
ましてや多大な苦労や犠牲と引き換えにして、となればなおさらです。
「いつかエリザが自分の築き上げたモノをすべて奪ってしまうかも知れない」と言う恐怖は、
恐らく僕たちが想像している以上に感じていたのかも知れません。
世界を手に入れた男なのですから。
クー「それを顧みれば、やはりあなたは過酷な運命に導いているように存じますわ。
普段からあなた、『物語はハッピーエンドじゃないと嫌だ』と仰っているのでしょう?
もっと幸せな結末を、皆に与えられたのではございませんこと?」
――それに関しては、自分の構成力不足であることは否めません。
ハッピーエンドにしようとなると、ものすごく安易にまとめるか、
ものすごくシナリオを練りに練らないと到達しにくいものでして。
もう10年悩んだらもっと改善したのかも知れませんが、
今作の元となった作品を書いたのが、その10年よりも前のこと。
元作品よりは格段に面白くなったことは間違い無いと思いますが、
それでも現時点ではこのクオリティが精一杯でした。
この期に及んでさらに10年待たせるわけには行かないので、今作はこの出来で勘弁して下さい。
クー「そんな殊勝を装ったような言葉でごまかされると……」
シュウ「でもクーさんは幸せになりましたよね」
クー「んっ、……ええまあ」
シュウ「結局お父さんも絶頂にいたまま、名誉が傷付かない形で自然に亡くなったワケですから、
まあまあ良いんじゃないですか?
もっとひどい死に方した人は大勢いるワケですし」
クー「……そうですわね、仰る通りと存じますわ。いいでしょう、溜飲を下げておきますわ」
シュウ(コレ以上難癖付けられると、インタビューがいつまで経っても終わりませんからね)
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