DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 3
ウエスタン小説、第3話。
あぶり出し。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
局長から無茶な注文をされたものの、それでもジョン司令はその通りに答えてくれた。
「あんたのご注文通り、500人。基地にいる全員を大急ぎで動員させた。おかげでまだコック姿のヤツまでいる始末だよ」
「ありがとう、ジョン。ではすぐ出発だ。準備してくれ」
「へいへい、仰せの通りに!」
ジョン司令が憮然とした顔で、大股で歩き去ったところで、局長とリロイは目配せした。
「で、エミルたちは?」
「仰せの通りに、だね」
「うむ」
まだ憮然とした様子ながらも、ジョン司令はきっちり、全軍に号令を発してくれた。
「……と言うわけで、諸君らは直ちにサンドニシウス島へ向かい、そこに本拠地を構えていると目される秘密組織を包囲、および拿捕せよ! 以上だ! 各員、即時行動されたし!」
「了解!」
ジョン司令がこぼしていた通り、兵士たちの中には直前まで調理や営繕工事など、軍務以外の作業をしていたらしい者や、まだ私服姿に小銃一挺を抱えただけの者までいる。揃って憮然とした表情を浮かべつつ、彼らはぞろぞろと船や舟艇に向かって行進して行った。
と――その中の一人が、しれっとその列を離れる。
「おい、どうした?」
「腹いてえ。ちょっと済ませて来る」
「おう」
いぶかしむ同僚たちにそれらしい言い訳をし、彼は基地内へと引き返す。そのまま電話室に向かい、電話をかけようとしたが――。
「ん、んん? なんだ? ウンともスンとも言わねえ。……壊れてんのか?」
がちゃん、がちゃんと受話器を上げ下げしても、まったくつながる気配が無く、彼は困った顔をした。
「おい、まずいって……。早く伝えねえと」「どうなるって?」
電話室の外から、女の声が飛んで来る。
「うっ……!?」
「聞かせてちょうだい? あんたがこんなタイミングで電話しなきゃ、一体、誰がどうなるのかしら?」
「そ……それは」
彼が両手を挙げたところで、別の男の声が掛けられる。
「そのまま電話室を出ろ。ゆっくりとだ。振り向くんじゃないぜ」
「あ、ああ」
彼が電話室を出たところで、赤毛の男が彼のこめかみに小銃を突き付けた。
「ネックレス見せろ」
「……わ、分かった」
相手の言わんとすることを察したらしく、彼は首に下げていた、猫目三角形のネックレスを取り出した。
内通者を見付け出して拘束し、エミルたちは局長たちがいる部屋に戻って来た。
「いたわよ」
「ありがとう。間違い無くいるだろうと思っていたが、やはりか」
「そりゃ、サンドニシウス島から一番近い軍事基地となれば、ここだからね。仮に当局が動き出した場合、十中八九この基地が関わることになるだろう。なのにここにスパイを仕掛けてないって言うんじゃ、話にならないさ」
安心した様子の局長とリロイを見て、アデルもほっとした顔をする。
「じゃあ後は……」
「うむ。もうこれで組織は、自分たちに危機が迫っていることを知る術を、ほとんど完全に失ったわけだ。残る術はただ一つ、州軍が自分たちのすぐそばまで多数迫っているのを、実際に目にする以外に無い。
いよいよ、決着の時と言うわけだ。そろそろ我々も船に向かうとしよう」
「了解です!」
待機していた他の局員たちと共に、局長とリロイは部屋を後にした。
が――。
「アデル。……それから、あんたも」
局長たちに気付かれないようにしているかのように、エミルはアデルとロバートの服の裾をぐい、と引く。
「なんだ?」
「どしたんスか?」
「局長はもう問題無しだって言ったけど、……あたしの勘が告げてる。チェックメイトにはあと一手、足りないって」
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あぶり出し。
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3.
局長から無茶な注文をされたものの、それでもジョン司令はその通りに答えてくれた。
「あんたのご注文通り、500人。基地にいる全員を大急ぎで動員させた。おかげでまだコック姿のヤツまでいる始末だよ」
「ありがとう、ジョン。ではすぐ出発だ。準備してくれ」
「へいへい、仰せの通りに!」
ジョン司令が憮然とした顔で、大股で歩き去ったところで、局長とリロイは目配せした。
「で、エミルたちは?」
「仰せの通りに、だね」
「うむ」
まだ憮然とした様子ながらも、ジョン司令はきっちり、全軍に号令を発してくれた。
「……と言うわけで、諸君らは直ちにサンドニシウス島へ向かい、そこに本拠地を構えていると目される秘密組織を包囲、および拿捕せよ! 以上だ! 各員、即時行動されたし!」
「了解!」
ジョン司令がこぼしていた通り、兵士たちの中には直前まで調理や営繕工事など、軍務以外の作業をしていたらしい者や、まだ私服姿に小銃一挺を抱えただけの者までいる。揃って憮然とした表情を浮かべつつ、彼らはぞろぞろと船や舟艇に向かって行進して行った。
と――その中の一人が、しれっとその列を離れる。
「おい、どうした?」
「腹いてえ。ちょっと済ませて来る」
「おう」
いぶかしむ同僚たちにそれらしい言い訳をし、彼は基地内へと引き返す。そのまま電話室に向かい、電話をかけようとしたが――。
「ん、んん? なんだ? ウンともスンとも言わねえ。……壊れてんのか?」
がちゃん、がちゃんと受話器を上げ下げしても、まったくつながる気配が無く、彼は困った顔をした。
「おい、まずいって……。早く伝えねえと」「どうなるって?」
電話室の外から、女の声が飛んで来る。
「うっ……!?」
「聞かせてちょうだい? あんたがこんなタイミングで電話しなきゃ、一体、誰がどうなるのかしら?」
「そ……それは」
彼が両手を挙げたところで、別の男の声が掛けられる。
「そのまま電話室を出ろ。ゆっくりとだ。振り向くんじゃないぜ」
「あ、ああ」
彼が電話室を出たところで、赤毛の男が彼のこめかみに小銃を突き付けた。
「ネックレス見せろ」
「……わ、分かった」
相手の言わんとすることを察したらしく、彼は首に下げていた、猫目三角形のネックレスを取り出した。
内通者を見付け出して拘束し、エミルたちは局長たちがいる部屋に戻って来た。
「いたわよ」
「ありがとう。間違い無くいるだろうと思っていたが、やはりか」
「そりゃ、サンドニシウス島から一番近い軍事基地となれば、ここだからね。仮に当局が動き出した場合、十中八九この基地が関わることになるだろう。なのにここにスパイを仕掛けてないって言うんじゃ、話にならないさ」
安心した様子の局長とリロイを見て、アデルもほっとした顔をする。
「じゃあ後は……」
「うむ。もうこれで組織は、自分たちに危機が迫っていることを知る術を、ほとんど完全に失ったわけだ。残る術はただ一つ、州軍が自分たちのすぐそばまで多数迫っているのを、実際に目にする以外に無い。
いよいよ、決着の時と言うわけだ。そろそろ我々も船に向かうとしよう」
「了解です!」
待機していた他の局員たちと共に、局長とリロイは部屋を後にした。
が――。
「アデル。……それから、あんたも」
局長たちに気付かれないようにしているかのように、エミルはアデルとロバートの服の裾をぐい、と引く。
「なんだ?」
「どしたんスか?」
「局長はもう問題無しだって言ったけど、……あたしの勘が告げてる。チェックメイトにはあと一手、足りないって」
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