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    DETECTIVE WESTERN

    DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 6

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    ウエスタン小説、第6話。
    最後の決闘。

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    6.
     エミルは素直にイクトミに場を譲り、元通り木箱の陰に隠れる。
    「あら」
     と、そこにアーサー老人が立っていることに気付き、肩をすくめた。
    「あなたの入れ知恵かしら?」
    「うむ。元々、大閣下の経歴と西海岸の町とを比較し、周辺地域で何かあれば恐らく、奴はここを緊急時の脱出路に使うだろうと踏んでいた。そして一週間前、突然西部のあちこちで電信電話網が途絶した。何かがあった、いや、君たちが何かしたと見て、我々も駆け付けたと言うわけだ」
    「流石ね」
    「ところでエミル君」
     アーサー老人はいまだ係船柱に座ったままの大閣下をチラ、と見て、エミルに向き直った。
    「君は何故いきなり、ジョルジオ・リゴーニを撃った?」
    「顔がムカついたからよ」
    「その冗談はさっぱり面白くないな」
     ばっさり言い切られ、エミルは肩をすくめた。
    「じゃ、真面目に説明するわ。話と見た目からあいつが『鉄麦』って言うのは分かったし、あいつ一人でボーッとしてたから始末したのよ」
    「法の裁きに委ねようとは思わなかったのかね?」
    「あなた、あいつの裁判記録知らないの? あなたなら調べてると思ってたけど」
    「……ふっ」
     アーサー老人はニヤっと笑い、小さくうなずいた。
    「なるほど。確かに過去3回の裁判では、いずれも不起訴だったな。相当な額の裏金を撒いたのだろう。それこそ奴の下品に肥え太った顔を見れば分かる」
    「ここで4度目の逮捕ってなっても、またカネ撒いて逃げるだけよ。それなら裁判所じゃなく、天国の門で取り調べてもらった方が手っ取り早いわ」
    「……まあ、不問にしておこうか。私は法の番人では無いからな」
    「どうも」


     一方――イクトミとトリスタンは、静かににらみ合っていた。
    「……」
    「……」
     まだ陽の光は差しては来ないものの、空気は既に温まり始めているらしい。港に強い風が吹き込み、二人の間を通り抜けて行く。
    「アレーニェ」
     と、トリスタンが口を開く。
    「今更貴様と話すことなど、何も無い。お前もそうだろう?」
    「ああ。こうして静かに対峙していても、無駄なだけだ」
    「では、さっさと来い。このまま見つめ合っていたとて、何の意味も無い」
    「君から来い」
    「フン」
     短い会話を終えるが、依然として二人とも動かない。物陰で様子を眺めていたロバートが、アデルに耳打ちする。
    「なんで撃たないんスかね?」
    「撃てばその反動で、どうやったって隙ができる。それにどっちともタマ避けられるような、バケモノじみた運動神経持ってるからな。だから1発目を避けて、相手の隙を突いてズドン。それを狙ってんだろうよ、どっちも」
    「はぇ~……」
     と――港のどこかに巣があったらしく、カモメの鳴き声が辺りに響く。瞬間、二人はその場から弾かれるように動き出した。
    「死ね、アレーニェ!」
    「死ぬのはお前だ、トリスタン!」
     ほとんど同時に、両者は弾丸を放つ。イクトミが放った弾はトリスタンのほおに筋を引き、一方、トリスタンの弾はイクトミの肩をかすめる。
    「うっ……」
    「ぐぬ……」
     どちらも流れる血に構わず、二発目を放つ。ばぢぃっ、とけたたましい金属音が鳴り、アデルは息を呑んだ。
    (うっそだろ……弾と弾が当たったのかよ、今の!?)
     だが、トリスタンの放った11ミリMAS弾より、イクトミの45口径ロングコルト弾の方がわずかに威力が大きかったらしく、ぐちゃぐちゃに融合した弾はトリスタンの方へと飛んで行った。
    「うおお……っ!」
     とっさにかわしたトリスタンの、左のホルスターが落ちる。イクトミの撃った3発目が、ベルトをかすめたのだ。
    「う、ぬっ」
     ホルスターがトリスタンの太ももに絡まり、トリスタンは体勢を崩す。それを好機と見たらしく、イクトミは腰だめに拳銃を構え、もう1発撃ち込んだ。
    「お……ふっ……」
     トリスタンがひざを着く。
    (やった……か!?)
     アデルは勝利を確信したが――次の瞬間、イクトミのシルクハットがばしっと音を立てて飛び、その下にいた彼も弾かれるように、仰向けに倒れた。

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    ブログ「妄想の荒野」の矢端想さんに挿絵を描いていただきました。
    ありがとうございます!

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    2020.10.09 追記
    この日がブログ開設記念日であることを忘れていました。
    何故いつも忘れてしまうのか……!?

    10月中に何かやることにします。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    コメントありがとうございます。
    ようやくカッコいいイクトミが掲載できましたw

    NoTitle 

    ご掲載ありがとうございます!ついにショーダウンですねえ!
    この先もわくわくしますね!
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