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    DETECTIVE WESTERN

    DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 9

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    ウエスタン小説、第9話。
    カバー・デブリーフィング。

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    9.
     昼頃になってようやく、ニューマルセイルの港に州軍が押しかけて来た。
    「今日、電信電話網が復活したのはありがたかった。でなければここに君たちがいることを突き止めるのは、もっと後になっていただろうからね」
     やって来たリロイに、アデルが応対する。
    「ここに逃げてきた4人のうち、トリスタン・アルジャンとジョルジオ・リゴーニは港で射殺しました。ディミトリ・アルジャンは港に漂着したところを保護しましたが、全身火傷と打撲、複雑骨折で虫の息です。下手すりゃ今日、明日には死ぬでしょうね。
     そして大閣下こと、JJ・シャタリーヌについてですが、乗ってきた船で奴が逃亡を図ろうとしたところ、そいつが爆発しました」
    「爆発だって?」
     目を丸くするリロイに、アデルはこう続けた。
    「港から30ヤードほど離れたところで、突然。その爆発でディミトリが吹っ飛び、まもなく船全体が燃え上がってそのまま、……って感じでした」
    「それに大閣下が乗っていたと? うーん……海の底じゃ、捜索も不可能だろうな。仮に海に飛び込み、爆発から逃れていたとしても、確かもう90歳以上の老体だし、泳いでここ以外の港に着けるような体力は無いはずだ。流石に死んだだろうね。分かった、ジェフにはそう報告しておくよ。ディミトリはどこに?」
    「町のサルーンに運びました。今はエミルとロバートが見張っているはずです」
    「そっか。じゃあ、僕もそっちを見てくるよ」
     リロイは町へ向かいかけ――くる、と踵を返した。
    「アデル。他には何か無かった?」
    「って言うと?」
    「トリスタンを射殺したって言ったよね。以前からエミルは、『自分の実力はトリスタンより下だ』と言っていた。彼女の性格からして、その言葉は卑下や謙遜じゃなく、きわめて客観的な評価なんだろう。でも実際死んでるのなら、誰が倒したのかな、って。まさか君やロバートじゃないだろうし」
    「エミルです。あいつが、不意を突いて」
    「そう」
     リロイはもう一度背を向けかけたが、そのままくるんと一回転して来た。
    「って言うのを、公式発表にしたいってことかな」
    「……そうです」
    「じゃ、本当のところはどうなのか、エミルに聞いてくるよ。州軍や司法当局から事情聴取されたら、僕も今の話で通すことにしよう」
    「ども」

     町のサルーンに着いたところで、リロイはアーサー老人に出会った。
    「君も来てたのか、A」
    「久しぶりだな、L」
     握手を交わし、リロイはアーサー老人に尋ねる。
    「彼は?」
    「上で話そう」
     2階に上がり、ディミトリが運び込まれた部屋に入る。
    「……生きてるの?」
     ベッドの上に横たわったディミトリは全身を包帯でぐるぐる巻きにされており、ぴくりとも動いていない。
    「ギリギリね」
     ベッドの横に座っていたエミルが答える。
    「爆発で吹っ飛ばされたせいで、全身大火傷と全身打撲。おまけに海に叩きつけられたみたいだし、あっちこっち骨折してるわ」
    「それで生きてるとしたら、怪物だね」
    「幸か不幸か生きてるわよ、辛うじて。でもこれだけボロボロじゃ、もうこの先一生、自分で動けない体になってるでしょうね。その一生があと30分だけか、まだ30年残ってるのかは知らないけど」
    「間違い無く不幸だろう。職人が指一本動かせないなんて、そりゃもう生き地獄さ」
    「お似合いよ。こいつらみたいなゲス野郎共にはね」
     エミルの辛辣な言葉に苦笑いを返しつつ、リロイは彼女に質問した。
    「ところでアデルから聞いたんだけど、大閣下も爆死したって?」
    「ええ、多分だけど」
    「爆発の原因は?」
    「さあ? 岸から大分離れてたから分からないわね」
    「ってとこまでが公式発表でいいのかな?」
     アデルに言ったものと同じ台詞を使い、リロイは彼女の目をじっと見つめた。
    「……真実を知りたい、ってことかしら?」
    「そりゃ、ね。どっちみち、詳しく話しておかなきゃあれこれ聞かれた時に矛盾が出ちゃうからね。細かい設定まで詰めとかないと、嘘ってのは付き辛いもんさ」
    「ごもっとも、ね」
     エミルは肩をすくめ、薄く笑みを浮かべた。
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