DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 12
ウエスタン小説、第12話。
後日談と懸案事項。
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12.
「DCの『友人』からも称賛されたよ。特別に名誉勲章と感謝状をもらえるそうだ」
局長は高笑いしつつ、今回の成果を皆に報告していた。
「それで、いくらになったのかしら。あなたには金ピカメダル一枚より、緑色のリンカーン一人の方が大事でしょ?」
エミルに突っ込まれ、局長はニヤっと笑って返す。
「うむ、その通りだ。ま、あっちこっちから懸賞金やら報奨金やらが届いてね、結構な額になったよ。詳しいことは明かせんが――税金だの何だのとあるし、どこから嗅ぎつけられるか分からんからね――端的に言えば、探偵局の資産は3倍以上になった」
「そりゃすげえ」
揃って目を丸くしているアデルとロバートを尻目に、エミルが続けて尋ねる。
「じゃ、あたしや他の、100万ドルに絡んでるみんなに対して、リターンはあるのかしら? 出資者に配当を渡すのは当然の義務よね?」
「無論だとも。100万ドルはきっちり返す。……ただし、流石に今すぐ全額と言うわけには行かないから、これは『年金支給』と言う形で勘弁してもらいたい」
「年いくら? いつから支払いかしら? 勿論給与や、これまでの積立とは別計上よね?」
局長は苦笑いしつつ、エミルの矢継ぎ早の質問に答える。
「1年につき最低1000ドル。そこに探偵局の年間収益の3%を均等に分割して付加する。支払いは今年末、12月1日から毎年同日に、口座に振り込んでおく。この契約は100万ドル全額を、きっちり支払い切るまで継続する。これは給与および積立金とは別に支払うものとする。この内容で納得してくれるかね、エミル?」
「ええ、オーケーよ。みんなもそれでいいわよね?」
「おう」
アデルとロバート、そしてサムやダンなど関係している者がうなずいたところで、エミルもにっこりと局長に微笑みかけた。
「じゃ、今の契約内容、後で書面でお願いね」
「ははは……、すっかりいつもの君に戻ったようだな」
局長は大笑いしつつ、こう続けた。
「ではもうそろそろ、君の懸案事項について話すとしようか」
「あの農場の場所ね?」
「うむ。調べること自体は大した手間では無かったし、今から駅に行ってもすぐ、チケットが取れるだろう。ただ、気になる点はいくつかあるがね」
「って言うと?」
「キャリコ農場だが、N州では有数の規模だ。農場主はトリーシャ・キャリコと言う女性だが、腕一本でこの10年の間に成り上がったとかで、周囲の人間からは『ウィンチェスターを持った魔女』と呼ばれ、畏れられているとか、慕われているとか」
「トリーシャ……!?」
名前を聞いて、エミルが驚愕する。アデルとロバートも、顔を見合わせた。
「トリーシャって……」
「大閣下がそう呼んでたな」
「君の話じゃあ、ニューマルセイルで出会ったのは君そっくりの女性だったそうだな。恐らくはそのミズ・キャリコが、君たちと出会ったその女性本人なのだろう。
何がどうなっているのか、私も是非詳細を知りたい。私も同行しよう」
「分かったわ」
「あと、アーサーも行きたいと言っていた。現地で落ち合う予定だ」
「大所帯ね。あの時いた人間全員なら、こいつとロバートも行った方がいいかしらね。じゃ、全部で5人?」
「リロイも付けるかね?」
冗談めかして尋ねた局長に、オフィスの端で席に付いていたリロイが、ひざの上の猫を撫でながら答える。
「僕はやめとくよ。随分留守にしちゃったもんだから、セイナがおかんむりなんだ。たっぷり相手したげないとね」
「了解した。と言うわけでこの5名になる」
「はーい、はい。楽しいピクニックになりそうね」
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後日談と懸案事項。
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12.
「DCの『友人』からも称賛されたよ。特別に名誉勲章と感謝状をもらえるそうだ」
局長は高笑いしつつ、今回の成果を皆に報告していた。
「それで、いくらになったのかしら。あなたには金ピカメダル一枚より、緑色のリンカーン一人の方が大事でしょ?」
エミルに突っ込まれ、局長はニヤっと笑って返す。
「うむ、その通りだ。ま、あっちこっちから懸賞金やら報奨金やらが届いてね、結構な額になったよ。詳しいことは明かせんが――税金だの何だのとあるし、どこから嗅ぎつけられるか分からんからね――端的に言えば、探偵局の資産は3倍以上になった」
「そりゃすげえ」
揃って目を丸くしているアデルとロバートを尻目に、エミルが続けて尋ねる。
「じゃ、あたしや他の、100万ドルに絡んでるみんなに対して、リターンはあるのかしら? 出資者に配当を渡すのは当然の義務よね?」
「無論だとも。100万ドルはきっちり返す。……ただし、流石に今すぐ全額と言うわけには行かないから、これは『年金支給』と言う形で勘弁してもらいたい」
「年いくら? いつから支払いかしら? 勿論給与や、これまでの積立とは別計上よね?」
局長は苦笑いしつつ、エミルの矢継ぎ早の質問に答える。
「1年につき最低1000ドル。そこに探偵局の年間収益の3%を均等に分割して付加する。支払いは今年末、12月1日から毎年同日に、口座に振り込んでおく。この契約は100万ドル全額を、きっちり支払い切るまで継続する。これは給与および積立金とは別に支払うものとする。この内容で納得してくれるかね、エミル?」
「ええ、オーケーよ。みんなもそれでいいわよね?」
「おう」
アデルとロバート、そしてサムやダンなど関係している者がうなずいたところで、エミルもにっこりと局長に微笑みかけた。
「じゃ、今の契約内容、後で書面でお願いね」
「ははは……、すっかりいつもの君に戻ったようだな」
局長は大笑いしつつ、こう続けた。
「ではもうそろそろ、君の懸案事項について話すとしようか」
「あの農場の場所ね?」
「うむ。調べること自体は大した手間では無かったし、今から駅に行ってもすぐ、チケットが取れるだろう。ただ、気になる点はいくつかあるがね」
「って言うと?」
「キャリコ農場だが、N州では有数の規模だ。農場主はトリーシャ・キャリコと言う女性だが、腕一本でこの10年の間に成り上がったとかで、周囲の人間からは『ウィンチェスターを持った魔女』と呼ばれ、畏れられているとか、慕われているとか」
「トリーシャ……!?」
名前を聞いて、エミルが驚愕する。アデルとロバートも、顔を見合わせた。
「トリーシャって……」
「大閣下がそう呼んでたな」
「君の話じゃあ、ニューマルセイルで出会ったのは君そっくりの女性だったそうだな。恐らくはそのミズ・キャリコが、君たちと出会ったその女性本人なのだろう。
何がどうなっているのか、私も是非詳細を知りたい。私も同行しよう」
「分かったわ」
「あと、アーサーも行きたいと言っていた。現地で落ち合う予定だ」
「大所帯ね。あの時いた人間全員なら、こいつとロバートも行った方がいいかしらね。じゃ、全部で5人?」
「リロイも付けるかね?」
冗談めかして尋ねた局長に、オフィスの端で席に付いていたリロイが、ひざの上の猫を撫でながら答える。
「僕はやめとくよ。随分留守にしちゃったもんだから、セイナがおかんむりなんだ。たっぷり相手したげないとね」
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