DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 15 ~ 新世界の誘い ~ 11
ウエスタン小説、第11話。
終末の日。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
11.
襲い掛かって来た手下たちを、まずは6人倒す。一瞬で半数がやられ、手下たちはぎょっとしたが、すぐに迫って来る。
(6発撃ったらもう終わりだろ、……って? バカにすんじゃないわよ)
アンジェは倒れた手下たちの手から小銃をもぎ取り、残った者たちも一掃する。10秒と経たない内に敵を全滅させ、アンジェはさらにもう一人の死体から、小銃を奪った。
(……今なら殺れる……ッ!)
手下たちに始末を任せ、悠然とその場を去って行くJJの後頭部めがけて、アンジェは小銃を撃ち込んだ。だが――。
「閣下、危ない!」
JJに追従していたトリスタンがとっさに気付き、体を張ってJJをかばった。
「うぐ……っ」
ギン、と金属音が鳴るのを聞き、アンジェは舌打ちする。
(クソッ……! 腰のホルスターに当たった!? 邪魔すんじゃないわよッ!)
アンジェは小銃のレバーを引き、もう一発撃ち込もうとする。だがこの時には既にJJは逃げ去っており、トリスタンが立ちはだかっていた。
「あんた、邪魔するつもり!?」
「無論だ。閣下を殺させてなるものか!」
よどみなく答えたトリスタンに、アンジェは小銃を向けながら尋ねる。
「悔しくないの!? お父さんが吊るされたのよ!?」
「当然の結果だ」
「当然!?」
「閣下のご意向に従えぬ者、背く者には死あるのみだ」
「何をバカなこと……!」
言葉を交わしつつも、アンジェは相手と意思の疎通ができないことを察していた。
(狂ってるわ……何もかも!)
小銃を撃つが、あろうことかトリスタンは弾丸をかわし、アンジェに肉薄する。
(アタマもおかしけりゃ、動きもケダモノ並み。こいつ、マジにイカレてるわね。
いいや、こいつのことだけじゃない。ここにいる誰も彼も、みんなあのクソジジイを信奉してる、異常者だらけ。あいつの言うことがカミサマの言葉より尊いと信じ込んでる。人を殺せって言われれば迷いなく殺しに来るし、襲えって命じられれば、ついさっきまで姫だ何だって持てはやしてた相手だって、構いやしない。
異常よ! ここは何もかも狂ってるわ!)
羽交い締めにしようとしたトリスタンを紙一重で避け、アンジェは小銃の銃床をトリスタンのほおに叩き付ける。
「ぬおっ!?」
自分の4分の3ほどしか無い体躯の少女に弾き飛ばされ、トリスタンは倒れ込みつつも、感心したような声を漏らす。
「やはり素晴らしい! やはり閣下の血を引いておられるだけは」「黙れ!」
アンジェは小銃を構え直し、トリスタンに怒鳴る。
「もううんざり! 何が閣下よ! 何が組織よ! こんな狂った世界、あたしが全部ブチ壊してやる!」
「何と残念なことを申されるのだ」
トリスタンはすっと立ち上がり、アンジェを見下ろす。
「誠に残念だが、最早あなたは組織にとって害にしかならぬようだ。排除せねばならぬ」
「やってみなさいよ!」
アンジェとトリスタンが対峙した、その瞬間――。
「や、……やらせないぞッ!」
空中から突然、肌の浅黒い青年が割り込み、トリスタンの顔を蹴り飛ばした。
「おう……っ!?」
再び倒れ込んだトリスタンの前に降り立ち、彼はアンジェに声を掛ける。
「ここは僕が何とかする! トリーシャ、あなたは、……あなたは、自分のしたいことを!」
「アレーニェ! ……ううん、アレン! ありがとう!」
助けてくれたアレーニェに礼を言い、アンジェはその場から離れた。その間に立ち上がったトリスタンが、アレーニェをにらみつける。
「血迷ったな、アレーニェ。女ごときのために、己の未来と栄光をドブに捨てたか」
「その女のためなら、……愛する女(ひと)のためなら、何だってやってやるさ」
JJの、そして組織の人間全員の誤算は、2つあった。1つは、男10人がかりで襲わせれば屈服すると考えていたトリーシャが、その10人を事も無げに屠れるほどの手練に成長していたこと。そしてそのトリーシャが、2人いたことだった。
アンジェがJJを討つべく動き出したことをフィーも察知し、この戦闘に参加した結果、組織は完全に翻弄され、引っ掻き回されることとなった。
「姫は兵器廠(へいきしょう)で破壊工作中! 総員、兵器廠へ集合せよ!」
「何言ってやがる!? 姫は今、閣下のお屋敷に油を撒いて……」
「寝ぼけてんのか!? 兵器廠だっつってんだろ!?」
「いいや、屋敷だ! 俺は実際に見て来たんだぞ!?」
「見間違いだろ!? 逃げて来たって奴が何人もいるんだぜ!」
1人と認識している相手が2ヶ所で同時に現れたために、組織の誰も彼もが、右往左往するばかりでまともな行動が執れなくなった。JJでさえも、どこに人を集めればよいのかさえ見当が付かなくなり、狼狽するばかりだった。
「ええい、姫は、トリーシャは一体どこにおると言うのだ!? こ、このままでは、このままでは……っ!」

JJの恐れていたことは3時間後、現実のものとなった。
この日、JJが20年近い年月を掛けて築き上げてきた組織は、その孫娘「たち」の手によって崩壊した。
@au_ringさんをフォロー
終末の日。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
11.
襲い掛かって来た手下たちを、まずは6人倒す。一瞬で半数がやられ、手下たちはぎょっとしたが、すぐに迫って来る。
(6発撃ったらもう終わりだろ、……って? バカにすんじゃないわよ)
アンジェは倒れた手下たちの手から小銃をもぎ取り、残った者たちも一掃する。10秒と経たない内に敵を全滅させ、アンジェはさらにもう一人の死体から、小銃を奪った。
(……今なら殺れる……ッ!)
手下たちに始末を任せ、悠然とその場を去って行くJJの後頭部めがけて、アンジェは小銃を撃ち込んだ。だが――。
「閣下、危ない!」
JJに追従していたトリスタンがとっさに気付き、体を張ってJJをかばった。
「うぐ……っ」
ギン、と金属音が鳴るのを聞き、アンジェは舌打ちする。
(クソッ……! 腰のホルスターに当たった!? 邪魔すんじゃないわよッ!)
アンジェは小銃のレバーを引き、もう一発撃ち込もうとする。だがこの時には既にJJは逃げ去っており、トリスタンが立ちはだかっていた。
「あんた、邪魔するつもり!?」
「無論だ。閣下を殺させてなるものか!」
よどみなく答えたトリスタンに、アンジェは小銃を向けながら尋ねる。
「悔しくないの!? お父さんが吊るされたのよ!?」
「当然の結果だ」
「当然!?」
「閣下のご意向に従えぬ者、背く者には死あるのみだ」
「何をバカなこと……!」
言葉を交わしつつも、アンジェは相手と意思の疎通ができないことを察していた。
(狂ってるわ……何もかも!)
小銃を撃つが、あろうことかトリスタンは弾丸をかわし、アンジェに肉薄する。
(アタマもおかしけりゃ、動きもケダモノ並み。こいつ、マジにイカレてるわね。
いいや、こいつのことだけじゃない。ここにいる誰も彼も、みんなあのクソジジイを信奉してる、異常者だらけ。あいつの言うことがカミサマの言葉より尊いと信じ込んでる。人を殺せって言われれば迷いなく殺しに来るし、襲えって命じられれば、ついさっきまで姫だ何だって持てはやしてた相手だって、構いやしない。
異常よ! ここは何もかも狂ってるわ!)
羽交い締めにしようとしたトリスタンを紙一重で避け、アンジェは小銃の銃床をトリスタンのほおに叩き付ける。
「ぬおっ!?」
自分の4分の3ほどしか無い体躯の少女に弾き飛ばされ、トリスタンは倒れ込みつつも、感心したような声を漏らす。
「やはり素晴らしい! やはり閣下の血を引いておられるだけは」「黙れ!」
アンジェは小銃を構え直し、トリスタンに怒鳴る。
「もううんざり! 何が閣下よ! 何が組織よ! こんな狂った世界、あたしが全部ブチ壊してやる!」
「何と残念なことを申されるのだ」
トリスタンはすっと立ち上がり、アンジェを見下ろす。
「誠に残念だが、最早あなたは組織にとって害にしかならぬようだ。排除せねばならぬ」
「やってみなさいよ!」
アンジェとトリスタンが対峙した、その瞬間――。
「や、……やらせないぞッ!」
空中から突然、肌の浅黒い青年が割り込み、トリスタンの顔を蹴り飛ばした。
「おう……っ!?」
再び倒れ込んだトリスタンの前に降り立ち、彼はアンジェに声を掛ける。
「ここは僕が何とかする! トリーシャ、あなたは、……あなたは、自分のしたいことを!」
「アレーニェ! ……ううん、アレン! ありがとう!」
助けてくれたアレーニェに礼を言い、アンジェはその場から離れた。その間に立ち上がったトリスタンが、アレーニェをにらみつける。
「血迷ったな、アレーニェ。女ごときのために、己の未来と栄光をドブに捨てたか」
「その女のためなら、……愛する女(ひと)のためなら、何だってやってやるさ」
JJの、そして組織の人間全員の誤算は、2つあった。1つは、男10人がかりで襲わせれば屈服すると考えていたトリーシャが、その10人を事も無げに屠れるほどの手練に成長していたこと。そしてそのトリーシャが、2人いたことだった。
アンジェがJJを討つべく動き出したことをフィーも察知し、この戦闘に参加した結果、組織は完全に翻弄され、引っ掻き回されることとなった。
「姫は兵器廠(へいきしょう)で破壊工作中! 総員、兵器廠へ集合せよ!」
「何言ってやがる!? 姫は今、閣下のお屋敷に油を撒いて……」
「寝ぼけてんのか!? 兵器廠だっつってんだろ!?」
「いいや、屋敷だ! 俺は実際に見て来たんだぞ!?」
「見間違いだろ!? 逃げて来たって奴が何人もいるんだぜ!」
1人と認識している相手が2ヶ所で同時に現れたために、組織の誰も彼もが、右往左往するばかりでまともな行動が執れなくなった。JJでさえも、どこに人を集めればよいのかさえ見当が付かなくなり、狼狽するばかりだった。
「ええい、姫は、トリーシャは一体どこにおると言うのだ!? こ、このままでは、このままでは……っ!」

JJの恐れていたことは3時間後、現実のものとなった。
この日、JJが20年近い年月を掛けて築き上げてきた組織は、その孫娘「たち」の手によって崩壊した。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
ブログ「妄想の荒野」の矢端想さんに挿絵を描いていただきました。
ありがとうございます!
ブログ「妄想の荒野」の矢端想さんに挿絵を描いていただきました。
ありがとうございます!
- 関連記事
-
-
DETECTIVE WESTERN 15 ~ 新世界の誘い ~ 13 2020/12/13
-
DETECTIVE WESTERN 15 ~ 新世界の誘い ~ 12 2020/12/12
-
DETECTIVE WESTERN 15 ~ 新世界の誘い ~ 11 2020/12/11
-
DETECTIVE WESTERN 15 ~ 新世界の誘い ~ 10 2020/12/10
-
DETECTIVE WESTERN 15 ~ 新世界の誘い ~ 9 2020/12/09
-



@au_ringさんをフォロー
総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

~ Trackback ~
トラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
~ Comment ~