DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 15 ~ 新世界の誘い ~ 13
ウエスタン小説、第13話。
これからのこと。
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13.
トリーシャはエミルたちに、自分の農場を案内してくれた。
「今は牧畜と酪農を主軸にやってるけど、最近、周りを本格的に開墾(かいこん)してるの。頑張ればマメとかトウモロコシとかいっぱい作れそうだから。上手く行けばもう一儲けできるかもね」
「今だって相当儲けてるんでしょ? まだおカネがいるの?」
尋ねたエミルに、トリーシャはにこっと笑って返した。
「おカネの問題じゃないわ。あたしはこの町を、大きくしたいのよ。西部一番の、大きな町にね」
「立派な目標ですな」
局長の言葉に、トリーシャはまた笑みを向ける。
「ええ。人生一度きりですもの、夢は大きく持ちたいじゃない?」
「そしていくつも、ですか?」
そう返されてトリーシャは微笑んだが、他の者は首をかしげている。
「どう言う意味です?」
「気付いていないのかね、アデル? 彼女の左手をよく観察してみたまえ」
局長が示すと同時に、トリーシャは左手を掲げ、その薬指を見せてくれた。
「あ、指輪。……ってことは」
一同は後ろに付いて来ていたイクトミ――改め、アレンの手も見てみる。そこにも同じデザインの指輪がおごられていることを確認し、エミルはトリーシャの、その手を取る。
「そうだったのね。おめでとう、でいいのかしら?」
「ええ。10年越しの恋が実ったんですもの。とってもおめでたいことだわ」
「ってなると、次の夢は大家族って感じっスか?」
口を挟んで来たロバートにも、トリーシャは笑ってくれた。
「ええ。あの家がとっても狭く感じるくらい、いっぱい子供が欲しいわね」
「君ならそのすべてを叶えてしまえるだろう。それだけの活力と、強い意志を感じるよ」
滅多に人をほめないアーサー老人でさえ、彼女には感服したらしかった。
「ありがとう。……それでエミル、あんたはこれからどうするの?」
「あたし?」
話題を振られ、エミルは面食らう。
「ええ。過去は全部、太平洋の沖合いで吹き飛んだ。後はもう、未来のことだけ考えて生きていられる。その上で、あんたはこれからどうするのかしら、って」
「考えたことも無かったわね。そっか、これから、……か」
エミルは考えを巡らせようとしたが、すぐに頭を横に振った。
「全然思い付かないわ」
「ま、とりあえずそれでいいんじゃない?」
今度はトリーシャがエミルの手を取り、楽しそうに笑った。
「人生、まだまだ長いんだもの。一から十までぴっちり決まってたら、きゅうくつで仕方無いわ。分かんないなら分かんないなりに、適当に進めばいいのよ」
「あんた……ものすごく、楽観的なのね」
「そうじゃなきゃやってらんないし、楽しくないもの。あんたも気楽に生きてみなさいよ。ねっ?」
「気楽に、……か」
その後、エミルたち一行はトリーシャの家で料理をご馳走になった後、町のサルーンに泊まることになった。
「流石にお客さん5人もいると、うちに泊められないもの。ごめんね、エミル」
「いいわよ、あんたのおかげでタダにしてもらったんだから。感謝してるわ」
「こちらこそ。それじゃ、また明日ね」
サルーンの手前で礼を告げ、トリーシャと別れ――ようとしたところで、エミルがそっと、他の皆に知られないようにトリーシャの手を引いた。
「どうしたの?」
察してくれたらしく、彼女は小声で尋ねる。
「あとで、……お邪魔していいかしら」
「ええ」
うなずいてから、トリーシャはこう続けた。
「あんたの頼み事なら、なんだって聞くわよ」
「……ありがとう」
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これからのこと。
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13.
トリーシャはエミルたちに、自分の農場を案内してくれた。
「今は牧畜と酪農を主軸にやってるけど、最近、周りを本格的に開墾(かいこん)してるの。頑張ればマメとかトウモロコシとかいっぱい作れそうだから。上手く行けばもう一儲けできるかもね」
「今だって相当儲けてるんでしょ? まだおカネがいるの?」
尋ねたエミルに、トリーシャはにこっと笑って返した。
「おカネの問題じゃないわ。あたしはこの町を、大きくしたいのよ。西部一番の、大きな町にね」
「立派な目標ですな」
局長の言葉に、トリーシャはまた笑みを向ける。
「ええ。人生一度きりですもの、夢は大きく持ちたいじゃない?」
「そしていくつも、ですか?」
そう返されてトリーシャは微笑んだが、他の者は首をかしげている。
「どう言う意味です?」
「気付いていないのかね、アデル? 彼女の左手をよく観察してみたまえ」
局長が示すと同時に、トリーシャは左手を掲げ、その薬指を見せてくれた。
「あ、指輪。……ってことは」
一同は後ろに付いて来ていたイクトミ――改め、アレンの手も見てみる。そこにも同じデザインの指輪がおごられていることを確認し、エミルはトリーシャの、その手を取る。
「そうだったのね。おめでとう、でいいのかしら?」
「ええ。10年越しの恋が実ったんですもの。とってもおめでたいことだわ」
「ってなると、次の夢は大家族って感じっスか?」
口を挟んで来たロバートにも、トリーシャは笑ってくれた。
「ええ。あの家がとっても狭く感じるくらい、いっぱい子供が欲しいわね」
「君ならそのすべてを叶えてしまえるだろう。それだけの活力と、強い意志を感じるよ」
滅多に人をほめないアーサー老人でさえ、彼女には感服したらしかった。
「ありがとう。……それでエミル、あんたはこれからどうするの?」
「あたし?」
話題を振られ、エミルは面食らう。
「ええ。過去は全部、太平洋の沖合いで吹き飛んだ。後はもう、未来のことだけ考えて生きていられる。その上で、あんたはこれからどうするのかしら、って」
「考えたことも無かったわね。そっか、これから、……か」
エミルは考えを巡らせようとしたが、すぐに頭を横に振った。
「全然思い付かないわ」
「ま、とりあえずそれでいいんじゃない?」
今度はトリーシャがエミルの手を取り、楽しそうに笑った。
「人生、まだまだ長いんだもの。一から十までぴっちり決まってたら、きゅうくつで仕方無いわ。分かんないなら分かんないなりに、適当に進めばいいのよ」
「あんた……ものすごく、楽観的なのね」
「そうじゃなきゃやってらんないし、楽しくないもの。あんたも気楽に生きてみなさいよ。ねっ?」
「気楽に、……か」
その後、エミルたち一行はトリーシャの家で料理をご馳走になった後、町のサルーンに泊まることになった。
「流石にお客さん5人もいると、うちに泊められないもの。ごめんね、エミル」
「いいわよ、あんたのおかげでタダにしてもらったんだから。感謝してるわ」
「こちらこそ。それじゃ、また明日ね」
サルーンの手前で礼を告げ、トリーシャと別れ――ようとしたところで、エミルがそっと、他の皆に知られないようにトリーシャの手を引いた。
「どうしたの?」
察してくれたらしく、彼女は小声で尋ねる。
「あとで、……お邪魔していいかしら」
「ええ」
うなずいてから、トリーシャはこう続けた。
「あんたの頼み事なら、なんだって聞くわよ」
「……ありがとう」
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