「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
央中神学事始
央中神学事始 18
ペドロの話、第18話。
最後の謎を知る者。
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18.
モール・リッチ――央北天帝教において「三賢者」の一角と称される人物であり、「彼」は「旅の賢者」とも呼ばれている。残る二人「時の賢者」ゼロ・タイムズ、そして「幻の賢者」ホウオウ、この三人によって現代における魔術の基本理論が確立されたとされてきたが、克大火や黒炎教団の件もあって、この説は近年、疑問視され始めている。
便宜上「彼」と呼ばれることが多く、央北天帝教の聖書「降誕記」および「天帝昇神記」においても男性として扱われているが、一方でペドロたちが集めた資料の中では女性であるかのような表現も多数見られ、性別ははっきりしていない。なお、実際に出会ったと言う3世も、女性であったと記憶しているらしい。
その他、種族も猫獣人であったり長耳であったりとはっきりせず、当然、年齢すらも不詳の人物である。
「つまり正体不明と」
「結論的にはそうなるのでしょうね」
そのモールが央北で発見されたとの知らせを受け、ペドロとナイジェル博士は再び、3世に呼び出されていた。
「そうなると発見されたその人物が、本当に本物であるか判断が難しいと思われるのだが、3世には何か、証明できる手立てがあると?」
「エリザが持っとった魔杖があるやろ?」
尋ねられ、ペドロが答える。
「ええ。『ロータステイル』ですね」
「あれと対になった魔杖があるっちゅう話も知っとるな?」
今度はナイジェル博士が答える。
「確か『ナインテイル』だったな。エリザの師であったモールが所有していたと、……ふむ。その魔杖を比較照合すれば証明できるわけか」
「そう言うこっちゃ。ほんで、既に照合も終わっとる。『ロータステイル』はウチの家宝やからな、そう簡単に模造品なんか作られへんよう、厳重に保管されとる。その模造不可能な『ロータステイル』そっくりのもんを持ってはるっちゅうことは……」
「即ち彼がそのモール本人である、と。……あ、『彼』でよろしかったでしょうか?」
ペドロに尋ねられ、3世は肩をすくめた。
「今回は『彼女』やな。ほんで『猫』やて」
「どのようにして捕捉を? 聖書中でも散々、剣呑な性格であったとされているが、そう簡単に言うことを聞くような性質では無いだろう」
「お前みたいにな」
ナイジェル博士にそう返しつつも、3世は説明してくれた。
「あのお姐ちゃん、ヘボのクセにカジノやら賭場やらで調子に乗って、大金賭けよるお調子もんの性格しとるからな。賭場の立っとるとこ行ってそう言うヤツ探して、さっき言うた杖持っとったらソイツで間違い無いっちゅうわけや。
で、今回も――私が出会った時もそうやったんやけども――大負けして200万ほど借金しとったとこに声掛けて杖を確認して、どうも本人っぽいっちゅうことでカネ貸したってな」
「どうせそのカネもスってしまったのだろう。で、借金のカタとして拘束したわけか」
「ほぼ正解やな」
3世はニヤッと笑い、こう続けた。
「貸したカネで当たるんは当たったらしいわ。ほんでも10分で3割増える貸しにしとったからな。1時間ほっとって、1000万近くに増えたところで返しに来よったけども……」
「勝った分を全額獲られ、それでもまだ残った借金で引っ張って来た、と」
「そう言うこっちゃ」
「ひどい方だ」
ペドロは率直にそう口走ったが、3世はやはり、意に介していないようだった。
「ま、借金やら何やらは捕まえるための方便みたいなもんやしな。用事済ましたら反故にしたって構わへんわ。ちゅうわけで、や」
3世は傍らに置いていた杖をつかみ、先端をペドロに向けた。
「今から会って話してき」
こうしてペドロと、そしてナイジェル博士の2人は央北へ飛び、モールを訪ねることとなった。
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最後の謎を知る者。
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18.
モール・リッチ――央北天帝教において「三賢者」の一角と称される人物であり、「彼」は「旅の賢者」とも呼ばれている。残る二人「時の賢者」ゼロ・タイムズ、そして「幻の賢者」ホウオウ、この三人によって現代における魔術の基本理論が確立されたとされてきたが、克大火や黒炎教団の件もあって、この説は近年、疑問視され始めている。
便宜上「彼」と呼ばれることが多く、央北天帝教の聖書「降誕記」および「天帝昇神記」においても男性として扱われているが、一方でペドロたちが集めた資料の中では女性であるかのような表現も多数見られ、性別ははっきりしていない。なお、実際に出会ったと言う3世も、女性であったと記憶しているらしい。
その他、種族も猫獣人であったり長耳であったりとはっきりせず、当然、年齢すらも不詳の人物である。
「つまり正体不明と」
「結論的にはそうなるのでしょうね」
そのモールが央北で発見されたとの知らせを受け、ペドロとナイジェル博士は再び、3世に呼び出されていた。
「そうなると発見されたその人物が、本当に本物であるか判断が難しいと思われるのだが、3世には何か、証明できる手立てがあると?」
「エリザが持っとった魔杖があるやろ?」
尋ねられ、ペドロが答える。
「ええ。『ロータステイル』ですね」
「あれと対になった魔杖があるっちゅう話も知っとるな?」
今度はナイジェル博士が答える。
「確か『ナインテイル』だったな。エリザの師であったモールが所有していたと、……ふむ。その魔杖を比較照合すれば証明できるわけか」
「そう言うこっちゃ。ほんで、既に照合も終わっとる。『ロータステイル』はウチの家宝やからな、そう簡単に模造品なんか作られへんよう、厳重に保管されとる。その模造不可能な『ロータステイル』そっくりのもんを持ってはるっちゅうことは……」
「即ち彼がそのモール本人である、と。……あ、『彼』でよろしかったでしょうか?」
ペドロに尋ねられ、3世は肩をすくめた。
「今回は『彼女』やな。ほんで『猫』やて」
「どのようにして捕捉を? 聖書中でも散々、剣呑な性格であったとされているが、そう簡単に言うことを聞くような性質では無いだろう」
「お前みたいにな」
ナイジェル博士にそう返しつつも、3世は説明してくれた。
「あのお姐ちゃん、ヘボのクセにカジノやら賭場やらで調子に乗って、大金賭けよるお調子もんの性格しとるからな。賭場の立っとるとこ行ってそう言うヤツ探して、さっき言うた杖持っとったらソイツで間違い無いっちゅうわけや。
で、今回も――私が出会った時もそうやったんやけども――大負けして200万ほど借金しとったとこに声掛けて杖を確認して、どうも本人っぽいっちゅうことでカネ貸したってな」
「どうせそのカネもスってしまったのだろう。で、借金のカタとして拘束したわけか」
「ほぼ正解やな」
3世はニヤッと笑い、こう続けた。
「貸したカネで当たるんは当たったらしいわ。ほんでも10分で3割増える貸しにしとったからな。1時間ほっとって、1000万近くに増えたところで返しに来よったけども……」
「勝った分を全額獲られ、それでもまだ残った借金で引っ張って来た、と」
「そう言うこっちゃ」
「ひどい方だ」
ペドロは率直にそう口走ったが、3世はやはり、意に介していないようだった。
「ま、借金やら何やらは捕まえるための方便みたいなもんやしな。用事済ましたら反故にしたって構わへんわ。ちゅうわけで、や」
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