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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 5;緑綺星」
    緑綺星 第1部

    緑綺星・猫報譚 3

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    シュウの話、第3話。
    秘密基地。

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    3.
     空を10分ほど飛んだ後、シュウは裏通りの、くたびれた家のテラスに着陸した。
    《ゴメンな。怖かっただろ?》
    「あ、いえ。ちょっとびっくりはしましたけど、面白かったですよ。ジェットコースターみたいでしたし」
     シュウにそう返され、装甲は《えっ》と声を上げる。
    《あんた、神経めっちゃめちゃ太いんやな。……っと》
     そこでようやく、装甲がヘルメットを脱ぐ。そこに現れたのはまだ幼さの残る、金と赤の毛並みをした青年だった。
    「自己紹介が遅れてゴメン。俺の名前はジャンニ。……これも内緒な」
    「あ、はい。全然だいじょぶです」
    「ここは俺んち」
    「ソレも内緒ですね。あっちの彼女さんも?」
     シュウが尋ねると同時に、部屋の奥でパソコンをいじっていた黒髪に濃い地黒の、ジャージ姿の短耳少女がくるっと振り向く。
    「ちげーよ。ただの居候だよ」
    「っちゅうことや。あっちはカズちゃん。見た通りの性格しとるけどええヤツやから。内緒は内緒やで」
    「はい、だいじょぶです。で、そのカズちゃんが、わたしに聞きたいコトがあるって話でしたよね?」
    「そーそー」
     カズと呼ばれた少女が椅子からのそのそと立ち上がり、シュウのそばに寄ってまじまじと眺める。
    「お前、いくつ?」
    「21です」
    「マジかよ? すげーチビじゃん。オレより背ぇ低いなんて、中房かオレの妹くらいだぜ」
    「良く言われます。どーせ童顔ですし幼児体型ですしね」
    「あ、悪りいな。まあ、ソレは置いといて、だ。アンタがあのシュウ・メイスンか? あの『めりぽ』の」
     そう尋ねつつ、カズはパソコンの画面を指差す。
    《つまりですねー、このフランチェスコ不動産も、ネオクラウン系の人たちなんですよ。みなさん、ココは注意ですよー。絶対ココで家買ったりアパート借りたりしちゃダメですよー》
     動画に出ている自分の顔を見て、シュウはこくんとうなずいた。
    「はい、わたしですー」
    「お前、バカだろ?」
     シュウをチラ、と横目で見て、カズはため息をつく。
    「よりによってマフィアのペーパー会社を名指しで暴いてネットで晒すとか、何考えてんだ? そりゃカチ込まれるっつの」
    「しっつれーなコですねー」
     そんなことを話している間に、ジャンニが装甲を脱いで部屋に戻って来た。
    「……へー」
     その姿を見て、シュウは意外に感じた。
    「ふつーの男のコって感じですねー。もっとなんかこう、おヒゲのイケメンおじさんみたいなのを想像してました」
    「そりゃふつーさ。中身はただの、19歳の青二才だ」
     カズは肩をすくめつつ、ジャンニを紹介する。
    「無鉄砲で向こう見ず、勇気と蛮勇の違いも分かってねー甘ちゃんだよ」
    「わぁ毒舌」
     シュウは口をへの字に曲げ、カズに尋ねる。
    「そんなコト言って、カズちゃんはおいくつなんですかー?」
    「さーな」
     カズは乱雑にまとめた長い髪を、くしゃくしゃと手ですきながら答える。
    「1000歳だか2000歳だか。正確なトコは分からん」
    「あ、そーゆー設定ですかー。いかにも中学生ですねー」
    「ちげーよ。……ま、いいや。お前さんに聞きたいコトがあんだよ」
    「そー言ってましたね。なんでしょ?」
    「『めりぽ』のいっちゃん初期の頃のエヴァ・アドラー特集ってあんだろ?」
    「ありましたねー」
    「今でも連絡取れんのか? エヴァ……、エヴァンジェリン・アドラーと」
     そう尋ねられるが、シュウはもう一度への字口を返す。
    「動画でお伝えしてた通りですねー。今はドコにいるのかも、さっぱり」
    「そっか。……いや、疑ってたワケじゃねーんだ。お前さんかエヴァのどっちかに公にできねー事情があって、『めりぽ』じゃ言わなかったって可能性もあるかと思ったんだ。……けど、こーやってお前さんと直に会って分かったが、お前さん、そんなタイプじゃねーな?」
    「まー、そーですね。基本、隠し事ナシでお話してます。他に聞きたいコト、ありますか?」
    「いや、もう無いぜ。いきなり呼びつけて悪かったな。んじゃ気ぃ付けて……」「あ、ちょっと、ちょっと」
     と、話を切り上げようとしたカズを、シュウがさえぎった。
    「わたしからも色々質問させて下さいよー。折角あの『スチール・フォックス』と会えたんですからー」
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