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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 5;緑綺星」
    緑綺星 第1部

    緑綺星・鋼狐譚 3

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    シュウの話、第9話。
    スチール・フォックスの完成。

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    3.
     若く人生経験の浅いジャンニでも、カズが優秀かつ多彩な技能の持ち主であることは、すぐに理解できた。手始めに連れて行かれた複数の店のどこでも、店員も舌を巻くほどの広汎な知識を発揮したからである。
    「……えっぐいなぁ」
     そうして作り上げたモノは――総額12万9千エルと言う、いち家庭では車の購入検討時にしか出てこないような、とんでもない額が注ぎ込まれた――とてつもないスペックのパソコンだった。
    「こんなんいるんか、ホンマに?」
    「半分は趣味でやっちまったが、半分はマジだ。今から考えてるヤツは、結構マシンパワー使うんだよ。あ、あと3Dプリンタとレーザー加工機と旋盤も買うぞ。……あとは、……んー、……とりあえず工具一式ざっとかな」
    「……ヘンなもん作らんといてや?」

     カズの金遣いの荒さと傍若無人な振る舞いに辟易したジャンニではあったが、結果としてカズの製作物は、ジャンニの予想と期待を大きく上回る代物となった。
    「なんやこれ」
    「パワードスーツってヤツだよ」
     そうしてできあがった金属彫刻じみた鎧を前にして、ジャンニは呆然とするしかなかった。
    「……なんで?」
    「まず第一。お前さん、素性がバレたら嫌だっつってたろ? コレなら顔も体型も、耳や尻尾まですっぽり隠せる。そして第二。お前さんはハッキリ言ってへなちょこだ。戦闘技術ってもんがまるでなっちゃいねー。今のままじゃ、街の酔っ払いにすら負ける。例え拳銃持ってても、だ。自分で分かんだろ、ソコら辺は?」
    「そ、それは……まあ」
    「そんな貧弱くんがマフィアと正面切って戦おうってなったら、相当気合い入ったアシスト付けなきゃならねー。ソレが、コレだ。
     ミスリル化シリコンゴムにミスリル化チタン鋼、ミスリル化カーボン、その他超々強度の素材で作って、各パーツごとに神器化処理を施してある。現状でも銃弾どころか100ミリ戦車砲弾をゼロ距離で食らってもノーダメージ、中のお前さんは無傷だ」
    「いや、それは無いやろ。タマ自体は止めても、衝撃ってもんが……」
    「ソコも織り込み済みってヤツさ。ほれ、試しに着てみな」
    「ええー……」
     ジャンニは難色を示したものの、結局カズの押しに負けた。
    「どうやって着るん? って言うか、どうやってこれ開けるん?」
    「オーラ認証方式。お前さんがやるぞって思ったら、スーツの方からかぱっと開いて包み込んでくれっから。もういいぜって思ったら勝手に脱げるし」
    「はあ」
     言われた通り、ジャンニは心の中で着るぞと考えた。途端にカズの言う通り、スーツがかぱっと開き、ジャンニに覆いかぶさった。
    「うわっ、お、……お、おお?》
     明らかに重たげな鉄の塊がのしかかってきたものの、ジャンニ本人には何の衝撃も無い。
    「装着者本人を守るコトを最優先で命令してっからな。スーツがお前さん自身を傷付けるコトは、絶対に無い」
    《はあ……なるほど》
     ジャンニがスピーカー越しに返事したところで、カズが机に転がっていたジャンニの拳銃を手に取る。
    「ってワケで」
    《え、ちょ》
     戸惑うジャンニに構わず、カズはジャンニに向かって発砲した。
    《うわっ、やめっ、……あれ?》
     パン、パンとけたたましい音が部屋にこだまするが、それ以外には何も感じない。戸惑っている内に、カズが空になった拳銃の弾倉を抜き取り、ジャンニの鼻先に突きつけた。
    「この通りだ。9ミリ拳銃弾15発一気にブチ込んでみたが、何か感じたか?」
    《……全然。音しか感じひんかった》
    「人体に害があるレベルの衝撃を感知した場合、『マジックシールド』が発動するようになってる。しかも3層だ。そのシールドだけでもお前さんがダメージ食らうようなコトには、まずならねーだろう。仮にその装甲まで達するクラスの兵器となりゃ――流石にミサイルくらいの戦術兵器が直撃したらヤバいが――そこいらのゴロツキがそう簡単に手に入れられるような代物じゃねー。勿論、装甲本体の防御力も高い。仮に対魔術対策を仕掛けられたとしても、そう簡単にその装甲は破れねー。お前さんの身は、絶対に安全ってワケだ」
     そこまで説明されたところで、ジャンニも余裕と興味が出てきた。
    《……ちなみにやで、カズちゃん。ちなみにで聞くんやけども、笑わんといてや?》
    「なんだよ?」
    《これ、もしかして飛べたりするん?》
    「ヘッ」
     その質問を鼻で笑い飛ばして、カズは得意満面に答えた。
    「飛べるに決まってんだろ」
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