「双月千年世界 5;緑綺星」
緑綺星 第1部
緑綺星・鋼狐譚 4
シュウの話、第10話。
広報活動の重要性。
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4.
「……そんなわけで、俺はこのパワードスーツ使てネオクラウンの奴らと戦ってんねん。自分で言うのんも恥ずかしいけども、ま、正義の味方っちゅうやつやな」
「ふむふむ」
シュウはそこでスマホを操作し、録画を止める。
「ちょっとお聞きしたいんですけど、広報に関しては何かされてます?」
「こーほー?」
「自分たちの活動について、ブログとか動画とか、そーゆーので説明されてますかってコトです」
シュウの質問に、ジャンニはぽかんとした顔を見せる。代わりに、既にパソコンにかじりついていたカズが、背を向けたまま答えた。
「やってるワケねーじゃん」
「では何を根拠に、正義の味方って言い張ってるんですかー?」
「へ」
ぽかんとした顔のまま、ジャンニが間の抜けた声を漏らす。
「いやほら、悪と戦うやつっちゅうたら正義の味方になるやんか」
「ソレはジャンニくんの感想、って言うか願望ですよねー?」
ぴしゃりと言い切り、シュウはカズに尋ねる。
「カズちゃん、『スチール・フォックス』で検索したコトあります?」
「……おう」
「その検索結果、ジャンニくんに知らせてますー?」
「あー……いや……ほら、アレだよ、コイツ、パソコン音痴だし」
「口頭で教えるならパソコン関係無いですよね?」
「う……」
渋い顔で振り返り、カズは歯切れ悪く答えた。
「お前さんが言いたいコトは、まあ、うん、何となく分かった。つまりアレだ、コイツが自分で自分のコトどう思ってるかと、世間のヤツらがどううわさしてるかが、まあ、その、一致してるとは言い難いって言うよーなコトを言いたいってコトだよな」
「え」
遠回しな言い方ながらも、シュウとカズの言わんとすることを、ジャンニも悟ったらしい。
「まさか俺、正義の味方と思われてへんのん?」
「思われてないって言うか、真逆ですよ」
シュウは自分のスマホをいじり、その「評判」を見せる。
「『お騒がせキツネ また器物損壊』、『スチール・フォックス 今度は爆発騒ぎか』、……この文面で正義の味方だって思う人はいないと思いますけどねー」
「マジで?」
「わたしの個人的意見も含みますけど、いきなり空から落ちてきて人を殴り倒して暴れ回って、一言も言わずにその場を去るって、ただただ迷惑な人なだけですよー?」
「い、いやでも、俺はネオクラウンの奴らしか狙てへんし」
「構成員の人たちなんて大体、表じゃただのブラック企業勤めの人たちですよ? そりゃホテル襲撃の時は拳銃とかPDWとか持ってましたけども、曲がりなりにも『ただの勤め人』を有無を言わさず殴り飛ばす人がいたら、どっちがヤバい人だって思います?」
「えー……ウソやん……俺、そう思われてんのー……?」
頭を抱えたジャンニを見て、シュウはため息をついた。
「ジャンニくんの悪いトコは自分の理想に走りすぎなトコですよ。現実とマッチした行動取らなきゃ、そのうちホントに逮捕されちゃいますよー」
「マジか……」
「今からでも遅くないでしょうし、是非広報した方がいいですよ。何ならわたし、手伝いますから」
「ええのん?」
ジャンニが顔を挙げたところで、カズが口を挟む。
「お前さんは本当、女に弱いな」
「そ、そんなことあらへん」
「あるから言ってんだよ。なにいきなりこんな口軽女の手ぇ借りようとしてんだよ」
「いや、でもシュウさんの言う通りやんか。このまんま今まで通り活動しても、公安に目ぇ付けられるだけやし」
「捕まえられるかってんだ。どーやって拘束すんだよ」
「捕まると思いますよ? 令状持ってココに来たらアウトですよね。間一髪スーツ着て逃げたとしても、この家の登記調べたら素性が割れちゃうでしょうし」
「アジトが見つかるってのか?」
シュウはスマホの画面をカズに向け、動画を見せる。
「ほら、『徹底考察! スチール・フォックスの潜伏先は!?』ですって。ジャンニくんの飛行ルートを解析して、どの辺にアジトがあるのか推理してますよ」
「……そんな動画上がってんのか」
「幸いと言うか――ゆうべジャンニくんと一緒に空飛んだ時に確認しましたけど――考察動画の人たちの予想は今のところ、外れてます。でもこのままほっといたらそのうちこの人たちも公安の人たちも、ココを突き止めると思いますよ」
「まずいな」
「なのでまずは宣伝です。『スチール・フォックス』が正義の味方だってコト、ちゃんと伝えましょ」
シュウはカズの隣にしゃがみ込み、にこっと笑みを向けた。
「と言うわけでパソコンお借りしますねー」
「……分かったよ。よろしく頼むわ」
カズは苦い顔をしつつも、シュウに席を譲った。
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広報活動の重要性。
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「……そんなわけで、俺はこのパワードスーツ使てネオクラウンの奴らと戦ってんねん。自分で言うのんも恥ずかしいけども、ま、正義の味方っちゅうやつやな」
「ふむふむ」
シュウはそこでスマホを操作し、録画を止める。
「ちょっとお聞きしたいんですけど、広報に関しては何かされてます?」
「こーほー?」
「自分たちの活動について、ブログとか動画とか、そーゆーので説明されてますかってコトです」
シュウの質問に、ジャンニはぽかんとした顔を見せる。代わりに、既にパソコンにかじりついていたカズが、背を向けたまま答えた。
「やってるワケねーじゃん」
「では何を根拠に、正義の味方って言い張ってるんですかー?」
「へ」
ぽかんとした顔のまま、ジャンニが間の抜けた声を漏らす。
「いやほら、悪と戦うやつっちゅうたら正義の味方になるやんか」
「ソレはジャンニくんの感想、って言うか願望ですよねー?」
ぴしゃりと言い切り、シュウはカズに尋ねる。
「カズちゃん、『スチール・フォックス』で検索したコトあります?」
「……おう」
「その検索結果、ジャンニくんに知らせてますー?」
「あー……いや……ほら、アレだよ、コイツ、パソコン音痴だし」
「口頭で教えるならパソコン関係無いですよね?」
「う……」
渋い顔で振り返り、カズは歯切れ悪く答えた。
「お前さんが言いたいコトは、まあ、うん、何となく分かった。つまりアレだ、コイツが自分で自分のコトどう思ってるかと、世間のヤツらがどううわさしてるかが、まあ、その、一致してるとは言い難いって言うよーなコトを言いたいってコトだよな」
「え」
遠回しな言い方ながらも、シュウとカズの言わんとすることを、ジャンニも悟ったらしい。
「まさか俺、正義の味方と思われてへんのん?」
「思われてないって言うか、真逆ですよ」
シュウは自分のスマホをいじり、その「評判」を見せる。
「『お騒がせキツネ また器物損壊』、『スチール・フォックス 今度は爆発騒ぎか』、……この文面で正義の味方だって思う人はいないと思いますけどねー」
「マジで?」
「わたしの個人的意見も含みますけど、いきなり空から落ちてきて人を殴り倒して暴れ回って、一言も言わずにその場を去るって、ただただ迷惑な人なだけですよー?」
「い、いやでも、俺はネオクラウンの奴らしか狙てへんし」
「構成員の人たちなんて大体、表じゃただのブラック企業勤めの人たちですよ? そりゃホテル襲撃の時は拳銃とかPDWとか持ってましたけども、曲がりなりにも『ただの勤め人』を有無を言わさず殴り飛ばす人がいたら、どっちがヤバい人だって思います?」
「えー……ウソやん……俺、そう思われてんのー……?」
頭を抱えたジャンニを見て、シュウはため息をついた。
「ジャンニくんの悪いトコは自分の理想に走りすぎなトコですよ。現実とマッチした行動取らなきゃ、そのうちホントに逮捕されちゃいますよー」
「マジか……」
「今からでも遅くないでしょうし、是非広報した方がいいですよ。何ならわたし、手伝いますから」
「ええのん?」
ジャンニが顔を挙げたところで、カズが口を挟む。
「お前さんは本当、女に弱いな」
「そ、そんなことあらへん」
「あるから言ってんだよ。なにいきなりこんな口軽女の手ぇ借りようとしてんだよ」
「いや、でもシュウさんの言う通りやんか。このまんま今まで通り活動しても、公安に目ぇ付けられるだけやし」
「捕まえられるかってんだ。どーやって拘束すんだよ」
「捕まると思いますよ? 令状持ってココに来たらアウトですよね。間一髪スーツ着て逃げたとしても、この家の登記調べたら素性が割れちゃうでしょうし」
「アジトが見つかるってのか?」
シュウはスマホの画面をカズに向け、動画を見せる。
「ほら、『徹底考察! スチール・フォックスの潜伏先は!?』ですって。ジャンニくんの飛行ルートを解析して、どの辺にアジトがあるのか推理してますよ」
「……そんな動画上がってんのか」
「幸いと言うか――ゆうべジャンニくんと一緒に空飛んだ時に確認しましたけど――考察動画の人たちの予想は今のところ、外れてます。でもこのままほっといたらそのうちこの人たちも公安の人たちも、ココを突き止めると思いますよ」
「まずいな」
「なのでまずは宣伝です。『スチール・フォックス』が正義の味方だってコト、ちゃんと伝えましょ」
シュウはカズの隣にしゃがみ込み、にこっと笑みを向けた。
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