「双月千年世界 5;緑綺星」
緑綺星 第1部
緑綺星・鋼狐譚 6
シュウの話、第12話。
次なる演出は?
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
6.
ジャンニ、即ち市国に現れた謎の人物「スチール・フォックス」への取材動画をネット上にアップロードしたところ――。
「おかげさまで100万再生突破ですー」
「マジか」
半月ほどの間に動画再生数は伸びに伸び、彼に対する評価もプラス方向に大きく傾いた。
「って言っても全評価6万件ちょいの中、高評価52%ってトコなんですけどね」
「ギリ半分じゃねーか」
「そりゃまあ、口で『ぼくわるいやつじゃないよ!』なんて言って信用する人なんて、ソコまでいないですよー」
「そらそうやな」
「ソコでですよ」
シュウは人差し指をピン、と立て、こんな提案をした。
「もうちょっとヒーローっぽい活動してみたらどうでしょうか?」
「っちゅうと?」
「お二人はヒーローもののアクション映画観る方です?」
シュウに尋ねられ、二人は揃って頭を縦に振る。
「わりと」
「ま、好きな方だな」
「じゃ、こー考えてください。ふつーのコがなんやかんやあってスーパーな能力身に付けちゃいました! はじめはそのスーパーパワーで好き放題やってたけど、正義のココロみたいなのが芽生えて、悪と戦う決意を固めました! ハイこの後の展開と言えば!?」
「すげー悪くて強いヤツが出て来て大ピンチ、……とか?」
カズの回答に、シュウは「ぴんぽぉん!」と返す。
「お二人に確認していただいたから十分ご存知でしょうけども、わたしが『メイスンリポート』で上げたあの取材動画、いかにもなヒーローアクション映画の序盤をイメージして編集してあります。今言った、『すごいパワー身に付けた』から『正義のヒーローになるぞ!』までのくだりですね。となるとみんな期待するのは、巨悪と戦うシーンになるワケですけども――ジャンニくん、あなたが戦いたい巨悪って言えば?」
「そらネオクラウンや」
「ハイその通り大正解! 動画の方でもソコについてすっごく強調してますから、きっとみんな期待してます。でもですよ、実際のところ……」
「現実にあのパワードスーツ着ててもピンチに陥らせるよーなヴィラン(悪役)なんか、そうそういやしねーだろ」
口を挟んだカズに、シュウはうんうんとうなずく。
「勿論です。いたら困ります。なので『戦う』の意味をちょこっと変えてみるのはどうでしょうか?」
「っちゅうと?」
「カズちゃんが言ったコトの繰り返しになりますが、現実のハナシにヒーローとヴィランの取っ組み合いを求めるのは無理ですし、色んな意味で危険です。でもそのスーパーパワーを使ってすごいシーンを見せるコトは可能です。
でですね、ちょっと話は変わるんですけども、ネオクラウンの人たちの収入源って何だと思います?」
「財団にせびってんじゃねーのか?」
カズの回答に、今度はジャンニが不正解を告げる。
「そら無理があるわ。なんぼ財団総帥と仲良しや言うたって、総帥が独断で財団のカネを変なトコにじゃんじゃんつぎ込んだら、流石に言い訳効かへん。マフィアとつながっとるっちゅううわさを自分で認めるようなもんや。
かと言って総帥が独断で動かせるカネなんか、せいぜい自分の個人資産か、アキュラ家名義の資産程度や。長年外様のアキュラ家の人間が一人で何十億、何百億エルも持ってるわけがあらへんし、言うたら悪いけど、家全体の資産も高が知れとる。マフィアを甘やかすほどの額はあらへんで、多分」
「じゃあ、ドコからカネ取ってんだ?」
「うーん……どこやろな?」
顔を突き合わせたカズとジャンニに、今度はシュウが割って入った。
「こーゆー場合のありがちな資金源は、ズバリ利権関係ですね。商業上、行政上の優遇措置が色々与えられてるって話でしたから、末端で言えば幽霊会社に対する援助金ですとか、非合法な商売をやってもお咎めなしにしちゃうとか、税金を免除しちゃうとか、色々考えられますね。
あと、財団名義の企業が持ってる資産や設備を名目上借りる、実質的には私物化するって手法もあります」
「どう言うこった?」
「例えば昼間、ふつーに操業してる工場を、夜間の本来稼働してない時間帯に、勝手に動かしちゃうとかですね。水道光熱費は工場持ち、利益はネオクラウンにって感じになります」
「そらあかんやろ。いや、そもそも夜間操業は市国労働法違反やないか。工場は原則19時で閉めなあかんねんから」
「だから非合法なんですよ」
シュウはかばんを手に取り、メモ帳と書類束を取り出した。
@au_ringさんをフォロー
次なる演出は?
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
6.
ジャンニ、即ち市国に現れた謎の人物「スチール・フォックス」への取材動画をネット上にアップロードしたところ――。
「おかげさまで100万再生突破ですー」
「マジか」
半月ほどの間に動画再生数は伸びに伸び、彼に対する評価もプラス方向に大きく傾いた。
「って言っても全評価6万件ちょいの中、高評価52%ってトコなんですけどね」
「ギリ半分じゃねーか」
「そりゃまあ、口で『ぼくわるいやつじゃないよ!』なんて言って信用する人なんて、ソコまでいないですよー」
「そらそうやな」
「ソコでですよ」
シュウは人差し指をピン、と立て、こんな提案をした。
「もうちょっとヒーローっぽい活動してみたらどうでしょうか?」
「っちゅうと?」
「お二人はヒーローもののアクション映画観る方です?」
シュウに尋ねられ、二人は揃って頭を縦に振る。
「わりと」
「ま、好きな方だな」
「じゃ、こー考えてください。ふつーのコがなんやかんやあってスーパーな能力身に付けちゃいました! はじめはそのスーパーパワーで好き放題やってたけど、正義のココロみたいなのが芽生えて、悪と戦う決意を固めました! ハイこの後の展開と言えば!?」
「すげー悪くて強いヤツが出て来て大ピンチ、……とか?」
カズの回答に、シュウは「ぴんぽぉん!」と返す。
「お二人に確認していただいたから十分ご存知でしょうけども、わたしが『メイスンリポート』で上げたあの取材動画、いかにもなヒーローアクション映画の序盤をイメージして編集してあります。今言った、『すごいパワー身に付けた』から『正義のヒーローになるぞ!』までのくだりですね。となるとみんな期待するのは、巨悪と戦うシーンになるワケですけども――ジャンニくん、あなたが戦いたい巨悪って言えば?」
「そらネオクラウンや」
「ハイその通り大正解! 動画の方でもソコについてすっごく強調してますから、きっとみんな期待してます。でもですよ、実際のところ……」
「現実にあのパワードスーツ着ててもピンチに陥らせるよーなヴィラン(悪役)なんか、そうそういやしねーだろ」
口を挟んだカズに、シュウはうんうんとうなずく。
「勿論です。いたら困ります。なので『戦う』の意味をちょこっと変えてみるのはどうでしょうか?」
「っちゅうと?」
「カズちゃんが言ったコトの繰り返しになりますが、現実のハナシにヒーローとヴィランの取っ組み合いを求めるのは無理ですし、色んな意味で危険です。でもそのスーパーパワーを使ってすごいシーンを見せるコトは可能です。
でですね、ちょっと話は変わるんですけども、ネオクラウンの人たちの収入源って何だと思います?」
「財団にせびってんじゃねーのか?」
カズの回答に、今度はジャンニが不正解を告げる。
「そら無理があるわ。なんぼ財団総帥と仲良しや言うたって、総帥が独断で財団のカネを変なトコにじゃんじゃんつぎ込んだら、流石に言い訳効かへん。マフィアとつながっとるっちゅううわさを自分で認めるようなもんや。
かと言って総帥が独断で動かせるカネなんか、せいぜい自分の個人資産か、アキュラ家名義の資産程度や。長年外様のアキュラ家の人間が一人で何十億、何百億エルも持ってるわけがあらへんし、言うたら悪いけど、家全体の資産も高が知れとる。マフィアを甘やかすほどの額はあらへんで、多分」
「じゃあ、ドコからカネ取ってんだ?」
「うーん……どこやろな?」
顔を突き合わせたカズとジャンニに、今度はシュウが割って入った。
「こーゆー場合のありがちな資金源は、ズバリ利権関係ですね。商業上、行政上の優遇措置が色々与えられてるって話でしたから、末端で言えば幽霊会社に対する援助金ですとか、非合法な商売をやってもお咎めなしにしちゃうとか、税金を免除しちゃうとか、色々考えられますね。
あと、財団名義の企業が持ってる資産や設備を名目上借りる、実質的には私物化するって手法もあります」
「どう言うこった?」
「例えば昼間、ふつーに操業してる工場を、夜間の本来稼働してない時間帯に、勝手に動かしちゃうとかですね。水道光熱費は工場持ち、利益はネオクラウンにって感じになります」
「そらあかんやろ。いや、そもそも夜間操業は市国労働法違反やないか。工場は原則19時で閉めなあかんねんから」
「だから非合法なんですよ」
シュウはかばんを手に取り、メモ帳と書類束を取り出した。
- 関連記事



@au_ringさんをフォロー
総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

- ジャンル:[小説・文学]
- テーマ:[自作小説(ファンタジー)]
~ Trackback ~
トラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
~ Comment ~