「双月千年世界 5;緑綺星」
緑綺星 第1部
緑綺星・密薬譚 1
シュウの話、第14話。
シュウとカズの共通点?
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
1.
「つってもさー、やっぱ底んトコに苦い感じ残んじゃん」
「わたしはソレが好きなんですけどねー。だからドコの喫茶店行っても、カフェラテばっかり頼んじゃって」
二人とも片手にカップを持ちながら、それぞれ別のモニタを眺めつつ、取り留めもない話に興じている。
「オレは苦いの嫌いなんだよなー」
「でもチョコってビター感ありません?」
「なるべく無いヤツにしてる。ほら、コレもミルクチョコだし」
「あー」
どちらのモニタにも、数日前にクレメント製薬のサーバをハッキングして抜き取った、監視カメラの映像が映っている。
「こっちは甘めのチョコ多いですよね。わたしの住んでたトコ、ビターめなヤツばっかりで」
「そうなのか?」
「と言うか、わたしの実家が売ってるのがビター系メインなんですよね」
「お前の?」
ここ数日、揃ってモニタにかじりついている間に、二人はすっかり仲良くなっていた。
「なんてトコ?」
「メイスンフード&ビバレッジって言ってー、……あー、多分MFBって言ったら分かるかなって」
「MFB? あー、うんうんうんうん、分かった分かった。あの白黒猫マークのアレか」
「ソレですソレです。アレ、父の家系の毛並みなんですよー。ほら、わたしも白黒でしょ?」
「だな。しかし……そっか、MFBのご令嬢ちゃんだったのか」
「意外でした?」
にこっと笑うシュウに、カズは肩をすくめて返す。
「意外っちゃ意外だな。娘一人、お気楽旅にポンと出させるくらいのカネがあるとは、な」
「え?」
「オレの中のイメージじゃ、ちっせえ町工場くらいにしか……」
それを聞いて、シュウは首をかしげた。
「自分で言っちゃうのもなんですけど、結構おっきな会社ですよー? こっちのスーパーにも商品ありましたし」
「そうだな、うん、もう何十年経ってんだって話だよな。……まあいいや、なんか見つかったか?」
そう言ってモニタを指差したカズに、今度はシュウが肩をすくめる。
「まだですねー。確実に何かあるはず! ……って思ってたんですけど」
「つってもまだ4日分しか確認してねーしな。いくらなんでも毎晩操業してるってコトは無いだろーし、1週間くらい流し見してりゃ、どっかで引っかかるだろーぜ」
「だといいんですけど」
と、二人の背後から声がかけられる。
「ご飯でけたでー」
「おう」
カズが動画を止め、席を立とうとしたところで――。
「あのー、カズちゃん?」
シュウがカズの袖を引き、呼び止める。
「ん?」
「さっきの話ぶりだと、もしかして昔、トラス王国にいたコトあるんですか?」
「……ちょっとだけ、な」
「いつの話です?」
「だいぶ前」
「具体的には?」
「聞いてどーすんだよ。大した話じゃねーぜ? ……ほら、ジャンニがメシ作ってくれてんだから、お前さんもとっとと台所行こーぜ」
「あっハイ」
話をにごされてしまい、結局この時は、カズから詳細を聞き出すことができなかった。
「ご飯を作った」とは言うものの、殺伐とした生活環境でひっそり暮らすジャンニとカズの制作物である。
「またジャガイモとキャベツとベーコンですかー?」
「文句あるなら食わなくていいぜ?」
カズにたしなめられたが、シュウは「そうじゃなくてー」と返す。
「レパートリーがなんか、全部その3つだなって。昨日のおひるとおゆはんもソレ炒めたのと煮込んだのとでしたし」
「朝はちゃんと別なのがあんだろーが」
「山盛りシリアルですね。そっちはそっちで毎朝おんなじのばっかりですよね」
「なんなんだよ? やっぱ文句じゃねーか」
「じゃなくて」
シュウはぱたぱたと手を振り、二人の顔を見比べる。
「栄養偏りません? おやつはチョコかドーナツですし、飲み物はコーラかコーヒーかチョコミルクですし。肌荒れしちゃいますよー」
「そんなん言うてもなぁ……」
「ハラ膨れりゃ十分だしなぁ」
そんなことを言って顔を見合わせる二人に、シュウは呆れた声を漏らした。
「しょーがありませんねー。せめて住まわせてもらってる間は、わたしがご飯作りますよ」
「お前さんがぁ?」
カズが不安そうな目を向けてきたが、シュウはにっこり笑って返した。
「だいじょぶです。少なくともお二人よりはレパートリーありますから」
「……お前ってホント、失礼なヤツだな」
むくれるカズに対し、ジャンニは苦い表情を浮かべた。
「反論はでけへんな。言われた通りやもん」
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シュウとカズの共通点?
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「つってもさー、やっぱ底んトコに苦い感じ残んじゃん」
「わたしはソレが好きなんですけどねー。だからドコの喫茶店行っても、カフェラテばっかり頼んじゃって」
二人とも片手にカップを持ちながら、それぞれ別のモニタを眺めつつ、取り留めもない話に興じている。
「オレは苦いの嫌いなんだよなー」
「でもチョコってビター感ありません?」
「なるべく無いヤツにしてる。ほら、コレもミルクチョコだし」
「あー」
どちらのモニタにも、数日前にクレメント製薬のサーバをハッキングして抜き取った、監視カメラの映像が映っている。
「こっちは甘めのチョコ多いですよね。わたしの住んでたトコ、ビターめなヤツばっかりで」
「そうなのか?」
「と言うか、わたしの実家が売ってるのがビター系メインなんですよね」
「お前の?」
ここ数日、揃ってモニタにかじりついている間に、二人はすっかり仲良くなっていた。
「なんてトコ?」
「メイスンフード&ビバレッジって言ってー、……あー、多分MFBって言ったら分かるかなって」
「MFB? あー、うんうんうんうん、分かった分かった。あの白黒猫マークのアレか」
「ソレですソレです。アレ、父の家系の毛並みなんですよー。ほら、わたしも白黒でしょ?」
「だな。しかし……そっか、MFBのご令嬢ちゃんだったのか」
「意外でした?」
にこっと笑うシュウに、カズは肩をすくめて返す。
「意外っちゃ意外だな。娘一人、お気楽旅にポンと出させるくらいのカネがあるとは、な」
「え?」
「オレの中のイメージじゃ、ちっせえ町工場くらいにしか……」
それを聞いて、シュウは首をかしげた。
「自分で言っちゃうのもなんですけど、結構おっきな会社ですよー? こっちのスーパーにも商品ありましたし」
「そうだな、うん、もう何十年経ってんだって話だよな。……まあいいや、なんか見つかったか?」
そう言ってモニタを指差したカズに、今度はシュウが肩をすくめる。
「まだですねー。確実に何かあるはず! ……って思ってたんですけど」
「つってもまだ4日分しか確認してねーしな。いくらなんでも毎晩操業してるってコトは無いだろーし、1週間くらい流し見してりゃ、どっかで引っかかるだろーぜ」
「だといいんですけど」
と、二人の背後から声がかけられる。
「ご飯でけたでー」
「おう」
カズが動画を止め、席を立とうとしたところで――。
「あのー、カズちゃん?」
シュウがカズの袖を引き、呼び止める。
「ん?」
「さっきの話ぶりだと、もしかして昔、トラス王国にいたコトあるんですか?」
「……ちょっとだけ、な」
「いつの話です?」
「だいぶ前」
「具体的には?」
「聞いてどーすんだよ。大した話じゃねーぜ? ……ほら、ジャンニがメシ作ってくれてんだから、お前さんもとっとと台所行こーぜ」
「あっハイ」
話をにごされてしまい、結局この時は、カズから詳細を聞き出すことができなかった。
「ご飯を作った」とは言うものの、殺伐とした生活環境でひっそり暮らすジャンニとカズの制作物である。
「またジャガイモとキャベツとベーコンですかー?」
「文句あるなら食わなくていいぜ?」
カズにたしなめられたが、シュウは「そうじゃなくてー」と返す。
「レパートリーがなんか、全部その3つだなって。昨日のおひるとおゆはんもソレ炒めたのと煮込んだのとでしたし」
「朝はちゃんと別なのがあんだろーが」
「山盛りシリアルですね。そっちはそっちで毎朝おんなじのばっかりですよね」
「なんなんだよ? やっぱ文句じゃねーか」
「じゃなくて」
シュウはぱたぱたと手を振り、二人の顔を見比べる。
「栄養偏りません? おやつはチョコかドーナツですし、飲み物はコーラかコーヒーかチョコミルクですし。肌荒れしちゃいますよー」
「そんなん言うてもなぁ……」
「ハラ膨れりゃ十分だしなぁ」
そんなことを言って顔を見合わせる二人に、シュウは呆れた声を漏らした。
「しょーがありませんねー。せめて住まわせてもらってる間は、わたしがご飯作りますよ」
「お前さんがぁ?」
カズが不安そうな目を向けてきたが、シュウはにっこり笑って返した。
「だいじょぶです。少なくともお二人よりはレパートリーありますから」
「……お前ってホント、失礼なヤツだな」
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