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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 5;緑綺星」
    緑綺星 第1部

    緑綺星・騙義譚 3

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    シュウの話、第24話。
    メイスンリポート#42;正義を騙るあの団体の真実とは!?

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    3.
    「ま、それにだ」
     警部はフライドチキンの箱から手羽を取り、かぶりつく。
    「もぐ……、タチの悪いことに、自警団を正義の味方だと吹聴してるアホ共も少なからずいやがるからな。それを公安局が自ら動いて取り潰したとなりゃ……」
    「抗議するでしょうねー。ネットでも新聞でも何でも、ありとあらゆる通信手段を使いに使って、公安局が悪者だって言いふらすでしょうね。そしたら当然、財団の監査局も動くでしょうね」
     シュウの回答に、警部はフライドチキンを飲み込みながらうなずく。
    「そう言うこった。となりゃ局員は半分以上リストラされるだろう。そしたら誰が代わりに、そこに入ってくると思う?」
    「……ネオクラウンか」
     苦々しい顔をしたカズにもうなずいて返しつつ、警部はフライドチキンの骨でジャンニを指す。
    「そこで俺としちゃ、是非ともここでスチール・フォックスくんに、大活躍してほしいわけだ。公安みたく市国当局の所属じゃないし、市国の世論に左右されることはない。それどころか――ま、これは相当都合いい話ではあるが――正義の味方として評価されてるヒーローが、自警団を悪だと断言して潰してくれりゃ、賛同する奴は大勢いるだろう。
     俺たち公安は邪魔者がいなくなって大仕事に取り掛かれるし、あんたらは正義の味方として、さらに箔が付く。どっちにとっても悪い話じゃない。それにお三方全員、自警団のことは正義の味方だなんて思ってないみたいだしな」
    「どうしてそう思う?」
     尋ねたカズに、警部はくっくっと含み笑いで返す。
    「誰も『やめとけよ』って顔をしてないからさ。大方、自警団がネオクラウンとつながってるだろうってことを勘付いてたか、それとも知ってたか。どっちだ?」
    「知ってた」
     そう答えたジャンニに、警部はガタガタと椅子を引きずって近寄る。
    「何を知ってる?」
    「指揮官役がネオクラウンからカネをもらってた現場を見ました。……それだけですけど」
    「十分だ。そうだろ、メイスンさん?」
     水を向けられ、シュウはにこっと微笑んだ。
    「火種があれば火は点けられますもんね」



     こんにちは、シュウ・メイスンですー。

     今回わたしは、ある男性から衝撃の情報を入手してしまいました! 実は市国で独自に正義の味方を自称している方々、そう、あの自警団のとんでもない正体を知っている、とおっしゃるんです! それでは早速、お名前をうかがってもよろしいでしょうか?
    「……明かせません(プライバシー保護のため、音声を一部編集しています)」
     分かりました、ソレでは仮にAさんとしましょう。それでAさん、あなたは何を目撃したんでしょうか?
    「俺は昔、自警団にいました。銃を渡され、何度も戦闘に駆り出されました。それが紛れもなく、市国の平和と安全につながることだと教えられて。でもある時、……そう、いつかは言えないけど、ある時、俺は指揮官役だった奴が、ネオクラウンからカネを受け取ってた現場を見たんです。多分本名じゃないだろうけど、名前も知ってます。イリアーノと呼ばれてました。俺はショックでした」
     皆さん、お聞きになりましたか? なんと自警団が、あの正義の味方を自ら名乗る団体が、あのマフィア組織と関わりを持っていたと言うんです!
     そしてわたしの独自調査により、さらに重大な証拠を入手してしまいました! ソレがこちらの映像です!
    《……そう、一番いい酒……カネ? あるある……大丈夫……持ってる……》
     ご覧いただいた映像、元々はとあるバーでの様子を撮影したものなんですけども、専門家による音声解析を行った結果、この右側奥にいる虎獣人の男性の方の会話を復元することに成功しました。そしてこの人物こそが、件のイリアーノ氏である可能性が非常に高いのです!
    《……そう……悪いおカネ……へっへ……内緒だぜ、ナイショ》
     皆さん、こんなコトが本当に許されていいコトでしょうか!? 正義の味方だと公言してはばからない団体が、マフィアの手先となっているなんてコトが!
     コレはジャーナリストとして逸脱した発言になるかも知れません。いえ、ジャーナリストだからこそ、正義を愛する人間であるからこそ、声を大にして申し上げます。今現在、自警団に加入している皆様。どうか今一度、自分たちが行っているその行為が、行おうとしているその行為が、本当に正義のためなのか、本当に市民の平和と安全につながることなのか、よくよくお考え下さい。でなければいつか、心の底から後悔する日が来るかも知れないのですから。

     と言うワケで、今回の動画はココまでです。ご視聴、ありがとうございました。




    「この映像、どこで手に入れたん?」
     動画を確認し終えたジャンニに、シュウはにこっと笑みを向けた。
    「加工ですよー。適当にバーの映像と、ジャンニくんが言ってた指揮官の人に近い見た目の人が映ってる映像拾って、ソレっぽく合成して、カズちゃんに声を作ってもらって乗っけましたー」
    「は? ……え、ほなこれ、ニセモンなん!?」
    「いやですねー、ウソなんか一つも付いてないですよー? 専門家ことカズちゃんに作った音声を解析してもらってるワケですし、『可能性が非常に高い』とは言いましたけど、『間違いなく本物です』とは言ってませんしねー」
    「……ずっる! シュウさん、めっちゃめちゃずるいなぁ、もお!」
     ジャンニにけなされたものの、シュウはあっけらかんとしていた。
    「報道番組なんて半分ショーみたいなもんです。ショーなら『多少の』演出はいるでしょ?」
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