「双月千年世界 5;緑綺星」
緑綺星 第1部
緑綺星・騙義譚 5
シュウの話、第26話。
現れたヴィラン。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
5.
「な、なんだ!?」
慌てふためく団長に対し、老人は兎耳に降り掛かったほこりをぴっぴっと払いながら、辺りの気配をうかがっている。
「団長さんよ、そう言や正義の味方を名乗ってるのが、あんた方以外にもいやしたね?」
「え? ……ま、まさか!?」
「間違いないでしょうな。やたらアクション映画みたいな音が、遠くで聞こえてますぜ。ひどく暴れ回ってるようですが、大方ここの壊滅を企んでるんでしょうな」
「な、何故? いや、それよりも、どうしてここが!?」
「なんでもかんでも人に聞きなさんな。ちっとは自分のおつむで考えたらどうです? まあ、ジジイの親切で答えてやりますがね、あんたがさっき言った裏切り者って奴の仕業でしょうな。『自警団が信じられなくなったので天罰を』だの何だのとお願いされたんでしょうぜ。で、どうします?」
そう尋ねられ、団長はきょとんとする。
「な、何がです?」
「察しの悪いお人ですな。ご依頼のお話ですよ。裏切り者探しを優先しましょうか、それともコスプレ野郎をブッ飛ばしてやりましょうか、って言ってんですよ」
「で、できるんですか?」
尋ね返され、老人はチッと舌打ちしたが、すぐに笑顔を作る。
「俺を誰だとお思いで?」
「う、……裏切り者の話は一旦後回しにして下さい。それよりもスチール・フォックスを! 今あんなのに介入されては……!」
「いくらお支払いいただけるんで? 普通なら人一人消すのに50万エルってところですが、緊急事態ですからなあ? 急ぎは割増ってのが世の常ですぜ」
「カネならいくらでも出してくれます。51万、いや、53万でどうです?」
「いくらでもって割にゃ、ケチ臭い値切り方をなさるお方ですな。……まあいいでしょう、54万だ。そんじゃま、ちょっと行ってひねり潰してやりまさあ」
そう答えた次の瞬間――老人はその場から、すっと姿を消した。
カズとシュウの無線支援を受けつつ、ジャンニは自警団のアジトを引っかき回していた。
《次は駐車場に行って下さい。みんなが逃げ出そうとしてる方向にあるはずですー》
《後部座席やらトランクに銃火器積んでるだろうからな、クルマ攻撃すんなら後ろだぞ》
「了解!」
二人の指示を受け、ジャンニはパワードスーツに仕込まれた火器を駆使して破壊工作を進める。
「クルマ全部吹っ飛ばしたったで! 自警団の奴ら、もうほとんど棒立ちや」
《戦意喪失したっぽいですね。っとカズちゃん、コレで電源・通信設備と武器庫と駐車場と、一通り周りましたね》
《ああ》
《もう軍事拠点としての機能は喪失したと見ていいでしょ。少なくとも明日のゲリラ活動は不可能なはずです》
《だな。そんじゃボチボチ帰投だ》
「へーい」
無論、ジャンニたちの目的はあくまで「自警団の壊滅」であるし、これまでチンピラにケガを負わせたことはあっても、殺害までしたことは無い。今回もこの時点まで誰一人殺さずに済んだため、ジャンニはほっと安堵しつつ、上空へと飛び出しかけたが――。
「おいおいお兄ちゃんよ、人んちめっちゃめちゃにしといてハイサヨナラはないだろ?」
上空で何者かに飛びつかれ、ジャンニは面食らった。
「なっ……」
「落とし前付けてけや、なあ?」
次の瞬間、ジャンニの視界が大きくぶれる。
「うわ……っ!?」
地面に落っこちるが、ジャンニの体に衝撃らしい衝撃はない。それでもまったく相手の挙動が捉えきれなかったこと、そして簡単に攻撃を食らったことに、ジャンニも、そしてカズも、驚きを隠せないでいた。
《な、なんだソイツは!? おい、ジャンニ! 警戒しろ! ソイツはなんかやべえぞ!》
「わ、分かっとる」
ジャンニはばっと身を翻し、立ち上がる。直後、一瞬前まで自分が転がっていた場所からどすん、と重い音が響く。
「おっ、案外素早いじゃねえか。折角そのヘルメットかち割って、中身拝んでやろうと思ったのによお?」
そこに着地した老人を見て、ジャンニはまたも当惑する。
《じ、……じいさん? え、さっきのやつもあんたが?》
「おうよ。ビビったかい?」
《わりと……な。……えっと、……俺を倒そうって言うのか?》
「ん? ……おいおいおいおい、何だよお前さん」
次の瞬間――。
「まさか自分が無敵のヒーローだなんて思ってんじゃあねえだろうな、ええ、おい?」
ジャンニは5メートルほど後方に弾き飛ばされ、ついさっき自分が破壊した車輌に叩き付けられていた。
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「な、なんだ!?」
慌てふためく団長に対し、老人は兎耳に降り掛かったほこりをぴっぴっと払いながら、辺りの気配をうかがっている。
「団長さんよ、そう言や正義の味方を名乗ってるのが、あんた方以外にもいやしたね?」
「え? ……ま、まさか!?」
「間違いないでしょうな。やたらアクション映画みたいな音が、遠くで聞こえてますぜ。ひどく暴れ回ってるようですが、大方ここの壊滅を企んでるんでしょうな」
「な、何故? いや、それよりも、どうしてここが!?」
「なんでもかんでも人に聞きなさんな。ちっとは自分のおつむで考えたらどうです? まあ、ジジイの親切で答えてやりますがね、あんたがさっき言った裏切り者って奴の仕業でしょうな。『自警団が信じられなくなったので天罰を』だの何だのとお願いされたんでしょうぜ。で、どうします?」
そう尋ねられ、団長はきょとんとする。
「な、何がです?」
「察しの悪いお人ですな。ご依頼のお話ですよ。裏切り者探しを優先しましょうか、それともコスプレ野郎をブッ飛ばしてやりましょうか、って言ってんですよ」
「で、できるんですか?」
尋ね返され、老人はチッと舌打ちしたが、すぐに笑顔を作る。
「俺を誰だとお思いで?」
「う、……裏切り者の話は一旦後回しにして下さい。それよりもスチール・フォックスを! 今あんなのに介入されては……!」
「いくらお支払いいただけるんで? 普通なら人一人消すのに50万エルってところですが、緊急事態ですからなあ? 急ぎは割増ってのが世の常ですぜ」
「カネならいくらでも出してくれます。51万、いや、53万でどうです?」
「いくらでもって割にゃ、ケチ臭い値切り方をなさるお方ですな。……まあいいでしょう、54万だ。そんじゃま、ちょっと行ってひねり潰してやりまさあ」
そう答えた次の瞬間――老人はその場から、すっと姿を消した。
カズとシュウの無線支援を受けつつ、ジャンニは自警団のアジトを引っかき回していた。
《次は駐車場に行って下さい。みんなが逃げ出そうとしてる方向にあるはずですー》
《後部座席やらトランクに銃火器積んでるだろうからな、クルマ攻撃すんなら後ろだぞ》
「了解!」
二人の指示を受け、ジャンニはパワードスーツに仕込まれた火器を駆使して破壊工作を進める。
「クルマ全部吹っ飛ばしたったで! 自警団の奴ら、もうほとんど棒立ちや」
《戦意喪失したっぽいですね。っとカズちゃん、コレで電源・通信設備と武器庫と駐車場と、一通り周りましたね》
《ああ》
《もう軍事拠点としての機能は喪失したと見ていいでしょ。少なくとも明日のゲリラ活動は不可能なはずです》
《だな。そんじゃボチボチ帰投だ》
「へーい」
無論、ジャンニたちの目的はあくまで「自警団の壊滅」であるし、これまでチンピラにケガを負わせたことはあっても、殺害までしたことは無い。今回もこの時点まで誰一人殺さずに済んだため、ジャンニはほっと安堵しつつ、上空へと飛び出しかけたが――。
「おいおいお兄ちゃんよ、人んちめっちゃめちゃにしといてハイサヨナラはないだろ?」
上空で何者かに飛びつかれ、ジャンニは面食らった。
「なっ……」
「落とし前付けてけや、なあ?」
次の瞬間、ジャンニの視界が大きくぶれる。
「うわ……っ!?」
地面に落っこちるが、ジャンニの体に衝撃らしい衝撃はない。それでもまったく相手の挙動が捉えきれなかったこと、そして簡単に攻撃を食らったことに、ジャンニも、そしてカズも、驚きを隠せないでいた。
《な、なんだソイツは!? おい、ジャンニ! 警戒しろ! ソイツはなんかやべえぞ!》
「わ、分かっとる」
ジャンニはばっと身を翻し、立ち上がる。直後、一瞬前まで自分が転がっていた場所からどすん、と重い音が響く。
「おっ、案外素早いじゃねえか。折角そのヘルメットかち割って、中身拝んでやろうと思ったのによお?」
そこに着地した老人を見て、ジャンニはまたも当惑する。
《じ、……じいさん? え、さっきのやつもあんたが?》
「おうよ。ビビったかい?」
《わりと……な。……えっと、……俺を倒そうって言うのか?》
「ん? ……おいおいおいおい、何だよお前さん」
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