fc2ブログ

黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 5;緑綺星」
    緑綺星 第1部

    緑綺星・白闇譚 4

     ←緑綺星・白闇譚 3 →緑綺星・白闇譚 5
    シュウの話、第34話。
    報復。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    4.
    「おっ?」
     店主が店に備え付けていたテレビを見上げ、驚いた声を上げる。
    「爆発騒ぎだってさ。ガスか何かかな」
    「……!」
     シュウとジャンニは同時に振り返り、テレビ画面を確認した。
    「……シュウさん」
    「みたい、ですよ」
     画面にはジャンニのアジトが――いや、正確にはアジト「だった」ものが映されていた。
    「燃えとる……」
    「……出ないです、カズちゃん」
     スマホは発信中の画面のまま、変わることは無かった。

     いつの間にかアルトは姿を消していたが、二人はそれに構っているどころではなく、大急ぎでアジトへ引き返した。
    「……ひでえ」
     アジトがあった場所は、まるで隕石か何かが落ちたかのように深くえぐれており、周囲の家も含め、何も残っていなかった。その惨状を目にし、ジャンニは叫ぶ。
    「一体、……一体これ、何があったんや!?」
    「ミサイルの可能性が高いですね」
     淡々と答えるシュウも、腕が震えている。
    「でも、いくら騒動の渦中とは言え、市国の入出国管理局が迎撃できなかったなんて、おかしいです。となれば恐らく、市国内で放たれたモノか、あるいは、相当軍事技術の発達したところから発射されたモノでしょう。だから……調べれば……何か……」
     やがてシュウは言葉に詰まり、その場に座り込む。
    「シュウさん!」
     ジャンニはどうしていいか分からず、立ち尽くすばかりだった。

     と――。
    《悪い》
     二人の背後から、声がかけられる。
    「!?」
     振り向くと、そこにはスチール・フォックスがいた。いや――。
    《防ごうとしたんだが、ものすごい量のミサイル撃ち込んできやがってな。結局、パソコンとスマホ、燃えちまった。……あと、家もだな》
    「カズちゃん!?」
     ヘルメットが外れ、カズの顔がのぞく。
    「スーツとバックアップデータ持ち出すので精一杯だった。……じきに公安やら何やらが来る。逃げるぞ」
    「無理ですよ」
     シュウが立ち上がり、いつも通りの口調で答える。
    「ミサイルの運用には人工衛星が不可欠です。つまりわたしたちは今、衛星に監視されてるはずです。衛星の監視をすり抜けて逃亡するのは不可能ですよ」
    「関係ねーな」
     そう言って、カズは呪文をつぶやいた。
    「『テレポート』」
     次の瞬間、ジャンニたちはどこかの丘の上に立っていた。
    「……な……え、何これ?」
     ジャンニはきょろきょろと辺りを見回すが、自分がまったく知らない場所であることが分かっただけだった。
    「カズちゃん」
     と、シュウが神妙な面持ちでカズを見つめる。
    「あなた、何者なんですか? ミサイルから逃げるなんて人間業じゃないですし、『テレポート』の運用は大規模施設が必要なはずです。そもそもそのパワードスーツだって、ふつーの人が一人で造れるものじゃ、絶対ありません」
    「その質問は後で答えてやんよ。ソレより今は状況の整理だ」
     スーツを脱ぎ、カズはその場に座り込む。
    「自分で着てみたのはコレが初だが、色々改良の余地があるな。一番の問題は緊急時に持ち出しにくいってトコだ、な」
    「言うてる場合かいな。……カズちゃん、実はな」
     ジャンニとシュウは、アルトの話をカズに伝えた。
    「白猫党だと?」
    「確証はありませんが、でも、状況証拠はコレでもう一つ増えましたね。ミサイルは1発1~2億エルもする、とっても高価な兵器です。ソレを何十発も発射するなんてコト、いち犯罪組織がやるコトじゃないです」
    「そんなカネ使うんやったらビルか豪邸建てるやろしな」
    「物理的にもおかしいですしね。ミサイル数十発分を格納する施設も必要ですが、そんなスペースを確保するのは軍事組織以外にありえないです」
     と、カズが手を挙げる。
    「話は一旦、ソコまでだ。迎えが来る」
    「迎え?」
     もう一度、ジャンニは辺りを見回す。すると丘のふもと側から、赤い髪のエルフがとぼとぼ歩いてきているのが見えた。
    「あなたたちなのっ? いきなり『テレポート』でここに押しかけて来たのってっ? ここは永世中立国だってこと、知っててやってるのっ?」
    「よお、鈴林。久しぶりだな」
     カズが立ち上がり、エルフに手を振るが、エルフはきょとんとしている。
    「……誰っ?」
    「ご挨拶だな。『姐さん』の顔を忘れたのかよ?」
    「姐さんっ? ……あれっ? もしかして天狐ちゃんじゃない方の姐さんっ?」
    「『じゃない方』って言うな。こっちが大本なんだからよ。アイツ元気か?」
    「元気してるよっ。でも姐さん、すっごく久しぶりだねっ? もう80年くらい姿を見てなかったけどっ」
    「80年!?」
     やり取りを聞いていたジャンニとシュウは、顔を見合わせる。
    「え、カズちゃんホンマに何歳なん?」
    「言っただろ。オレも分かんねーって。……あ、紹介するわ。そっちの赤金髪がジャンニ。ピンク髪がシュウ。とりあえずメシ頼むわ、鈴林」
    「いきなりやって来てせびらないでよ、もおっ! ホントに変わってないねっ」
     鈴林と呼ばれたエルフは、ぷくっとほおをふくらませた。
    関連記事




    ブログランキング・にほんブログ村へ





    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 5;緑綺星
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    総もくじ 3kaku_s_L.png イラスト練習/実践
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 5;緑綺星
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    もくじ  3kaku_s_L.png DETECTIVE WESTERN
    もくじ  3kaku_s_L.png 短編・掌編
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
    もくじ  3kaku_s_L.png 携帯待受
    もくじ  3kaku_s_L.png 今日の旅岡さん
    総もくじ  3kaku_s_L.png イラスト練習/実践
    • 【緑綺星・白闇譚 3】へ
    • 【緑綺星・白闇譚 5】へ

    ~ Comment ~

    管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    トラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【緑綺星・白闇譚 3】へ
    • 【緑綺星・白闇譚 5】へ