「双月千年世界 5;緑綺星」
緑綺星 第1部
緑綺星・白闇譚 5
シュウの話、第35話。
双子よりもっとちかしい姉妹。
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5.
「よお、天狐。元気してたか?」
「あぁん?」
対面するなり、その金毛九尾の狐獣人は口をへの字に曲げた。
「誰かと思ったら一聖かよ。この80年音沙汰ナシかと思ったら、いきなりだな」
「ま、色々あってな」
「単刀直入に聞くけどよ」
天狐はタブレット状の金属板を、一聖に向ける。
「ココ最近、お前『目録』に色々書き込んでただろ? なんだよ、スチール・フォックスMk4って」
「Mk4!? え、カズちゃん、あれ一機だけやないのん?」
口を挟んだジャンニを、天狐がにらみつける。
「うるせえ黙ってろ。……待て」
天狐は椅子からぴょんと降り、ジャンニに詰め寄った。
「『アレ一機だけ』ってなんだ? まさかマジであんのか? この妄想てんこ盛りのびっくりおバカ兵器が」
「あれ……やけど」
そう返し、ジャンニは鈴林が背負ってくれていたパワードスーツを指差す。それを見た瞬間、天狐は苦々しい表情を浮かべた。
「一聖よお……。お前ホントな、そーゆートコ、な?」
「むしろなんでお前がソコ似てねーのか不思議だけどな、オレは」
「こっちは現実主義なんだよ。じゃなきゃ200年もゼミ続けられるかっての」
「妄想は大事だぜ? 創造につながるから、な」
「言ってろ。……で? 80年ぶりにオレの前に姿見せたのは、友達とトンデモメカの紹介しに来たってだけじゃねーんだろ?」
「おう」
一聖は天狐が持っていたタブレットを奪い、市国の地図を表示させる。
「10分前、オレは市国でミサイル攻撃を受けた。市国のミサイル防衛措置(カウンターメジャー)が働いてたってんなら、そんな目に遭うはずがねー。となりゃ考えられる可能性は3つだ。1つ、市国内で発射されたモノか、2つ、防衛措置が捉えられないくらい最新鋭のモノか、あるいは3つ、『テレポート』でオレの頭上に直に送られてきたモノか、だ」
「ソレを調べろって?」
天狐は傍らに置いてあったキーボードを叩く。すると机の天板からにゅっとモニタが3枚現れ、パソコンが起動する。その様子を見ていた一聖は、先ほどの天狐と同様、口をへの字に曲げた。
「やーっぱお前もそーゆーギミック作ってんじゃねーか!」
「そりゃ作るだろーがよ! ロマンだろーが!」
「じゃなんでスーツにはケチ付けんだよ!?」
「言っただろーが、実用主義なんだよオレは! そんなチンケなSF映画に出てきそうなもん、誰が造るかってんだ!」
「チンケだあ!? そーゆーコトはな、実際に運用してるトコ見てから……」
「姐さんたちっ! お客さんがビックリしてるでしょっ!? ケンカはあとでっ!」
鈴林が割って入り、二人を止める。
「そんなにイライラしてるってことは、二人ともお腹ペコペコなんでしょっ!?」
「ああ」「減ってる」
「何食べたいのっ?」
「ショコラマフィン」「ショコラツイスト」
「おやつじゃないのっ! ごーはーんっ!」
「なんでもいいよ」「なんか適当に……」
「なんでもとかてきとーなんてごはんはあーりーまーせんっ! じゃあお客さんっ、何かご注文はあるっ?」
くるん、と鈴林に振り向かれ、ジャンニは戸惑う。
「え、えー、あーと」
一方のシュウは、いつも通りのマイペースさを見せた。
「ソレじゃお魚系食べたいですー。あと、あればキノコも」
「いいよっ。じゃ、スーツここに置くからねっ。できたら呼ぶからっ」
鈴林が退室したところで、一聖が机に座る。
「使うぜ」
「ああ。だがどうやって調べるんだ?」
「市国の入出国管理局にハッキングする」
「お前、そんなのできたのか? そーゆーのは虹龍の兄さんの十八番だろ」
「こないだ覚えたんだ。……作動はしてたみてーだな。ミサイル着弾のちょっと前に検知してる。もちろん、迎撃もしたらしい。だが完全には防ぎ切れなかったみてーだな」
「ドコから撃たれたものなんでしょ?」
シュウの質問に、一聖はモニタをとん、とんと叩く。
「検知したのは市国南の沖合い、680キロ地点だそうだ。どうやら潜水艦から発射されたものらしい。管理局は大慌てで沖へ向かって捜索と呼びかけを行ってる最中だが、まあ、空振りに終わるだろうな。何の宣言もナシにいきなりミサイル撃ち込んでくるヤツらが、律儀に応答してくれるとは思えねーし」
「もしドコの国か分かったら、国際問題ですもんね」
「つっても恐らく、撃ったのは白猫党のヤツらだろう。そのアルトだかテノールだかってじいさんの話がマジなら、な」
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「よお、天狐。元気してたか?」
「あぁん?」
対面するなり、その金毛九尾の狐獣人は口をへの字に曲げた。
「誰かと思ったら一聖かよ。この80年音沙汰ナシかと思ったら、いきなりだな」
「ま、色々あってな」
「単刀直入に聞くけどよ」
天狐はタブレット状の金属板を、一聖に向ける。
「ココ最近、お前『目録』に色々書き込んでただろ? なんだよ、スチール・フォックスMk4って」
「Mk4!? え、カズちゃん、あれ一機だけやないのん?」
口を挟んだジャンニを、天狐がにらみつける。
「うるせえ黙ってろ。……待て」
天狐は椅子からぴょんと降り、ジャンニに詰め寄った。
「『アレ一機だけ』ってなんだ? まさかマジであんのか? この妄想てんこ盛りのびっくりおバカ兵器が」
「あれ……やけど」
そう返し、ジャンニは鈴林が背負ってくれていたパワードスーツを指差す。それを見た瞬間、天狐は苦々しい表情を浮かべた。
「一聖よお……。お前ホントな、そーゆートコ、な?」
「むしろなんでお前がソコ似てねーのか不思議だけどな、オレは」
「こっちは現実主義なんだよ。じゃなきゃ200年もゼミ続けられるかっての」
「妄想は大事だぜ? 創造につながるから、な」
「言ってろ。……で? 80年ぶりにオレの前に姿見せたのは、友達とトンデモメカの紹介しに来たってだけじゃねーんだろ?」
「おう」
一聖は天狐が持っていたタブレットを奪い、市国の地図を表示させる。
「10分前、オレは市国でミサイル攻撃を受けた。市国のミサイル防衛措置(カウンターメジャー)が働いてたってんなら、そんな目に遭うはずがねー。となりゃ考えられる可能性は3つだ。1つ、市国内で発射されたモノか、2つ、防衛措置が捉えられないくらい最新鋭のモノか、あるいは3つ、『テレポート』でオレの頭上に直に送られてきたモノか、だ」
「ソレを調べろって?」
天狐は傍らに置いてあったキーボードを叩く。すると机の天板からにゅっとモニタが3枚現れ、パソコンが起動する。その様子を見ていた一聖は、先ほどの天狐と同様、口をへの字に曲げた。
「やーっぱお前もそーゆーギミック作ってんじゃねーか!」
「そりゃ作るだろーがよ! ロマンだろーが!」
「じゃなんでスーツにはケチ付けんだよ!?」
「言っただろーが、実用主義なんだよオレは! そんなチンケなSF映画に出てきそうなもん、誰が造るかってんだ!」
「チンケだあ!? そーゆーコトはな、実際に運用してるトコ見てから……」
「姐さんたちっ! お客さんがビックリしてるでしょっ!? ケンカはあとでっ!」
鈴林が割って入り、二人を止める。
「そんなにイライラしてるってことは、二人ともお腹ペコペコなんでしょっ!?」
「ああ」「減ってる」
「何食べたいのっ?」
「ショコラマフィン」「ショコラツイスト」
「おやつじゃないのっ! ごーはーんっ!」
「なんでもいいよ」「なんか適当に……」
「なんでもとかてきとーなんてごはんはあーりーまーせんっ! じゃあお客さんっ、何かご注文はあるっ?」
くるん、と鈴林に振り向かれ、ジャンニは戸惑う。
「え、えー、あーと」
一方のシュウは、いつも通りのマイペースさを見せた。
「ソレじゃお魚系食べたいですー。あと、あればキノコも」
「いいよっ。じゃ、スーツここに置くからねっ。できたら呼ぶからっ」
鈴林が退室したところで、一聖が机に座る。
「使うぜ」
「ああ。だがどうやって調べるんだ?」
「市国の入出国管理局にハッキングする」
「お前、そんなのできたのか? そーゆーのは虹龍の兄さんの十八番だろ」
「こないだ覚えたんだ。……作動はしてたみてーだな。ミサイル着弾のちょっと前に検知してる。もちろん、迎撃もしたらしい。だが完全には防ぎ切れなかったみてーだな」
「ドコから撃たれたものなんでしょ?」
シュウの質問に、一聖はモニタをとん、とんと叩く。
「検知したのは市国南の沖合い、680キロ地点だそうだ。どうやら潜水艦から発射されたものらしい。管理局は大慌てで沖へ向かって捜索と呼びかけを行ってる最中だが、まあ、空振りに終わるだろうな。何の宣言もナシにいきなりミサイル撃ち込んでくるヤツらが、律儀に応答してくれるとは思えねーし」
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