「双月千年世界 5;緑綺星」
緑綺星 第1部
緑綺星・白闇譚 6
シュウの話、第36話。
これまでか、これからか。
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6.
鈴林が作ってくれた鱒とキノコのリゾットを食べている間に、テレビでは市国のニュースが報じられていた。
《……本日午後2時半頃、市国にミサイルと思われる飛翔体が多数飛来・着弾し、市街地では大規模な被害が発生した模様です。市国入出国管理局からは『市国の安全が大きく脅かされたこと、そして数多くの人命が失われたことに、遺憾の意を表する。今後さらなる攻撃に備え、防衛体制を強化する』との声明が出されています。次のニュースです……》
「死傷者28名、か」
「ひどいですね、本当に」
ジャンニとシュウが心を痛めていた一方で、一聖と天狐は意見交換していた。
「しかし報復っつったって、なんでミサイルなんだ? 居場所を特定できてたんなら、もっと範囲を狭めて攻撃すりゃ良かっただろうに。大惨事じゃねーか」
「見せしめと警告って意味もあるんじゃねーか? 今回の騒動、金火狐総帥も一枚噛んでるって話だろ? 『ウチのミサイルはお前らの防衛力じゃ防げない。手を切ろうとしたら、今度は屋敷に撃ち込むぞ』って脅しなんじゃねーかな」
「なるほど、確かに最近は手を切ろうって動きを見せてたから、な。軍事物資の製造拠点を引っかき回したスチール・フォックスへの制裁と、金火狐への牽制か。ありうるな」
「となりゃ明日か明後日か、総帥から何かしらの声明があるだろう。その出方次第で、市国と央中の今後が決まるとも言えるだろう、な」
「もー、姐さんたちっ! ご飯食べながら議論しないでよっ。ご飯くずぽろぽろ落ちてるしっ。床、汚れるじゃないのっ」
鈴林に怒られ、二人は揃って肩をすくめる。
「へーへー」「分かった分かった」
「そー言えばお二人って」
シュウがテレビから一聖たちに向き直り、質問する。
「もしかしてご姉妹なんですかー? 種族は違うみたいですけど、お顔も話し方もそっくりですし」
「ああ、まあ、そんな感じだな」
「オレが妹。一聖が姉ってコトになってる」
答えた二人に、シュウはさらに質問を重ねる。
「テンコちゃんってもしかして、『天狐ゼミ』のテンコ・カツミちゃんですか?」
「ああ」
「と言うコトはカズちゃんのお父さんも……?」
「そうだよ。あの克大火だ」
「わ~お」
シュウは目を輝かせながら、一聖の側ににじり寄る。
「なんで教えてくれなかったんですかー?」
「教えたらお前さんみたいなのがわんさか湧くからだよ」
一聖はシュウをにらみつけ、フンと鼻を鳴らす。
「次は何を聞くつもりだ? 最新技術がガラクタになる秘術か? 誰も知らない世界の真実か? ソレとも親父の居場所か? オレの正体知ったヤツは、何でそんな話ばっかり聞くんだ!? ケッ、誰がそんな話してやるかってんだ!」
「ええ、わたしもそんな話、友達から聞く気は全くありませんねー」
シュウも一聖に顔を近付け、にっこり笑う。
「ココでも市国や白猫党のお話するってコトは、まだあの件から手を引くつもりが無いってコトですよね? ソレにスチール・フォックスMk4でしたっけ? そんなの考えてるってコトは、もっとすごいスーツ造る計画が絶賛進行中ってコトですよね?
わたしはカズちゃんが『コレまで』何をしてたかなんてお話には興味無いです。『コレから』何をするかを、是非お聞きしたいんです」
「じゃあさっきのは何だよ? お前さんは何故、『なんで教えてくれなかった』って言ったんだ?」
「お友達の話なら、色々聞いてみたいじゃないですか。何が好きなのとか、兄弟はいるのかとか、趣味は何なのとか。お父さんが誰とかは実際、どうでもいいですけどね」
「……」
そのまま二人はじっと見つめ合っていたが――やがて一聖の方が目をそらした。
「……お前、恥ずいよ。面と向かって友達だの何だのって言うなよ」
「じゃ、お友達じゃないんですか?」
「うっせ」
一聖は顔を真っ赤にしつつ、冷めかけたリゾットを口に運んだ。
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これまでか、これからか。
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鈴林が作ってくれた鱒とキノコのリゾットを食べている間に、テレビでは市国のニュースが報じられていた。
《……本日午後2時半頃、市国にミサイルと思われる飛翔体が多数飛来・着弾し、市街地では大規模な被害が発生した模様です。市国入出国管理局からは『市国の安全が大きく脅かされたこと、そして数多くの人命が失われたことに、遺憾の意を表する。今後さらなる攻撃に備え、防衛体制を強化する』との声明が出されています。次のニュースです……》
「死傷者28名、か」
「ひどいですね、本当に」
ジャンニとシュウが心を痛めていた一方で、一聖と天狐は意見交換していた。
「しかし報復っつったって、なんでミサイルなんだ? 居場所を特定できてたんなら、もっと範囲を狭めて攻撃すりゃ良かっただろうに。大惨事じゃねーか」
「見せしめと警告って意味もあるんじゃねーか? 今回の騒動、金火狐総帥も一枚噛んでるって話だろ? 『ウチのミサイルはお前らの防衛力じゃ防げない。手を切ろうとしたら、今度は屋敷に撃ち込むぞ』って脅しなんじゃねーかな」
「なるほど、確かに最近は手を切ろうって動きを見せてたから、な。軍事物資の製造拠点を引っかき回したスチール・フォックスへの制裁と、金火狐への牽制か。ありうるな」
「となりゃ明日か明後日か、総帥から何かしらの声明があるだろう。その出方次第で、市国と央中の今後が決まるとも言えるだろう、な」
「もー、姐さんたちっ! ご飯食べながら議論しないでよっ。ご飯くずぽろぽろ落ちてるしっ。床、汚れるじゃないのっ」
鈴林に怒られ、二人は揃って肩をすくめる。
「へーへー」「分かった分かった」
「そー言えばお二人って」
シュウがテレビから一聖たちに向き直り、質問する。
「もしかしてご姉妹なんですかー? 種族は違うみたいですけど、お顔も話し方もそっくりですし」
「ああ、まあ、そんな感じだな」
「オレが妹。一聖が姉ってコトになってる」
答えた二人に、シュウはさらに質問を重ねる。
「テンコちゃんってもしかして、『天狐ゼミ』のテンコ・カツミちゃんですか?」
「ああ」
「と言うコトはカズちゃんのお父さんも……?」
「そうだよ。あの克大火だ」
「わ~お」
シュウは目を輝かせながら、一聖の側ににじり寄る。
「なんで教えてくれなかったんですかー?」
「教えたらお前さんみたいなのがわんさか湧くからだよ」
一聖はシュウをにらみつけ、フンと鼻を鳴らす。
「次は何を聞くつもりだ? 最新技術がガラクタになる秘術か? 誰も知らない世界の真実か? ソレとも親父の居場所か? オレの正体知ったヤツは、何でそんな話ばっかり聞くんだ!? ケッ、誰がそんな話してやるかってんだ!」
「ええ、わたしもそんな話、友達から聞く気は全くありませんねー」
シュウも一聖に顔を近付け、にっこり笑う。
「ココでも市国や白猫党のお話するってコトは、まだあの件から手を引くつもりが無いってコトですよね? ソレにスチール・フォックスMk4でしたっけ? そんなの考えてるってコトは、もっとすごいスーツ造る計画が絶賛進行中ってコトですよね?
わたしはカズちゃんが『コレまで』何をしてたかなんてお話には興味無いです。『コレから』何をするかを、是非お聞きしたいんです」
「じゃあさっきのは何だよ? お前さんは何故、『なんで教えてくれなかった』って言ったんだ?」
「お友達の話なら、色々聞いてみたいじゃないですか。何が好きなのとか、兄弟はいるのかとか、趣味は何なのとか。お父さんが誰とかは実際、どうでもいいですけどね」
「……」
そのまま二人はじっと見つめ合っていたが――やがて一聖の方が目をそらした。
「……お前、恥ずいよ。面と向かって友達だの何だのって言うなよ」
「じゃ、お友達じゃないんですか?」
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一聖は顔を真っ赤にしつつ、冷めかけたリゾットを口に運んだ。
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