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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 5;緑綺星」
    緑綺星 第1部

    緑綺星・白闇譚 7

     ←緑綺星・白闇譚 6 →緑綺星 目次(第1部;スチール・フォックス編)
    シュウの話、第37話。
    スチール・フォックス;その正義のために。

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    7.
    「で、これからどないしよ?」
     早めの夕食を終えたところで、ジャンニがそんな質問を投げかけた。
    「オレの意見は一つだ」
     一聖が答える。
    「オレにケンカ売ったヤツは、ただじゃ済まさねー。今回の件の裏にいるヤツが白猫党であれ、他の誰であれ、ソイツにはきっちり仕返ししてやらねえと気が済まねー」
    「お前ソレで昔、痛い目見ただろ?」
     その回答に対し、天狐が呆れた目を向けた。
    「80年前のコト、忘れたってんじゃねーだろーな?」
    「覚えてるさ。反省もしてる。だからひっそり暮らしてた。下手なコトして迷惑かけねーよーに、な。だが向こうからケンカ売ってきたってんなら話は別だ。やられたらやり返す。ソレが克一門の流儀だろ?」
    「……しゃーねーなぁ」
     天狐はフン、と鼻を鳴らし、一聖の頭をぽんぽんと撫でた。
    「お前はオレだ。じゃあお前に売られたケンカは、オレに売られたも同然ってワケだ。一緒にやり返してやんよ」
    「ありがとな」
    「カズちゃんがそう言うてくれて、ほっとしとる。俺もこのまま市国に戻ることは、考えてへんかったしな」
     そう言って手を握ろうとしたジャンニの腕を振り払い、一聖は彼をにらみつけた。
    「何かしようってのか? 戻れよ、市国に」
    「戻らへん」
    「戻れって。お前さんの役目は、市国の正義の味方だろーが」
    「でもアルトじいさんの話やと、白猫党が黒幕なんやろ? このまま市国におっても、同じことの繰り返しになるだけやんか。ほんならもっと直に叩かへんかったら、何も変わらへんやん」
    「分かってねーな」
     一聖はジャンニの手を握り、強い口調でたしなめようとする。
    「ココから先はもっとヤバくて危険だ。市国のチンピラ相手なんかとはワケが違うんだぜ? お前さんが進むべき道じゃねえんだよ」
    「ほな他に誰が、あのスーツ着るんや?」
     ジャンニの指差した先にあるパワードスーツをチラ、と見て、一聖は苦い顔をする。
    「オレが着りゃいいだろ」
    「サポート役がいないと運用できないですよね、アレ」
     シュウに突っ込まれ、一聖は天狐の方を見る。
    「じゃあ天狐」
    「絶対ヤだね」
    「……鈴林」
    「超やだっ」
    「しゅ、……いや、無理か」
    「つまり消去法で俺しかおらへんやん。それともカズちゃんが、自分で白猫党んとこまで行くか?」
    「ソレも絶対ダメだ」
     天狐が首を横に振り、ジャンニの味方に付く。
    「コイツは昔、自分勝手に行動したせいで戦争引き起こして、国を真っ二つにした前科がある。コイツを白猫党本部なんかに行かせたら、世界崩壊の危機だぜ」
    「ソコまで言うかよ……」
    「ソコまでのコトだろーが。言っとくがオレと鈴林も現地に出張ったりなんかしねーぜ。ゼミのコトもあるし、オレみたいな大物が出張っちまったら、話が世界大戦レベルまでデカくなっちまうだろう。被害が大きくなるだけで、確実にろくなコトにゃならねーよ。
     ってワケで、その話に関しての結論は出たな。ジャンニだっけ、しばらくオレたちと一緒に行動してもらうコトになるぜ。下手すりゃ年単位でだが」
    「構わへん。どうせ親兄弟もおらん、独り身やしな」
    「決まりだな。じゃ、まず何をするか、だ」
     ふてくされる一聖を尻目に、天狐が話を進める。
    「今現在、白猫党には市国での事件関与の嫌いがある程度で、実際何をしてたのか、何をするつもりなのかは、さっぱり不明だ。ヤツらの意図を探るトコから始めなきゃならねー」
     これを受けて、シュウが答える。
    「白猫党は昨年、戦争終結の宣言を出して以降、対外的には主だった活動をしていません。近隣国への友好・不可侵条約さえ結んでいない状態です。そのせいで近隣国は、いつ侵略されるかもってヒヤヒヤしてるのが現状ですね」
    「内部事情は?」
    「不明ですね。終戦以降、報道・通信・交通、国外からの支援、その他あらゆるものをシャットアウトしてしまってます。鎖国状態です」
    「じゃあ何一つ分からない、……か」
    「ただ、そう言う機密保持行動を執ってるってコトは、対外的に知られたくない行動を準備中であるとも取れます。単純に考えればソレは多分……」
    「侵略準備、ってコトか」
    「そうかも知れません。もしかしたらそう遠くない内、近隣国に、……あ、そうだ」
     と、シュウがポン、と両手を合わせる。
    「対外行動を執ってないって言っちゃいましたが、厳密には1つだけあります。終戦直後、白猫党党首が隣国の、リモード共和国の大統領と会談を行ってます」
    「リモード共和国?」
     と、ここまでずっとふてくされたままだった一聖が顔を挙げた。
    「終戦直後っつったな? ソレってあのクーデターの直後でもあるってコトだよな。んじゃ、エヴァ・アドラーの失踪とも何か関係あんのか?」
    「……!」
     問われたシュウは、目を丸くする。
    「ないとは思いますが、……あるかもですね」
    「前に聞いた時、お前さんは隠す内容は無かったっつってたが、本当か?」
    「……うーん」
     シュウは困った顔をしたが、やがて意を決したらしく、一聖に向き直った。
    「バックアップデータ、無事って言ってましたよね? あの中に、当時の取材資料も入ってます」
    「あのパスワードかかってたヤツか、……あ、いや」
    「見ようとしたんですか? って言うかわたしの個人フォルダ見たんですね?」
     むくれるシュウに、一聖は首をぶんぶんと振る。
    「いや、見てねー見てねー。流石に悪いし。……見ようとしただけ、だぜ」
    「もー……。じゃ、きちんとお話したげます。隠しといた方がいいかなーって理由も含めて」

    緑綺星・深闇譚 終

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    これにて「琥珀暁」第1部終了です。
    ちょっと短めかも知れませんが、まずはこのくらいで。

    前4作は「剣と魔術の世界」でしたが、今作はがっつり「銃とスマホの世界」になってしまいました。
    だって「白猫夢」から100年以上経過した後の世界ですもん。
    それでも魔術は世界のあっちこっちに、必要不可欠なライフラインとして息づいてますし、
    それを操る技術者である魔術師たちも、システムエンジニアと同じように働いています。
    ここは「近代化された双月世界」。決して21世紀の地球ではないのです。

    そんな近代化と独自成長が混淆する世界で、今後も物語が展開していきます。
    乞うご期待!
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