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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第5部

    蒼天剣・闘由録 4

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    晴奈の話、第277話。
    神器職人の考察、そして大会最終戦。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    4.
     ロウがミツオに「雅龍」を注文する、3ヶ月ほど前。
     ミツオの店に、朱海も訪れていた。
    「いらっしゃい。……お客さん、禁煙だよここは」
    「おっと、悪いな」
     朱海は一旦店を出て煙草を消し、もう一度入り直した。
    「そんで、何の用だ?」
    「ああ、ちょっと刀を打って欲しいんだ」
    「刀? お客さん『虎』だけど、刀使うような武人には見えんが」
     朱海はパタパタと手を振り、注文を伝える。
    「違う違う、アタシのじゃないよ。友達にプレゼントするんだ」
    「プレゼント? じゃあ、ラッピングでもするかい?」
    「刀にリボンでもかけるってか、ははっ」
     二人とも軽く冗談を掛け合い、話を進める。
    「まあ、名のあるお侍サマだからとびっきり上等なもん、作って欲しいんだ。頼めるか?」
    「俺はゴールドコースト一、いや、中央大陸一の刀鍛冶だ。訳無い」
    「そんじゃ、よろしく頼んだ。いくらになる?」
    「そうだな……。とびきり上等となると40000、いや、43000だな」
     値段を聞き、朱海は口をへの字に曲げる。
    「げっ、高いなぁ……。ま、いいか。ソレで頼む」
    「おう。半月経ったらまた来てくれ」

     そして半月後。
    「よう、できたかおっちゃん?」
    「いらっしゃい。ああ、できてるよ。ラッピングもしてやった」
     そう言ってミツオは、桐の箱を差し出した。
    「おー……、なかなかいいセンスしてんじゃん」
    「当たり前だ。俺は世界一の鍛冶屋だぞ」
    「ソレ言う度、ランク上がってんな。ま、ありがとよ。
     そんでコレ、名前は? 上等な刀なんだから、あるんだろ?」
    「勿論。刃紋の見た目から名をつけた。『大蛇』だ」
    「……へーぇ」
     箱を開け、刀を確認した朱海は息を呑む。
     確かに刃紋が蛇の鱗のようにうねり、冷たい輝きを放っている。一目見ただけで、素人の朱海にもこれが、名刀の類だと分かった。
    「流石、『世界一』って自分で言うだけはある。クラフトランドで名を馳せた、伝説の鍛冶屋って言われるだけあるな」
    「ふっふ……、知っていたか、俺の遍歴を。そうだ、それについて一つ、内緒話をしてやろう。
     俺はな、その昔ネール大公お付きの鍛冶屋だったのよ。だから、あの国の『秘密の製法』も知ってんだ」
    「秘密の……? もしかして『神器製造法』か?」
     ミツオはその問いに、ニヤニヤと笑いながらうなずいた。
    「その通り。あの『黒い悪魔』から伝承されたとされる、禁断の技術。俺はその技を盗んで、クラフトランドを離れたんだ。
     ……ま、そのせいでネール公国では、お尋ね者になっちまったが」
    「じゃあ、この刀もソレを使って?」
    「アンタ、『とびっきり』って言ったろう?」
     ミツオはまた、ニヤニヤと笑っている。その不敵な笑顔を眺めていた朱海に、ある疑問が浮かんだ。
    「……ふと思ったんだけどさ、神器と神器がぶつかったらどうなるんだ?」
    「あん?」
    「例えばさ、神器の刀二振りで鍔迫り合いになったとしたら?
     聞いた話だけどよ、神器って『絶対に折れない、曲がらない、壊れない』って言うじゃん。そんなのが二つ、全力でぶつかっちまったらどうなるのかなって」
    「……ふーむ」
     ミツオは鉢巻を取り、しばらくうなった。
    「そうだな……。そうなるとどうなるかってのは、俺も断言できない。でも神器には持ち主の気合いとか、根性とかに応えてくれる力があるって聞くからな。
     結局は、戦ってる奴ら次第ってことになるだろうな。曖昧な答えで済まんが」
    「いや、いいさ。ソコまで厳密に知りたい話でも無いし、『知ったところで』ってもんだし」

     この時、ミツオも朱海も、共にこの工房で造られた神器――「大蛇」と「雅龍」がそれぞれ当代きっての達人の手に渡り、あまつさえ両者の、大一番の対決に使われるなど、想像もしていなかった。



     大会最終日(6月18日)。
     どんよりと曇った、今にも雨が降りそうな天気の中で、いよいよ最後の、そして最も注目を集める対戦が行われようとしていた。
    「とうとう、最後の対決となりました……」
     司会者が荘厳な口調でアナウンスを始める。
    「思えば今大会は非常に粒揃い、かつてないほどの精鋭が一同に会しておりました。
     ピサロ・クラウン。シュンジ・ナラサキ。シリン・ミーシャ。彼らは皆、ここ数年のエリザリーグでも稀に見る実力を備えた猛者たちでした。長年、エリザリーグに携わった私から見ても、優勝してもまったく不思議は無い、紛うこと無き逸材たちでした。
     しかし……、しかし、しかしッ! そんな彼らでさえ、彼らでさえも! この二人には敵わなかったのです……ッ!」
     西口、東口、リングの両出入口がライトアップされる。重苦しく曇った天気が逆に、その光を際立たせた。
    「東口からはロウ・ウィアード! 前大会をブッちぎりの成績で優勝した、新時代の『キング』と目される男です!
     今大会でも非常に優秀な成績で勝ち進み、ついに優勝目前まで迫りました!
     今回優勝すれば2連覇となり、名実共に『キング』の後継者と称されるでしょう!」
     東口からすっと、ロウが現れる。
     三節棍を左手に持ち、ぎゅっと堅く握りしめている。その目には緊張と、強い決意の色が現れていた。
    「だが、しかああああしッ! 忘れてはなりませんッ! こちらもブッちぎりの成績を挙げて勝ち進んできたことをッ!
     西口からはセイナ・コウ! 今期エリザリーグに初出場ながら、圧倒的な実力で勝ち進んできました!
     全盛期の前『キング』を真っ向勝負で、ただ一太刀も負うこと無く退けた伝説の選手、『瞬殺の女神』ユキノ・ヒイラギの愛弟子であり、また、央南の戦争でも数々の伝説を打ち立てた当代無双の剣豪、辣腕の女傑!
     彼女もまた、優勝の一歩手前に立っているのです!」
     西口がライトアップされ、そこから晴奈が静かに現れた。まだ抜刀していないが、その凛とした佇まいが、既に刀のような凄味を帯びている。
    「さあ、双璧が揃いました! この対戦、間違い無く! 確実に! 新たなる伝説を生むことになるでしょう!
     それでは試合、かい……」「待った!」
     司会者が開始を告げようとしたその瞬間、晴奈が大声でそれをさえぎった。
    「……え?」
    「すまぬが対戦の前にちと、話をしておきたい」
     晴奈はロウの側に駆け寄り、彼の肩を叩いてしゃべり出した。
    「お、おい? セイナ?」
     ロウは戸惑っているが、晴奈は構わず続ける。
    「知っている者もいるかも知れぬが、このロウ・ウィアードと言う男、3ヶ月ほど前に居候していた教会の尼僧と結婚した」
     晴奈の報告を聞き、会場がざわめく。
    「えっ!?」
    「結婚したの?」
    「マジ?」
    「おめでとー!」
    「ヒューヒュー」
     観客たちから、祝いの言葉が投げかけられる。
    「さらに吉報だが、その尼僧との間に子供ができたそうだ」
    「おお……!」
    「やるなぁ」
    「どんだけ幸せ者だよ」
    「ダブルでおめでとう、ってか」
     観客たちはパチパチと、拍手でロウを祝福してくれた。
    「セイナ、何で今、んなコト言うんだよ……」
     ロウは顔を真っ赤にして晴奈を止めようとする。が、晴奈は構おうとせず、さらに続ける。
    「この場を借りて、私は友に、祝辞を述べさせてもらう。おめでとう、ロウ」
     晴奈はロウの右手を取り、堅い握手を結んだ。ロウは顔を真っ赤にしていたが、はにかみながら手を握り返した。
     晴奈のアドリブに唖然としていた司会者が、ここでようやく我に返る。
    「え、……えー、コホン。しょ、正直なところ、非常に意外です、はい。意外な展開に、私、非常に戸惑ってしまい、……何と言いますか、司会ともあろうに、言葉を失ってしまいました。失礼いたしました。
     ……えーと、まあ、はい。ともかく私からも、いえ、九尾闘技場からも、お祝いの言葉を述べさせていただきます! おめでとうございます、ウィアードさん!」
     会場全体から、また拍手が送られる。ロウは顔を真っ赤にしながらも、それに応えた。
    「あ、あー、と、……ありがとよ、皆。今日は、まあ、目一杯やりきるつもりなんで、応援、よろしく、……な」
     ロウはぺこりと頭を下げる。その姿に、観客はもう一度祝福の声援を贈った。
     司会者も高揚した声で、アナウンスを再開した。
    「非常に盛り上がってきたところで、いよいよ! いよいよ、最後の試合を始めさせていただきます!
     それでは最終戦、ウィアード対コウ、開始ッ!」

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    2016.06.30 修正
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    お久しぶりです。

    この話は、言わば「晴奈とウィルが別の、もっと有効的な形で出会っていたら」が具現化したものです。
    きっと抗黒戦争が無ければ、二人の関係はこうなっていたはず。

    NoTitle 

    こちらではお久しぶりです。
    ようやく二人の対決ですね。今回はスポーツマンシップですからいいですね。戦闘になるとそうこうも言ってられないですからね。
    またよろしくお願いします。

    NoTitle 

    大丈夫。
    開始1分後に、その疑惑はブっ飛びます。

    NoTitle 

    晴奈ちゃん、気持ちはわかるけど、そんなことを勝負前にいったら、「馴れ合い」を疑われるんじゃないかなあ。

    うーん……いや気持ちはわかるんだけど。
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