「双月千年世界 5;緑綺星」
緑綺星 第2部
緑綺星・奇襲譚 7
シュウの話、第67話。
拠点制圧。
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7.
ラモンに案内され、エヴァは工場跡らしき建物の裏手に到着した。
「連中はこの中で生活してます。半月に1回くらいでトラックも来るんで、結構忙しくしてるみたいですよ」
「忙しく、か」
建物の窓から中をうかがおうとしたが、廃屋に似合わない真新しい軍用コンテナに視界が阻まれる。
「確かに何かの拠点らしいな」
「たまーに盗みに入ろうとする奴がいるみたいですけど、成功したって自慢してる奴は一人も出てこないんで、ほぼほぼ返り討ちに遭ってるんでしょうね。でも元特殊部隊のエヴァさんなら……」「何度も言うな。気絶させるぞ」
エヴァは建物を見上げ、壁の硬さを確かめて、侵入ルートを検討する。
(鉄筋製のせいか、案外しっかりしている。2階の窓は板が打ち付けられている。あそこから侵入はできそうにないな。とは言え……)
エヴァは数歩下がり、視界にいたラモンに指示する。
「10分経って私から合図が無ければ、失敗したと思っていい。その時はそのままここから離れろ」
「了解です」
ラモンが数歩引いたところで、エヴァは2階部分まで壁を駆け上がり、窓に打ち付けられた板の、わずかな段差をつかんで自分の体を引き上げ、屋上までよじ登っていく。その様子を眺めていたラモンは、ぼそっとこうつぶやいていた。
「アルトさんもバケモノじみてるけど……エヴァさんも相当バケモノだよなぁ」
屋上に上がったところでまず、エヴァは敷地内の様子を探る。
(表側は元々駐車場と、貨物の積み下ろし場所になっていたらしいな。……あのヘリで人を運んでいるんだろうか)
駐車場跡には大量の軍用コンテナが置かれ、武装ヘリが停まっていた。
(流石にここから地上に降りるわけにはいかないな。目立ちすぎるし、そもそも危険だ)
と、屋上の端が大きく崩れているのを見つけ、エヴァは首を突っ込んでみる。
(ここからなら侵入できそうだ)
罠が無いか探るが、それらしいものは見当たらない。
(そもそもこんなところから侵入しようと言う奴が、難民特区にいるとは思えない。相手もそう考えているんだろう)
危険が無いことを確認して侵入し、そのまま部屋の外に出る。
「……で……に……」
「……いつ……」
元々が工場だったせいか、部屋の外の廊下は吹き抜けとつながっており、1階の様子が見下ろせる。その中央に集まっている者たちが、机に武器と近隣の地図とを置いて何か話し込んでおり、階上のエヴァに気付いている様子は見られない。
(全部で6人――お決まりのハーミット式班編成、ドライバー2名と実働班4名。偉そうに地図を叩いてるあいつがリーダーだろう。その右横でうんうんうなずいてるのがドライバー、その反対にいるのがコドラ(副運転手)と言うところか。向かい側にいるのが残りの実働班3名だな)
一旦部屋に戻り、エヴァは思案を巡らせる。
(どうやって全員倒す? こっちの手持ちは拳銃とテーザー銃が1挺ずつだ。廊下からじゃテーザー銃は届かないし、拳銃弾も威力が落ちる。廊下から飛び降りて肉弾戦と言うのもナシだ。1対6は流石に厳しいからな。さて、他に方法は……?)
と、こちらの部屋にも小さい軍用コンテナがいくつか置かれているのに気付く。
(中身は糧食と日用品か。こっちは……?)
コンテナをいくつか開け、その中に拘束・鎮圧用の武器が入っているのを見付けて、エヴァはため息をつく。
(なるほど、確かにあいつらは人さらいらしい。……それなら多少手荒にやっても、良心はさほど傷まないな)
エヴァはコンテナの中から投網射出器を取り出し、迷いなく階下に向けて発射した。
「それでは、……うわっ!?」
「な、なんだ!?」
机上の地図に気を取られていた6人は、あっさり網に絡め取られる。すかさずエヴァは1階に降り、テーザー銃を撃ち込む。
「はがががが……」
「あぎぎぎぎ……」
侵入から5分もしないうちに、相手はあっさり無力化された。
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拠点制圧。
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7.
ラモンに案内され、エヴァは工場跡らしき建物の裏手に到着した。
「連中はこの中で生活してます。半月に1回くらいでトラックも来るんで、結構忙しくしてるみたいですよ」
「忙しく、か」
建物の窓から中をうかがおうとしたが、廃屋に似合わない真新しい軍用コンテナに視界が阻まれる。
「確かに何かの拠点らしいな」
「たまーに盗みに入ろうとする奴がいるみたいですけど、成功したって自慢してる奴は一人も出てこないんで、ほぼほぼ返り討ちに遭ってるんでしょうね。でも元特殊部隊のエヴァさんなら……」「何度も言うな。気絶させるぞ」
エヴァは建物を見上げ、壁の硬さを確かめて、侵入ルートを検討する。
(鉄筋製のせいか、案外しっかりしている。2階の窓は板が打ち付けられている。あそこから侵入はできそうにないな。とは言え……)
エヴァは数歩下がり、視界にいたラモンに指示する。
「10分経って私から合図が無ければ、失敗したと思っていい。その時はそのままここから離れろ」
「了解です」
ラモンが数歩引いたところで、エヴァは2階部分まで壁を駆け上がり、窓に打ち付けられた板の、わずかな段差をつかんで自分の体を引き上げ、屋上までよじ登っていく。その様子を眺めていたラモンは、ぼそっとこうつぶやいていた。
「アルトさんもバケモノじみてるけど……エヴァさんも相当バケモノだよなぁ」
屋上に上がったところでまず、エヴァは敷地内の様子を探る。
(表側は元々駐車場と、貨物の積み下ろし場所になっていたらしいな。……あのヘリで人を運んでいるんだろうか)
駐車場跡には大量の軍用コンテナが置かれ、武装ヘリが停まっていた。
(流石にここから地上に降りるわけにはいかないな。目立ちすぎるし、そもそも危険だ)
と、屋上の端が大きく崩れているのを見つけ、エヴァは首を突っ込んでみる。
(ここからなら侵入できそうだ)
罠が無いか探るが、それらしいものは見当たらない。
(そもそもこんなところから侵入しようと言う奴が、難民特区にいるとは思えない。相手もそう考えているんだろう)
危険が無いことを確認して侵入し、そのまま部屋の外に出る。
「……で……に……」
「……いつ……」
元々が工場だったせいか、部屋の外の廊下は吹き抜けとつながっており、1階の様子が見下ろせる。その中央に集まっている者たちが、机に武器と近隣の地図とを置いて何か話し込んでおり、階上のエヴァに気付いている様子は見られない。
(全部で6人――お決まりのハーミット式班編成、ドライバー2名と実働班4名。偉そうに地図を叩いてるあいつがリーダーだろう。その右横でうんうんうなずいてるのがドライバー、その反対にいるのがコドラ(副運転手)と言うところか。向かい側にいるのが残りの実働班3名だな)
一旦部屋に戻り、エヴァは思案を巡らせる。
(どうやって全員倒す? こっちの手持ちは拳銃とテーザー銃が1挺ずつだ。廊下からじゃテーザー銃は届かないし、拳銃弾も威力が落ちる。廊下から飛び降りて肉弾戦と言うのもナシだ。1対6は流石に厳しいからな。さて、他に方法は……?)
と、こちらの部屋にも小さい軍用コンテナがいくつか置かれているのに気付く。
(中身は糧食と日用品か。こっちは……?)
コンテナをいくつか開け、その中に拘束・鎮圧用の武器が入っているのを見付けて、エヴァはため息をつく。
(なるほど、確かにあいつらは人さらいらしい。……それなら多少手荒にやっても、良心はさほど傷まないな)
エヴァはコンテナの中から投網射出器を取り出し、迷いなく階下に向けて発射した。
「それでは、……うわっ!?」
「な、なんだ!?」
机上の地図に気を取られていた6人は、あっさり網に絡め取られる。すかさずエヴァは1階に降り、テーザー銃を撃ち込む。
「はがががが……」
「あぎぎぎぎ……」
侵入から5分もしないうちに、相手はあっさり無力化された。
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