「双月千年世界 5;緑綺星」
緑綺星 第2部
緑綺星・奇襲譚 8
シュウの話、第68話。
奇妙な符合。
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8.
合流したラモンに、エヴァは駐車場のヘリを指し示す。
「あれは操縦できるか?」
「は?」
目を丸くするも、ラモンはこくりとうなずいた。
「まあ、できなくはないですが」
「あれならリモード共和国まで1時間くらいで行ける。いますぐ調達できる移動手段としては、あれ以上は無いだろう」
エヴァの言葉に、ラモンの猫耳がびくんと跳ねる。
「リモード共和国ですって!? あんたこないだそこから逃げて来たとこじゃないですか! しかも今朝方クーデターもあって……」「だから行くんだ」
そう返しつつ、エヴァはラモンの肩を叩く。
「それにあれはジェットヘリだ。1機3千万コノンはする代物だ。売るところで売れば、高級車が新車で3台は買えるくらいにはなる」
「さっ、3千万!」
カネの話をした途端、ラモンの目の色が変わった。
「私をリモード共和国まで送ってくれれば、あのヘリは好きにしていい。売るなりバラすなり、君の勝手にしていいぞ」
「う、うーん……でも危険なのは嫌ですよ。クーデターの真っ最中のとこに飛び込むのはちょっと……」
「攻撃されているのは首都市街地だ。郊外に降ろしてくれれば安全だ。後は自力で行く。一回送り届けるだけで3千万なんだ。これ以上無いボロ儲けだろう?」
「うーん……」
ラモンは渋い顔をしていたが、やがて決心した顔でうなずいた。
「……分かりました、やりましょう! 3千万のためならラモン・ミリアン、陸へ海へ空へですよ!」
「ありがとう。よろしく頼む」
「了解です。じゃ、給油だとか機器点検とかしないといけないので、30分待ってもらっていいですか?」
「分かった。こちらもその間に戦闘準備をしておこう」
気絶したままの兵士たちとコンテナから武器・弾薬をかき集め、エヴァは完全武装を整える。その間にラモンの準備も終わったらしく、駐車場からヘリのローター音が聞こえてきた。
《準備完了です。いつでも行けますよ》
ヘリに積んであった通信機も鹵獲しており、エヴァの狼耳にラモンの声が届く。
「了解。まもなく向かう。……いや」
と、コンテナに収められていた武器の中からテーザー銃を見つけたところで、エヴァは手を止めた。
「ラモン、昨晩のセーフエリアでの騒ぎを聞いてるか?」
《セーフエリアの? なんかヘリが襲ってきたとか何とかって……》
「君が乗っているそのヘリのローター音、わたしには聞き覚えがあるんだ」
エヴァは昨晩から奪ったままのテーザー銃と、コンテナ内に収められていたものとを見比べ、それが紛れもなく同型機であることを確認する。
「私は昨晩、セーフエリアにいた。襲撃にも居合わせている。その時のヘリと、今君が乗っているヘリは、どうやら同一の機体らしい」
《へ? ……ってことは、白猫党の奴らがセーフエリアを襲ったってことですか?》
「そうなる」
まだ横たわっている兵士たちの体をもう一度調べ、そのうちの一人に樹状の傷が2ヶ所走っていることを確認する。
「兵士たちの中に、電紋(でんもん:電気が体を通ったことで生じる傷跡)が2つ付いてる奴がいる。だがさっき無力化した時には、1人に対してそれぞれ1回ずつしか使ってないんだ。それなのに2ヶ所あるってことは、今より前にもう一回――それもごく最近――電撃を食らってたってことになる。そして昨晩、わたしはセーフエリアを襲った兵士を一人、テーザー銃で気絶させているんだ」
《つまりそいつらがゆうべ襲ってきた奴だ、……ってことになりますね。でも何で……?》
「……それは分からない。ともかく時間が無い。すぐ行こう」
《了解です》
エヴァは弾薬を詰め込んだバッグを抱え、ヘリに乗り込んだ。
緑綺星・奇襲譚 終
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奇妙な符合。
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8.
合流したラモンに、エヴァは駐車場のヘリを指し示す。
「あれは操縦できるか?」
「は?」
目を丸くするも、ラモンはこくりとうなずいた。
「まあ、できなくはないですが」
「あれならリモード共和国まで1時間くらいで行ける。いますぐ調達できる移動手段としては、あれ以上は無いだろう」
エヴァの言葉に、ラモンの猫耳がびくんと跳ねる。
「リモード共和国ですって!? あんたこないだそこから逃げて来たとこじゃないですか! しかも今朝方クーデターもあって……」「だから行くんだ」
そう返しつつ、エヴァはラモンの肩を叩く。
「それにあれはジェットヘリだ。1機3千万コノンはする代物だ。売るところで売れば、高級車が新車で3台は買えるくらいにはなる」
「さっ、3千万!」
カネの話をした途端、ラモンの目の色が変わった。
「私をリモード共和国まで送ってくれれば、あのヘリは好きにしていい。売るなりバラすなり、君の勝手にしていいぞ」
「う、うーん……でも危険なのは嫌ですよ。クーデターの真っ最中のとこに飛び込むのはちょっと……」
「攻撃されているのは首都市街地だ。郊外に降ろしてくれれば安全だ。後は自力で行く。一回送り届けるだけで3千万なんだ。これ以上無いボロ儲けだろう?」
「うーん……」
ラモンは渋い顔をしていたが、やがて決心した顔でうなずいた。
「……分かりました、やりましょう! 3千万のためならラモン・ミリアン、陸へ海へ空へですよ!」
「ありがとう。よろしく頼む」
「了解です。じゃ、給油だとか機器点検とかしないといけないので、30分待ってもらっていいですか?」
「分かった。こちらもその間に戦闘準備をしておこう」
気絶したままの兵士たちとコンテナから武器・弾薬をかき集め、エヴァは完全武装を整える。その間にラモンの準備も終わったらしく、駐車場からヘリのローター音が聞こえてきた。
《準備完了です。いつでも行けますよ》
ヘリに積んであった通信機も鹵獲しており、エヴァの狼耳にラモンの声が届く。
「了解。まもなく向かう。……いや」
と、コンテナに収められていた武器の中からテーザー銃を見つけたところで、エヴァは手を止めた。
「ラモン、昨晩のセーフエリアでの騒ぎを聞いてるか?」
《セーフエリアの? なんかヘリが襲ってきたとか何とかって……》
「君が乗っているそのヘリのローター音、わたしには聞き覚えがあるんだ」
エヴァは昨晩から奪ったままのテーザー銃と、コンテナ内に収められていたものとを見比べ、それが紛れもなく同型機であることを確認する。
「私は昨晩、セーフエリアにいた。襲撃にも居合わせている。その時のヘリと、今君が乗っているヘリは、どうやら同一の機体らしい」
《へ? ……ってことは、白猫党の奴らがセーフエリアを襲ったってことですか?》
「そうなる」
まだ横たわっている兵士たちの体をもう一度調べ、そのうちの一人に樹状の傷が2ヶ所走っていることを確認する。
「兵士たちの中に、電紋(でんもん:電気が体を通ったことで生じる傷跡)が2つ付いてる奴がいる。だがさっき無力化した時には、1人に対してそれぞれ1回ずつしか使ってないんだ。それなのに2ヶ所あるってことは、今より前にもう一回――それもごく最近――電撃を食らってたってことになる。そして昨晩、わたしはセーフエリアを襲った兵士を一人、テーザー銃で気絶させているんだ」
《つまりそいつらがゆうべ襲ってきた奴だ、……ってことになりますね。でも何で……?》
「……それは分からない。ともかく時間が無い。すぐ行こう」
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