「双月千年世界 5;緑綺星」
緑綺星 第2部
緑綺星・宿命譚 8
シュウの話、第76話。
シュウ・メイスンのターニングポイント。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
8.
「まあ、その、なんだ。またお達しがあったわけだが」
「奇遇ですねー。わたしにもありましたよー」
セーフエリアにて、シュウとカニートがまた、二人きりで話し合っていた。
「わたしの方から先にお話した方がいいですかー?」
「……だろうな」
「じゃ、まずコレを」
そう前置きし、シュウは自分のスマホに送られてきた文面を見せた。
「トラス王立大学からの正式な返答文です。『エクスプローラ社よりシュウ・メイスン君および当校に対して損害賠償請求があったことを受け事実調査を行ったところ、インターン契約に関し、エクスプローラ社による重大な違反が判明した。この件は裁判所を通じて異議申し立てを行い、公正かつ厳正な判断がなされた後、しかるべき対応を執ることとする』、……ですって」
「お粗末な話だよな。偉そうに賠償求めておいて、実は自分たちの側が約束破ってたって言うんだから」
シュウが伝えた通り、王立大学の調査によりエクスプローラ社は、インターン契約に関する違反を犯していたことが判明した。契約上、インターン生はトラス王国首都、イーストフィールド市内でのみ作業補助を行うことが定められていたのだが――。
「わたし市内どころか、今まさに特区にいますもんね。その上、リモード共和国とかにも行っちゃってますし」
「だよな……」
「あと、『適切な報酬を支払うコト』って契約に含まれてたんですが、コレもちゃんと支払われてなかったみたいですね。わたしだけじゃなく、他のインターン生にも」
「ああ」
「ソレどころか『逆らうと大学にマイナス評価を送るぞ』っておどして、結構ひどいコトしてたって……」「もういい。分かった。こないだのことは悪かった。謝る。俺の負けだよ」
額を押さえたカニートに、シュウは肩をすくめて返した。
「厳密にはエクスプローラ社の負けですね。でも昨日の今日で、よく大学側もこんなに早く調査できましたよね」
「機を伺ってたって感じがするな。いずれ大々的に責め立てるつもりだったんだろう。エクスプローラ社はしてやられたってところだろうな。
この件はかなり大事になるだろう。王国におけるメジャー三大紙のスキャンダルだからな。もしかしたら俺の今後にも響くかも知れん」
「ソレでいっそ辞めちゃおうって考えてたり?」
シュウの指摘に、カニートは苦笑いで返した。
「まだそこまでは考えてないさ。……とは言え、いつかフリーになって世界中を取材して回りたいって夢はあるからな。今後の会社の展開次第じゃ、その予定を早めるかも」
「わたしもやってみたいですねー、フリージャーナリスト」
「お前はちょっと方向性が違うかもな」
そう言われて、シュウは面食らう。
「わたし、向いてないですか?」
「もっといい道があるってことだ。お前は文章だけで食ってくには、キャラが立ちすぎてるよ。お前はもっと自由に、やりたいことを存分にやりまくれ。それが一番、お前向きだよ」
「……ってアドバイスされたんで、今はこうしてチャンネル作ってクラウダーでやりたい放題やってるってワケですねー。バッチリ収益化もしてるんでそこそこ稼げてるんですよね、今」
「ソレはどーでもいーぜ」
話を聴き終えた一聖が突っ込む。
「んで? なんでエヴァの話題、取り扱わなくなったんだ?」
「リモード共和国の新政府が、エヴァを指名手配しちゃったからです。『リベロ・アドラー暫定大統領の命を狙ったテロリスト』だって。完全フリーのわたしでも、流石に軍事政権の指名手配犯を擁護するのはコワいので」
「友達だっつってたのにか?」
「その友達も、いきなり何も言わずにわたしの前から姿消しちゃいましたからね。ソレなのにわたしばっかり頑張って持ち上げるって言うのも、なーんかハラ立って来ちゃって」
「ま、気持ちは分かる」
と、そこへ天狐が慌てた様子で現れた。
「お前ら、こっち来い! ニュースで速報出てるぞ!」
「速報?」
「金火狐総帥が会見する! 今日の件でだ!」
「え……!?」
シュウと一聖は顔を見合わせ、揃ってリビングへ駆け出した。
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シュウ・メイスンのターニングポイント。
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「まあ、その、なんだ。またお達しがあったわけだが」
「奇遇ですねー。わたしにもありましたよー」
セーフエリアにて、シュウとカニートがまた、二人きりで話し合っていた。
「わたしの方から先にお話した方がいいですかー?」
「……だろうな」
「じゃ、まずコレを」
そう前置きし、シュウは自分のスマホに送られてきた文面を見せた。
「トラス王立大学からの正式な返答文です。『エクスプローラ社よりシュウ・メイスン君および当校に対して損害賠償請求があったことを受け事実調査を行ったところ、インターン契約に関し、エクスプローラ社による重大な違反が判明した。この件は裁判所を通じて異議申し立てを行い、公正かつ厳正な判断がなされた後、しかるべき対応を執ることとする』、……ですって」
「お粗末な話だよな。偉そうに賠償求めておいて、実は自分たちの側が約束破ってたって言うんだから」
シュウが伝えた通り、王立大学の調査によりエクスプローラ社は、インターン契約に関する違反を犯していたことが判明した。契約上、インターン生はトラス王国首都、イーストフィールド市内でのみ作業補助を行うことが定められていたのだが――。
「わたし市内どころか、今まさに特区にいますもんね。その上、リモード共和国とかにも行っちゃってますし」
「だよな……」
「あと、『適切な報酬を支払うコト』って契約に含まれてたんですが、コレもちゃんと支払われてなかったみたいですね。わたしだけじゃなく、他のインターン生にも」
「ああ」
「ソレどころか『逆らうと大学にマイナス評価を送るぞ』っておどして、結構ひどいコトしてたって……」「もういい。分かった。こないだのことは悪かった。謝る。俺の負けだよ」
額を押さえたカニートに、シュウは肩をすくめて返した。
「厳密にはエクスプローラ社の負けですね。でも昨日の今日で、よく大学側もこんなに早く調査できましたよね」
「機を伺ってたって感じがするな。いずれ大々的に責め立てるつもりだったんだろう。エクスプローラ社はしてやられたってところだろうな。
この件はかなり大事になるだろう。王国におけるメジャー三大紙のスキャンダルだからな。もしかしたら俺の今後にも響くかも知れん」
「ソレでいっそ辞めちゃおうって考えてたり?」
シュウの指摘に、カニートは苦笑いで返した。
「まだそこまでは考えてないさ。……とは言え、いつかフリーになって世界中を取材して回りたいって夢はあるからな。今後の会社の展開次第じゃ、その予定を早めるかも」
「わたしもやってみたいですねー、フリージャーナリスト」
「お前はちょっと方向性が違うかもな」
そう言われて、シュウは面食らう。
「わたし、向いてないですか?」
「もっといい道があるってことだ。お前は文章だけで食ってくには、キャラが立ちすぎてるよ。お前はもっと自由に、やりたいことを存分にやりまくれ。それが一番、お前向きだよ」
「……ってアドバイスされたんで、今はこうしてチャンネル作ってクラウダーでやりたい放題やってるってワケですねー。バッチリ収益化もしてるんでそこそこ稼げてるんですよね、今」
「ソレはどーでもいーぜ」
話を聴き終えた一聖が突っ込む。
「んで? なんでエヴァの話題、取り扱わなくなったんだ?」
「リモード共和国の新政府が、エヴァを指名手配しちゃったからです。『リベロ・アドラー暫定大統領の命を狙ったテロリスト』だって。完全フリーのわたしでも、流石に軍事政権の指名手配犯を擁護するのはコワいので」
「友達だっつってたのにか?」
「その友達も、いきなり何も言わずにわたしの前から姿消しちゃいましたからね。ソレなのにわたしばっかり頑張って持ち上げるって言うのも、なーんかハラ立って来ちゃって」
「ま、気持ちは分かる」
と、そこへ天狐が慌てた様子で現れた。
「お前ら、こっち来い! ニュースで速報出てるぞ!」
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「金火狐総帥が会見する! 今日の件でだ!」
「え……!?」
シュウと一聖は顔を見合わせ、揃ってリビングへ駆け出した。
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