「双月千年世界 5;緑綺星」
緑綺星 第2部
緑綺星・宿命譚 9
シュウの話、第77話。
広がる闇。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
9.
シュウたちがリビングに入ると同時に、一行テロップが表示されていたテレビ画面は、金火狐総帥シラクゾ・ゴールドマンのバストアップに切り替わった。
《本日報告された飛翔体によるテロ攻撃に関し、公安局に犯行声明が送られました。現在公安局にて大々的な捜査が進められている犯罪組織『ネオクラウン』からのものと思われます》
「なんやて!?」
先にテレビにかじりついていたジャンニが、憤った声を上げる。
《声明によれば、今回のテロ攻撃は前述した公安局の捜査に対する抗議・報復行動によるものであるとのことです。これに対し我々金火狐財団は市民の安全、市国の公益を第一に考え、かつ、市国における不当な暴力を一切許容しないとする従来よりの姿勢を崩すことなく、断固として戦うことをここに宣言します》
「何言うてんねん、こいつ。今までずっと逃げ回っとったクセして」
「クソ、やられたな」
ジャンニが呆れた表情を浮かべる一方で、天狐はあごに手を当ててうめいている。
「恐らく白猫党からコイツに、内々で打診があったんだ。筋書きはこうだろう。『仮想敵を作ってやるから話を合わせとけ』とか何とかな」
「仮想敵ってつまり、ネオクラウンか」
一聖も同様に顔をしかめつつ、天狐と検討を重ねる。
「そうだ。この流れになれば、『市国で起こってる問題は全部ネオクラウンのせい』ってスキームができる」
「なるほどな。そして金火狐総帥自ら『ネオクラウンと戦う』と公言したコトで、コイツは疑惑の人物一歩手前の立場から一転、市国のヒーローに大変身だ」
「自分への嫌疑を回避できるどころか、公安局も監査局ももうコレで、公にはシラクゾの捜査ができなくなる。してると分かりゃ、逆にシラクゾとその取り巻きから批難されちまうだろう。『あのヒーローを疑うのか』ってな」
「公安と監査さえ黙らせりゃ、後は好き放題だ。カネもモノも『ネオクラウンと戦うため』の一言で用意できちまうってコトだ。実態がどうあろうとな」
二人の話を聞いていたジャンニの顔に、次第に朱が指していく。
「んなアホな! ほんなら何やな、白猫党に横流ししても『ネオクラウンと戦うためやねん』で済ましてしまえるっちゅうんか!?」
怒りをあらわにするジャンニに、天狐と一聖は揃ってうなずいた。
「そうなる。何だかんだソレらしい言い訳付けてな」
「恐らくは元々から、そう言うシナリオを作ってたんだろう。いずれシラクゾにこう宣言させて、ココまでコソコソやってきた白猫党への支援を本格化、かつ、正当化させるつもりだったんだろう」
「つまりお前さんのヒーロー活動――スチール・フォックスの存在があろうと無かろうと、何一つ想定外は無かったってコトだろう、な」
「ウソやろ……!?」
ジャンニは怒りに満ちた表情で、その場に立ち尽くしていた。
「ほな何やねん……俺……何のために……今まで……」
そのやるせない言葉に答えられる者はおらず、リビングにはテレビの声だけが流れ続けていた。
と――そこでぺこん、とシュウのスマホが鳴る。
「あ、ごめんなさい」
何故か謝ってから、シュウがスマホを見る。
「……え?」
見るなり目を丸くし、シュウは一聖の肩をぺちぺち叩いた。
「カズちゃんカズちゃんカズちゃん、大変です!」
「痛ぇよ! 何がだよ?」
「えっとですね、あの、エヴァから、メッセージが」
しどろもどろに説明しつつ、シュウはスマホを一聖に見せた。
「ん?」
シュウのスマホには、こう表示されていた。
「差出人 エヴァ
件名 突然ごめん
急いで伝えてほしいことがある。この動画を見たらすぐ、君のチャンネルで流してくれ。これをすぐ世間に伝えないと、世界は白猫党に支配されてしまうかも知れない。
白猫党は難民特区を狙っている」
緑綺星・宿命譚 終
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広がる闇。
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シュウたちがリビングに入ると同時に、一行テロップが表示されていたテレビ画面は、金火狐総帥シラクゾ・ゴールドマンのバストアップに切り替わった。
《本日報告された飛翔体によるテロ攻撃に関し、公安局に犯行声明が送られました。現在公安局にて大々的な捜査が進められている犯罪組織『ネオクラウン』からのものと思われます》
「なんやて!?」
先にテレビにかじりついていたジャンニが、憤った声を上げる。
《声明によれば、今回のテロ攻撃は前述した公安局の捜査に対する抗議・報復行動によるものであるとのことです。これに対し我々金火狐財団は市民の安全、市国の公益を第一に考え、かつ、市国における不当な暴力を一切許容しないとする従来よりの姿勢を崩すことなく、断固として戦うことをここに宣言します》
「何言うてんねん、こいつ。今までずっと逃げ回っとったクセして」
「クソ、やられたな」
ジャンニが呆れた表情を浮かべる一方で、天狐はあごに手を当ててうめいている。
「恐らく白猫党からコイツに、内々で打診があったんだ。筋書きはこうだろう。『仮想敵を作ってやるから話を合わせとけ』とか何とかな」
「仮想敵ってつまり、ネオクラウンか」
一聖も同様に顔をしかめつつ、天狐と検討を重ねる。
「そうだ。この流れになれば、『市国で起こってる問題は全部ネオクラウンのせい』ってスキームができる」
「なるほどな。そして金火狐総帥自ら『ネオクラウンと戦う』と公言したコトで、コイツは疑惑の人物一歩手前の立場から一転、市国のヒーローに大変身だ」
「自分への嫌疑を回避できるどころか、公安局も監査局ももうコレで、公にはシラクゾの捜査ができなくなる。してると分かりゃ、逆にシラクゾとその取り巻きから批難されちまうだろう。『あのヒーローを疑うのか』ってな」
「公安と監査さえ黙らせりゃ、後は好き放題だ。カネもモノも『ネオクラウンと戦うため』の一言で用意できちまうってコトだ。実態がどうあろうとな」
二人の話を聞いていたジャンニの顔に、次第に朱が指していく。
「んなアホな! ほんなら何やな、白猫党に横流ししても『ネオクラウンと戦うためやねん』で済ましてしまえるっちゅうんか!?」
怒りをあらわにするジャンニに、天狐と一聖は揃ってうなずいた。
「そうなる。何だかんだソレらしい言い訳付けてな」
「恐らくは元々から、そう言うシナリオを作ってたんだろう。いずれシラクゾにこう宣言させて、ココまでコソコソやってきた白猫党への支援を本格化、かつ、正当化させるつもりだったんだろう」
「つまりお前さんのヒーロー活動――スチール・フォックスの存在があろうと無かろうと、何一つ想定外は無かったってコトだろう、な」
「ウソやろ……!?」
ジャンニは怒りに満ちた表情で、その場に立ち尽くしていた。
「ほな何やねん……俺……何のために……今まで……」
そのやるせない言葉に答えられる者はおらず、リビングにはテレビの声だけが流れ続けていた。
と――そこでぺこん、とシュウのスマホが鳴る。
「あ、ごめんなさい」
何故か謝ってから、シュウがスマホを見る。
「……え?」
見るなり目を丸くし、シュウは一聖の肩をぺちぺち叩いた。
「カズちゃんカズちゃんカズちゃん、大変です!」
「痛ぇよ! 何がだよ?」
「えっとですね、あの、エヴァから、メッセージが」
しどろもどろに説明しつつ、シュウはスマホを一聖に見せた。
「ん?」
シュウのスマホには、こう表示されていた。
「差出人 エヴァ
件名 突然ごめん
急いで伝えてほしいことがある。この動画を見たらすぐ、君のチャンネルで流してくれ。これをすぐ世間に伝えないと、世界は白猫党に支配されてしまうかも知れない。
白猫党は難民特区を狙っている」
緑綺星・宿命譚 終
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第2部終了です。
……正直言って今作はかなり難航しています。
なかなか次の作品を出せずにいるのが、自分自身でもどかしい。
最近また、色んなことを同時並行してるのが最大の問題ですね。
どこかで一度、予定を整理しないといけません。
一つ二つ、抱えているものを終わらせないと、このままでは身動きが取れませんから……。
……しかし終わらせたらまた、何かを始めたくなるんだろうなぁ。
この性分は死ぬまで治らないかも知れません。
第2部終了です。
……正直言って今作はかなり難航しています。
なかなか次の作品を出せずにいるのが、自分自身でもどかしい。
最近また、色んなことを同時並行してるのが最大の問題ですね。
どこかで一度、予定を整理しないといけません。
一つ二つ、抱えているものを終わらせないと、このままでは身動きが取れませんから……。
……しかし終わらせたらまた、何かを始めたくなるんだろうなぁ。
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