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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第5部

    蒼天剣・非道録 3

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    晴奈の話、第284話。
    画策する二人と、怪しいオカマ。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    3.
     一旦赤虎亭にカップと賞金、フォルナを置きに寄り、それから教会に着いた頃には、既に午後10時近かった。
    「灯りが無い……?」
    「入ってみよう、黄くん」
     楢崎に促され、晴奈は教会の扉を開ける。
     入ってすぐの礼拝堂には、別段おかしな点は見られない。だがその奥、居間に入ったところで、晴奈たちは言葉を失った。
    「なっ……!?」
     居間が無茶苦茶に荒らされ、家具と言う家具が全てグチャグチャに壊されている。
    「めちゃめちゃやん……!?」
    「悪い予感が、当たったらしいね」
     楢崎は青い顔で、居間の奥へと進む。晴奈とシリンも、辺りを見回しながらロウの安否を確認しようとした。
     と、足元でくしゃ、と言う音がする。灯りを近付けてみると、丸められた手紙と分かった。
    「これは……?」
     晴奈はシリンに灯りを手渡し、その手紙を読む。
    「……な、何ッ!?」
    「何て書いてあったん?」
     晴奈の様子に気付いたらしく、楢崎が戻ってくる。
    「どうした、黄くん?」
     晴奈は動揺を抑え、二人に説明する。
    「事態は最悪のようです。ロウの家族が、クラウンに誘拐されたと……!」
    「何だって!?」
     楢崎は晴奈から手紙を受け取り、そして震える声で叫んだ。
    「……何と言うことを!」
    「我々も急ぎましょう! 10時と言えば、もうまもなくです!」
    「そやな、急がんと! これはヤバいかも分からんで、ロウのヤツが」
    「ああ……!」
     晴奈たちは大急ぎで、港湾区へと急いだ。

     この時――晴奈たちは急いでいたため気付かなかったが、教会の陰に隠れて、窓越しに晴奈たちの話を聞いている者がいた。
    「ガヤルド大倉庫、……ね」
     フォルナと小鈴である。
    「先回りして、待機してましょ。あたしたちだけじゃ絶対クラウン一味に対抗できないし、晴奈たちと一緒に行ったら追い返されるだろうし」
     赤虎亭に帰されたフォルナが「わたくしだけじっとしているなんて」と小鈴を説得し、一緒に晴奈たちの後を追ってきていたのだ。
    「ええ、急ぎましょう」
    「……の、前に。公安にも連絡しといた方がいいわね。クラウン一味の居場所を伝えれば、公安総出で突入してくれるだろうし」
    「そうですわね。でも、それだとかなり時間を食ってしまうかも。二手に分かれるのはどうでしょう?」
    「この状況で一人ウロウロしてたら、ソレこそ死にに行くようなもんよ。固まってた方がいいわ。できる限り急いで、ジュリアんトコに行きましょ」
     フォルナは小鈴の提案に従い、二人で公安に向かった。



     一方、こちらは港湾区、ガヤルド大倉庫。
     クラウンを筆頭に、一味全員が黒いマントを羽織った猫獣人の、……男? に平伏していた。
    「お茶ぁ、無いのーぉ?」
    「なにぶん、倉庫の中ですんで」
    「お客をさぁ、待たせておいてぇ、茶の一つもなしなのーぉ?」
     その猫獣人は妙に甘ったるい口調で、クラウンたちを前に爪の手入れをしている。
     小柄で、派手な化粧をして、ピアスをごてごてと体中、顔中にくっつけているので、ぱっと見れば女とも思える。
     が、声は低めであるし、(晴奈以上に)胸がまったく無いので、どう考えても男としか思えない。
    「すいません、オッドさん。アジトが襲撃されなきゃ、もうちょっとおもてなしもできたんですが」
    「そこがさぁ、アンタらのアホなところよねーぇ」
     黒マントの猫獣人、オッドは青と金の瞳を向けてクラウンたちをなじる。
    「捜査官シメたんだからさぁ、こーなるって予想もできたしぃ、対処なり何なりできたでしょぉ? なのにこの2日やったことと言えばさぁ、その捜査官ボコっただけでしょーぉ?
     アンタら、ホンット使えない奴らねぇ」
    「……言葉もありませんです、はい」
     いつも我が物顔で振舞うクラウンも、彼(?)にはぺこぺこと頭を下げている。オッドは煙草を取り出し、クラウンに向ける。
    「火」
    「あっ、はい。……オラ、オッドさんに火ぃ貸せ」
     クラウンは幹部の一人に、あごでしゃくる。彼は慌ててマッチを取り出し、オッドのくわえた煙草に火を近付ける。
     と、その瞬間オッドは煙草を口から離し、手のひらをぺたっと幹部の顔に貼り付ける。間も無く、幹部の顔色が紫色に染まった。
    「ぐ、……ぉえ」
    「うふふ、ごめんねーぇ」
     幹部は胸を押さえ、真っ赤な泡を吹いてバタリと倒れてしまった。どう見ても、死んでいるのは明らかだった。
    「なっ、何をっ……!?」
    「クラウンさぁん、アタシはアンタに火を出せっつったのよぉ? アンタ、何を横着してんのーぉ?」
    「……すいません、オッドさん」
     クラウンは殺された幹部のポケットからマッチを取り出し、オッドの煙草に火を点けた。オッドは煙草を吸いながら、首をコキコキと鳴らす。
    「んで、その捜査官ってドコ?」
    「この近くの、ミウラ小倉庫C―13に監禁してます」
    「ふーん。……ちょこーっと、見てみようかしらねーぇ」
    「えっ?」
     オッドは煙草を口にくわえながら、ニヤニヤと笑い出す。
    「いい男っぽいしぃ」
    「は?」
    「公安の警部補なんでしょーぉ? じゃ、それなりにやり手なわけだしぃ、なかなかイジメがいがあるかもねーぇ、うふふふっ」
     オッドはふらりと立ち上がり、倉庫の外へと向かう。
    「ちょ、ちょっとオッドさん、もうすぐウィアードが来る……」「あ?」
     くるりと振り向いたオッドは、非常にだるそうな目を向けてくる。
    「なぁに? アタシに何か、ご意見?」
    「……いえ」
     オッドは「ふん」と鼻を鳴らし、そのまま出て行った。

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    2016.07.05 修正
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