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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 5;緑綺星」
    緑綺星 第3部

    緑綺星・暗星譚 2

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    シュウの話、第94話。
    潜み、眩まし、そして瞬く綺羅星たち。

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    2.
     一聖にミッドランドへ連れ込まれた時点で、七瀬・海斗親子が請けた大野博士暗殺依頼の期限までは、残り2日となっていた。その2日強の――依頼を放棄したことに白猫党が気付くまでの――間に、一聖と天狐はジャンニ、エヴァ、そして海斗の装備を整え、バックアップ体制を確立することにした。

     まず、ジャンニについて。
    「勿論やるコトはスーツのチューンナップだ」
    「ソレもバッキバキにだ、な」
     天狐たち二人でパワードスーツの設計段階から徹底的な見直しを行い、時間内に可能な限り改良に改良を重ねた結果、総合的な出力は元々ジャンニが使用していた時点から3.5倍以上に増加。それに加え、大幅な機能追加も行われた。
    「魔力バッテリーに『オリハルコンMS-216』を搭載したコトで、通常運用での稼働時間は1500倍になった。普通に飛ぶくらいなら、世界3周半は楽勝だぜ? 加えて、コレまで実現不可能だった超高出力攻撃も使えるようになった。その気になりゃ、ミサイルだってパンチで跳ね返せるぜ」
    「……ミサイルのこと根に持っとるやろ、カズちゃん」
    「そりゃそーだろ。二度とあんなふざけた真似できねーようにしてやる」

     続いて、エヴァについて。当初、ジャンニと同様のパワードスーツを提案したが――。
    「断る。あんな全身金属甲冑では、まともに動けない」
    「そーゆーなって、ボディスーツくらいにしといてやるからさ。むしろ話聞いてる限りだと、お前さんは格闘術とか肉弾戦、白兵戦向けっぽいから、そっちの方がいーだろーし」
    「……ふむ。最低限、防刃・防弾は可能なように頼む」
    「オレの作った防具がその程度でまとまるワケねーだろ。防弾どころか、ロケット弾だって凌げるさ」
     もちろんこれは一聖の大言壮語ではなく、実際に彼女は――ジャンニのスーツ改良の片手間に――作って見せ、エヴァを驚かせた。
    「なんだこのスーツ……!? 今まで着ていた戦闘服より軽いぞ。その上、布みたいに伸縮性があるし、でも硬質感も確かにあるし、……一体何でできてるんだ?」
    「試しに撃つか斬るかしてみろよ。ビクともしないぜ」
    「いや……着た感じで分かる。これはモノが全然違う」

     このボディスーツは、海斗にも同じものが支給された。
    「お前さんも白兵戦タイプだから、こっちの方が都合いいだろ。ついでに刀も打っといたぜ。神器化処理も施してあるから、お前さんの腕と気合次第で文字通り、岩でも鉄でも何でも斬れる」
    「……なんかのチームみたい」
     ぼそっとつぶやいた海斗に、ちょうど部屋にいたシュウが笑い出した。
    「わたしもそー思ってました。みんな黒地に金色ラインの全身スーツですもん。カズちゃんとテンコちゃんの趣味出し過ぎですよー」
    「いーじゃん、チーム一聖」
     一聖がそう返したところで、天狐が目をむく。
    「なに勝手にお前一人のチームにしてんだよ。オレも絡んでるだろーがよ」
    「最初にスチフォけなしたクセに、いけしゃあしゃあとチームに入って来てんじゃねーよ」
    「んなコトゆーなら『オリハルコン』抜くぞ。アレ錬成したのオレだぜ」
    「そもそも白猫党の基地突き止めたのがオレだろーがよ」
    「あ・ね・さ・ん・た・ち・ぃ?」
     睨み合った一聖と天狐の間に、鈴林が割って入った。
    「どっちのチームとか、みんなは姉さんたちの所有物じゃないでしょっ? チームにするんならみんなの意見も聞かなきゃでしょっ」
    「チーム……作るのか? 確かに目的は一緒ではあるが」
     苦い顔をしているエヴァの横で、ジャンニが自分のスーツを眺めながらぼそっとつぶやく。
    「これスチフォって略してんねやな、カズちゃん」
    「……まとまり無くない?」
     二人を一瞥した海斗に突っ込まれるが、天狐はフンと鼻を鳴らす。
    「克一門よりマシだ。親父なんか、何回弟子に殺されかけたか」
    「お前がソレ言うのかよ」
    「お前こそ言う権利あんのかよ」
    「もー、ケンカしないでってばっ。……じゃーさ、シュウ! あなたが決めてあげてよっ」
    「え? わたしがですか?」
     きょとんとするシュウに、鈴林が首を振りながら返す。
    「このままじゃ何にも話が進まないもんっ。それにシュウなら、ここにいる人の中で一番、気楽にひょいっと決めてくれそうな性格だしっ」
    「なーんか軽くけなされてるよーな気もしますけどー……まーいいです」
     シュウはジャンニ、エヴァ、そして海斗の前をうろうろと歩き回り、やがてぺちん、と両手を合わせた。
    「金色ラインがキラキラしてますから、星なんていいかもですね。そーですねー……綺羅星(ティンクルスター)……チーム・ティンクルなんてどーでしょ?」
    「おゆうぎ会みたいなネーミングやな」
     ジャンニに突っ込まれ、シュウは口をへの字に曲げる。
    「どーせお子ちゃまセンスですよーだ」
    「だが星ってモチーフは悪くないな」
     一聖がそう返し、腕を組んで思案にふける。
    「星……黒い星……見えない星(Hidden Star)……隠れた星(Secret Star)……ふむ。んじゃ、七等星(Seventh Mag)ってのはどうだ? ふつーの人間に見えるギリギリが六等星だが、お前さんたちはソレより下――色んな事情から、オモテで輝くコトをやめたヤツらだ。
     だがいなくなったワケじゃない。見えはしないが確かにソコにいる、隠れた星々――お前さんたちはセブンス・マグだ」
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