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    「双月千年世界 5;緑綺星」
    緑綺星 第3部

    緑綺星・暗星譚 3

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    シュウの話、第95話。
    天狐と一聖のミーティング。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    3.
    「一騎当千の3人なら基地でも要塞でも陥落させられる」と豪語したものの――一聖と天狐は互いの顔をにらみ合い、思案に暮れていた。
    「で、いい案思いついたかよ?」
    「思いついてたらお前の顔じーっと眺めてるもんか。お前もだろ?」
    「……だよなー」
     白猫党の秘密基地があると思われる採石場跡の衛星写真を二人で眺めていたが、その攻略方法を考えあぐねていたのである。
    「もっぺん最初から考えてみるか……。ま、正面突破ってのは愚策もいいトコだわな。エヴァから『あの話』は聞いてはいるけども」
    「MPS計画だろ? ソレがマジだとしても、敵の陣容が分からない状況で闇雲に敵陣へ突っ込んだら、命がいくつあっても足りゃしねーよ。地下施設だから忍び込むにもルートが限られるし、その限られたルートは全部厳重に守られてるだろーし」
    「のべつ幕無しに空対地攻撃なんてのもナンセンスだ。対策してねーワケがねーしな」
    「スチフォに搭載した装備なら攻撃自体はできないワケじゃねーが、CIWS(近接防空迎撃システム)かなんかをカマされたら、流石に防御性能を上回っちまう。『ミサイルも跳ね返せるぜ』とは言ったが、防空システム相手じゃ1発、2発どころじゃないからな」
    「辛うじて装甲が耐えられたとしても、中のジャンニがドロドロのビーフシチューになっちまうぜ」
    「ネットから基地内のシステムをハックして撹乱するってのも不可能だ。軍用の独立回線使ってるから、侵入すら不可能だ。現地に乗り込めばスチフォにリンクさせてハックできるかも知れねーけど」
    「結局ジャンニが人身御供になるプランしかねーじゃねーかよ」
    「ま、ドレも論外だな。うーん……」
     と、封筒を持った大野博士が、申し訳無さそうに部屋を訪ねてきた。
    「すみません、あの、お邪魔します。役所から『いくらテンコちゃんでもサインくらいちゃんと書いて提出して下さいって言っといて下さい』って言われまして……」
    「んあ? ……あれ、書いてなかったか? 悪いな」
     天狐が書類を確認している間、大野博士は所在なさげにパソコンのモニタを眺めている。と、「ふーん」とうなったのを見て、一聖が尋ねた。
    「なんだよ?」
    「やっぱりあるんだなって」
    「なにがだよ?」
    「えーと……これ、昨日言ってた白猫党の基地があるかもってところですよね。じゃあ、それが原因なのかなぁ……。えーとですね、採石場『跡』ですから、数年、あるいは十数年以上は放置されてるわけですよね。となると雑草や苔が生えてきてしまうわけなんですけども、まあ、地中に人間が生活可能な基地があると言うことであれば、恐らくその地上の大部分は植生に適した温度になるんじゃないかと思うんですけど、見事に建物の形に沿ってくっきり生えてますね」
    「なに?」
     言われて一聖は、モニタに視線を向ける。
    「……言われてみりゃ、確かに緑色のトコとそーじゃねートコの境がくっきりだな。ってコトは地表からそんなに離れてねーのか」
    「建材として一般的に使われるコンクリートは熱伝導率および熱容量が非常に高いですから、真下に熱源があればどんどん熱が交換・放出されますし、上に砂や石があれば保温性も確保できます」
    「ま、採石場跡ってコトにしてるなら、そりゃ上には石並べてるわな。つまり岩盤浴と同じよーな環境になってるってワケか」
    「あと、多分この辺りに排気口があるみたいですね」
     そう言って、大野博士はモニタのある部分を指さした。
    「植物ももちろん生き物ですから、極端な暑さ寒さには弱いんです。で、排気口って排熱の役割も果たしますよね。軍事用の地下施設ですから発電機なんかもあるでしょうし、大量の熱が放出されていると考えられます。ですから結果としてそこだけ多分、50度とか60度とか、すごく高温になってしまうんでしょうね、流石に植物の育成に適さない温度なので……」
    「あー、なるほどな。ココだけぽつんと生えてねーってコトは、……!」
     突然、一聖は天狐の肩を揺する。
    「天狐! 今ピンと来たんだが、こんなのはどーだ!?」
    「わっ、……いきなり肩つかむなよ!? サインしくじんじゃねーか!」
    「あ、悪り」
    「あっぶねーな、もう。……で、なんだよ」
    「今、大野のおっさんが言ったヤツだよ。排気をいじりゃ……」
    「あぁ? ……なるほど、緊急事態ってワケか」
     合点がいったらしい天狐に対し、大野博士はきょとんとするばかりだった。
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