「双月千年世界 5;緑綺星」
緑綺星 第3部
緑綺星・暗星譚 7
シュウの話、第99話。
AI迎撃システム;外。
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7.
(流石に軍用車なだけはあるなぁ。あんだけごろんごろん転がったのに、まだ原形留めとるわ)
うっすら煙を上げるLAVの前に着地し、ジャンニは声をかけた。
《生きとるかー? おーい》
何度か呼びかけるが、返事は一向に返ってこない。
(やってもーた? ……マジで?)
ジャンニの背に冷たいものが走る。それを検知したらしく、一聖からの通信が入る。
《どうした? 心拍数いきなり140超えたぞ?》
《あ、いや、その、……ボスが乗っとったらしいクルマ追っかけたら、そいつ事故りよってん。声かけてんねんけど、返事がなくて》
《死んだのか?》
《し、死んでもーた? ほな、俺が殺したことになんのやろか》
《落ち着け。外からスキャンできるだろ?》
《あ、……せやった》
言われてジャンニは、スーツのカメラを操作する。
(えーと……赤外線? でええかな。……アカン、エンジン周りが真っ赤っかでよお分からんわ。ほな音声センサーは、……おっ)
センサーに心拍らしき波が走っているのを確認し、ジャンニは安堵のため息を漏らした。
《うわー……、生きとった。どないしよか思たわ》
《安心してる場合じゃないだろ。放っといたらマジで死ぬかも知れねーだろーが》
《あ、せやな》
横倒しになったLAVの上に乗り、運転席のドアを開けようとする。
《よっ……と、……カギかかっとるな。慌ててたやろうに律儀な奴やな》
《エヴァの話じゃ設備はAI管理されてるって話だから、自動で閉まったんだろ。いいからブチ破っちまえ》
《へいへーい》
ジャンニは腕を振り上げ、ドアの窓ガラスを殴りつける。ところがひびこそ入ったものの、破ることができない。
《ありゃ?》
《そりゃ装甲車だからな。一発で割れたら話にならねーだろ。とは言えもう2、3発殴ったら流石に……》
と、一聖をさえぎるように、LAVの方から機械的な声が聞こえてくる。
「攻撃を確認しました。敵性対象と断定します。搭乗者を感知しました。搭乗者は至急反撃態勢を執って下さい。……搭乗者の反応がありません。自動防衛モードを起動します」
ばしゅっ、と音が響き、その直後――ジャンニは爆発音と共に弾かれた。
LAVから10メートル近く吹っ飛ばされ、ジャンニは近くの木に激突する。
《なっ……なんや今の!?》
もちろん――一聖がいつも豪語している通り――ダメージを受けることはなかったものの、ジャンニは面食らっていた。
《誰もおらんかったやんか!? 一体どこから……何が!?》
《落ち着け! 今解析してる。……さっきのはロケット弾だ。LAVから発射されてる。LAVからなんか聞こえてたな。どうやら基地のAIとリンクしてるか、もしくはLAVん中にAIが仕込まれてるらし……》
一聖と話している間に、きいいい……、と風切り音が聞こえてくる。
《ま、また来よった!》
《落ち着けって。さっきも無事だったろーが。……だが面倒だな。基地からソコまで1キロくらい離れてるはずだろ?》
《せやな》
スーツに搭載されたカウンターフレアで飛んでくるロケット弾を迎撃しつつ、ジャンニは一聖と考察を重ねる。
《なのにAI制御が生きてるとなると、衛星通信かなんかでリンクしてんのか、ソレとも車輌制御専用の別物か……。前者だとリンク解除は事実上不可能だ。周囲一帯に妨害電波出すって手もなくはないが、ソレをやるとお前さんまで影響受けるからな。後者ならLAVん中にAIの処理装置があるだろーから、ソレを破壊すりゃいい。……が、コレはあんま考えにくいな》
《っちゅうと?》
《さっきから攻撃が正確すぎる。離れたお前さんにポンポン撃ち込んでるが、カウンター当てなきゃ全弾命中してるだろう。横倒しになったLAVのカメラやセンサーでお前さんの位置を割り出すのはまず不可能だ。衛星か、あるいは基地のセンサーで位置を割り出してなきゃ、そんな芸当ができるワケねー。
よって結論は前者の可能性しかねーってワケだ》
《ほなどないするんや? 基地のAIを破壊したらええんか?》
《ソレが一番シンプルだろう。LAVは一旦置いといて、基地へ戻れ》
《了解!》
ジャンニは空高く飛び、基地へと引き返した。
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AI迎撃システム;外。
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(流石に軍用車なだけはあるなぁ。あんだけごろんごろん転がったのに、まだ原形留めとるわ)
うっすら煙を上げるLAVの前に着地し、ジャンニは声をかけた。
《生きとるかー? おーい》
何度か呼びかけるが、返事は一向に返ってこない。
(やってもーた? ……マジで?)
ジャンニの背に冷たいものが走る。それを検知したらしく、一聖からの通信が入る。
《どうした? 心拍数いきなり140超えたぞ?》
《あ、いや、その、……ボスが乗っとったらしいクルマ追っかけたら、そいつ事故りよってん。声かけてんねんけど、返事がなくて》
《死んだのか?》
《し、死んでもーた? ほな、俺が殺したことになんのやろか》
《落ち着け。外からスキャンできるだろ?》
《あ、……せやった》
言われてジャンニは、スーツのカメラを操作する。
(えーと……赤外線? でええかな。……アカン、エンジン周りが真っ赤っかでよお分からんわ。ほな音声センサーは、……おっ)
センサーに心拍らしき波が走っているのを確認し、ジャンニは安堵のため息を漏らした。
《うわー……、生きとった。どないしよか思たわ》
《安心してる場合じゃないだろ。放っといたらマジで死ぬかも知れねーだろーが》
《あ、せやな》
横倒しになったLAVの上に乗り、運転席のドアを開けようとする。
《よっ……と、……カギかかっとるな。慌ててたやろうに律儀な奴やな》
《エヴァの話じゃ設備はAI管理されてるって話だから、自動で閉まったんだろ。いいからブチ破っちまえ》
《へいへーい》
ジャンニは腕を振り上げ、ドアの窓ガラスを殴りつける。ところがひびこそ入ったものの、破ることができない。
《ありゃ?》
《そりゃ装甲車だからな。一発で割れたら話にならねーだろ。とは言えもう2、3発殴ったら流石に……》
と、一聖をさえぎるように、LAVの方から機械的な声が聞こえてくる。
「攻撃を確認しました。敵性対象と断定します。搭乗者を感知しました。搭乗者は至急反撃態勢を執って下さい。……搭乗者の反応がありません。自動防衛モードを起動します」
ばしゅっ、と音が響き、その直後――ジャンニは爆発音と共に弾かれた。
LAVから10メートル近く吹っ飛ばされ、ジャンニは近くの木に激突する。
《なっ……なんや今の!?》
もちろん――一聖がいつも豪語している通り――ダメージを受けることはなかったものの、ジャンニは面食らっていた。
《誰もおらんかったやんか!? 一体どこから……何が!?》
《落ち着け! 今解析してる。……さっきのはロケット弾だ。LAVから発射されてる。LAVからなんか聞こえてたな。どうやら基地のAIとリンクしてるか、もしくはLAVん中にAIが仕込まれてるらし……》
一聖と話している間に、きいいい……、と風切り音が聞こえてくる。
《ま、また来よった!》
《落ち着けって。さっきも無事だったろーが。……だが面倒だな。基地からソコまで1キロくらい離れてるはずだろ?》
《せやな》
スーツに搭載されたカウンターフレアで飛んでくるロケット弾を迎撃しつつ、ジャンニは一聖と考察を重ねる。
《なのにAI制御が生きてるとなると、衛星通信かなんかでリンクしてんのか、ソレとも車輌制御専用の別物か……。前者だとリンク解除は事実上不可能だ。周囲一帯に妨害電波出すって手もなくはないが、ソレをやるとお前さんまで影響受けるからな。後者ならLAVん中にAIの処理装置があるだろーから、ソレを破壊すりゃいい。……が、コレはあんま考えにくいな》
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《さっきから攻撃が正確すぎる。離れたお前さんにポンポン撃ち込んでるが、カウンター当てなきゃ全弾命中してるだろう。横倒しになったLAVのカメラやセンサーでお前さんの位置を割り出すのはまず不可能だ。衛星か、あるいは基地のセンサーで位置を割り出してなきゃ、そんな芸当ができるワケねー。
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