「双月千年世界 5;緑綺星」
緑綺星 第3部
緑綺星・暗星譚 8
シュウの話、第100話。
AI迎撃システム;内。
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8.
基地内を奥へと進んでいたエヴァと海斗は、ほどなく目的の場所である倉庫前に到着した。
「ここ?」
「兵士の話が本当ならな。とは言えあの状況でウソをついても仕方ない。間違いないだろう」
エヴァは倉庫の扉をノックし、声をかける。
「ミソノ、中にいるのか? 助けに来たぞ。弟も一緒だ」
「美園! 僕だ!」
海斗も声を張り上げて呼びかけたが、返事はない。
「酸素がかなり減ってるし、気絶してるかも知れないな」
「ど、どうするの? どうしたらいい?」
「ふむ……」
エヴァは倉庫の扉をもう一度叩き、サイドバッグを探る。
「テンコちゃんからプラスチック爆薬をもらってきてる。これで扉を破壊しよう」
「美園にケガさせないでよ」
「安心しろ。この手の工作活動は慣れてる」
エヴァは取り出した爆薬を扉の隙間に仕掛け、海斗の手を引く。
「離れてろ。少量ではあるが、近くにいたら鼓膜が破れる。破片も危険だ」
「う、うん」
十分に距離を取ったところで、エヴァは爆薬を起爆させる。パン、と甲高い音を立て、鍵が木端微塵になった。
「ほ、本当に大丈夫!? 美園に何かあったら本当に許さないよ!?」
「大丈夫だと言ってるだろう。君は家族のこととなると本当に落ち着きがないな」
「そりゃそうだよ」
海斗は心配していたものの、確かにエヴァの言う通り、扉本体は原形を留めていたし、倉庫内に入っても、目立った影響は見られなかった。
「……美園! 美園!?」
が、倉庫内を探しても、美園の姿はどこにも無い。
「あ、あれ? 倉庫って……倉庫って言ってたじゃん!?」
「ふーむ……?」
二人して首をかしげていると――二人の頭上から、機械的なアナウンスが聞こえてきた。
《基地内で爆発を感知しました。未認証の人間を感知しました。侵入者による破壊工作と判断されました。近隣の兵員に排除を命令します。……基地内に兵員を確認できません。自動防衛モードを起動します》
間を置いて、廊下の奥からがしゃん、がしゃんと、金属質な足音が響いてきた。
目の前に現れた四足歩行のドローンに、海斗は表情を硬くする。
「あれ……何?」
「さっきのアナウンス通りだろう。基地の防衛ドローンだ」
話している間に、ドローンの背中部分に装備されていた機銃が二人の方を向く。
「来るぞ! 逃げろ!」
機銃が火を吹くと同時に揃って身を翻し、二人は廊下を駆けた。
「走れ! 走れ、カイト!」
「走ってるよ!」
が、全力疾走にもかかわらず、二人のすぐ背後からがしゃん、がしゃんと機械音が響く。
「埒が明かない! カイト、耳を塞げ!」
「えっ、う、うん」
目を白黒させつつも、海斗は素直に自分の長い耳を塞ぐ。と同時に、エヴァはサイドバッグから手榴弾を取り出し、後方に投げ込む。廊下の角からドローンが現れたと同時に手榴弾が破裂し、ドローンは仰向けになって壁に叩き付けられた。
「やれた?」
「いや、背中の機銃は吹っ飛んだが、原形は留めている。まだ動きそうだ、……と言うか動いてるな。この程度じゃ無力化は無理か」
とは言えドローンが立ち上がるまでにはいくぶん間があり、その隙に二人は廊下を抜け、分厚い扉で守られた区域に入った。
「ここは……駐車場か。と言うことは、ぐるりと回って入口近くまで戻って来てしまったか」
「ダメじゃん。まだ美園助けてないし」
「と言って我々の装備であのドローンを何とかできる可能性は少ない。……いや」
と、エヴァは近くにあった軍用車輌に目を留めた。
「備え付けの重機関銃なら何とかできるか……?」
「僕の刀もある」
海斗はそう言って刀を抜き、刀身に火を灯す。それを横目で眺めつつ、エヴァは車の荷台に乗り込んだ。
「私と戦った時にも、君は刀を燃やしていたな? それに何か意味があるのか?」
「火の魔術剣だよ。刀の間合い以上の攻撃レンジがある」
「魔術? いまどき魔術を電子システムに組み込んでじゃなく、直に攻撃手段として使うとは。幼い顔のわりにレトロな奴だな、君は」
「でも威力は高い。僕の腕なら鉄を斬れる。この刀も相当な業物みたいだし」
「……はっきり言うぞ。期待はしてない」
エヴァは荷台に固定されていた機銃のロックを外し、入ってきた扉に狙いを定める。海斗も車輌の陰に潜み、迎撃体勢を取る。まもなく扉が開き、ドローンが駐車場に現れた。
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AI迎撃システム;内。
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基地内を奥へと進んでいたエヴァと海斗は、ほどなく目的の場所である倉庫前に到着した。
「ここ?」
「兵士の話が本当ならな。とは言えあの状況でウソをついても仕方ない。間違いないだろう」
エヴァは倉庫の扉をノックし、声をかける。
「ミソノ、中にいるのか? 助けに来たぞ。弟も一緒だ」
「美園! 僕だ!」
海斗も声を張り上げて呼びかけたが、返事はない。
「酸素がかなり減ってるし、気絶してるかも知れないな」
「ど、どうするの? どうしたらいい?」
「ふむ……」
エヴァは倉庫の扉をもう一度叩き、サイドバッグを探る。
「テンコちゃんからプラスチック爆薬をもらってきてる。これで扉を破壊しよう」
「美園にケガさせないでよ」
「安心しろ。この手の工作活動は慣れてる」
エヴァは取り出した爆薬を扉の隙間に仕掛け、海斗の手を引く。
「離れてろ。少量ではあるが、近くにいたら鼓膜が破れる。破片も危険だ」
「う、うん」
十分に距離を取ったところで、エヴァは爆薬を起爆させる。パン、と甲高い音を立て、鍵が木端微塵になった。
「ほ、本当に大丈夫!? 美園に何かあったら本当に許さないよ!?」
「大丈夫だと言ってるだろう。君は家族のこととなると本当に落ち着きがないな」
「そりゃそうだよ」
海斗は心配していたものの、確かにエヴァの言う通り、扉本体は原形を留めていたし、倉庫内に入っても、目立った影響は見られなかった。
「……美園! 美園!?」
が、倉庫内を探しても、美園の姿はどこにも無い。
「あ、あれ? 倉庫って……倉庫って言ってたじゃん!?」
「ふーむ……?」
二人して首をかしげていると――二人の頭上から、機械的なアナウンスが聞こえてきた。
《基地内で爆発を感知しました。未認証の人間を感知しました。侵入者による破壊工作と判断されました。近隣の兵員に排除を命令します。……基地内に兵員を確認できません。自動防衛モードを起動します》
間を置いて、廊下の奥からがしゃん、がしゃんと、金属質な足音が響いてきた。
目の前に現れた四足歩行のドローンに、海斗は表情を硬くする。
「あれ……何?」
「さっきのアナウンス通りだろう。基地の防衛ドローンだ」
話している間に、ドローンの背中部分に装備されていた機銃が二人の方を向く。
「来るぞ! 逃げろ!」
機銃が火を吹くと同時に揃って身を翻し、二人は廊下を駆けた。
「走れ! 走れ、カイト!」
「走ってるよ!」
が、全力疾走にもかかわらず、二人のすぐ背後からがしゃん、がしゃんと機械音が響く。
「埒が明かない! カイト、耳を塞げ!」
「えっ、う、うん」
目を白黒させつつも、海斗は素直に自分の長い耳を塞ぐ。と同時に、エヴァはサイドバッグから手榴弾を取り出し、後方に投げ込む。廊下の角からドローンが現れたと同時に手榴弾が破裂し、ドローンは仰向けになって壁に叩き付けられた。
「やれた?」
「いや、背中の機銃は吹っ飛んだが、原形は留めている。まだ動きそうだ、……と言うか動いてるな。この程度じゃ無力化は無理か」
とは言えドローンが立ち上がるまでにはいくぶん間があり、その隙に二人は廊下を抜け、分厚い扉で守られた区域に入った。
「ここは……駐車場か。と言うことは、ぐるりと回って入口近くまで戻って来てしまったか」
「ダメじゃん。まだ美園助けてないし」
「と言って我々の装備であのドローンを何とかできる可能性は少ない。……いや」
と、エヴァは近くにあった軍用車輌に目を留めた。
「備え付けの重機関銃なら何とかできるか……?」
「僕の刀もある」
海斗はそう言って刀を抜き、刀身に火を灯す。それを横目で眺めつつ、エヴァは車の荷台に乗り込んだ。
「私と戦った時にも、君は刀を燃やしていたな? それに何か意味があるのか?」
「火の魔術剣だよ。刀の間合い以上の攻撃レンジがある」
「魔術? いまどき魔術を電子システムに組み込んでじゃなく、直に攻撃手段として使うとは。幼い顔のわりにレトロな奴だな、君は」
「でも威力は高い。僕の腕なら鉄を斬れる。この刀も相当な業物みたいだし」
「……はっきり言うぞ。期待はしてない」
エヴァは荷台に固定されていた機銃のロックを外し、入ってきた扉に狙いを定める。海斗も車輌の陰に潜み、迎撃体勢を取る。まもなく扉が開き、ドローンが駐車場に現れた。
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どうにか100話到達。
既に2年かけてしまっていますが、何とか筆を進めています。
思えば「蒼天剣」の連載終了が2009年末。
あれからもう13年経過しており、作者の僕自身、
話の細かい部分を忘れてしまっています。
当初は10年くらいで、構想していた内容をすべて書ききれるかなと予想していたんですが、
書いてると段々話のアイデアが浮かび、「蒼天剣」時点で構想の5倍くらいに膨らんでしまいました。
他の各話も書けば書くほどアレもコレもと取り込んでしまい、
恐らくは当初の10倍、20倍くらいのボリュームになっています。
「緑綺星」も今は遅筆で内容が少ないですが、
火が点き始めたら大ボリュームになるんじゃないかと思います。きっと。
どうにか100話到達。
既に2年かけてしまっていますが、何とか筆を進めています。
思えば「蒼天剣」の連載終了が2009年末。
あれからもう13年経過しており、作者の僕自身、
話の細かい部分を忘れてしまっています。
当初は10年くらいで、構想していた内容をすべて書ききれるかなと予想していたんですが、
書いてると段々話のアイデアが浮かび、「蒼天剣」時点で構想の5倍くらいに膨らんでしまいました。
他の各話も書けば書くほどアレもコレもと取り込んでしまい、
恐らくは当初の10倍、20倍くらいのボリュームになっています。
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