「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第5部
蒼天剣・非道録 4
晴奈の話、第285話。
卑劣な罠。
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4.
「ガヤルド大倉庫に、ね」
フォルナと小鈴から話を聞いたジュリアは、眼鏡を外して眉間を揉む。
「なかなか信憑性の高そうな情報ね」
「では、すぐに向かわせて……」
「でも、タイミングが悪かったわね。
ついさっき、編成したチームを港湾区の北西側に向かわせちゃったのよ。……ガヤルド大倉庫は南東側。正反対の場所に行ってるのよ」
ジュリアの言葉に、二人の顔色が変わる。
「何ですって?」「どーにかなんないの?」
「増員して向かわせようにも、今は人員に空きが無いの」
「んじゃまさか、このまま放っておくつもり?」
突っかかる小鈴に、ジュリアは目をつぶって首を振る。
「まさか。……私が装備を整えて直接向かうわ。それにフェリオ君、エラン君も同行するし、民間人とは言えコウさんたちが向かっているなら、心強いわ。
任せておいてコスズ、それからフォルナさんも」
「……それなら、安心ですわね」
「ええ、早速準備するから、その、……本当に悪いけど、この辺で失礼するわね」
ジュリアは一礼し、そそくさと席を立った。小鈴は憮然とした顔で、ジュリアの態度を非難する。
「何、アイツ? すっごい冷たくなっちゃったわね。昔はもうちょい……」
「まあ、お仕事がお忙しいのでしょう。……ともかく、今はそんなことを論じている暇はありませんわ。わたくしたちも忙しい身ですし」
「そーね。さっさと向かいましょ」
フォルナたちは公安局を後にし、港湾区へと急いだ。
ドカドカと怒りに満ちた足音を立てて、ロウはガヤルド倉庫に飛び込んだ。
「クラウぅぅぅぅぅン! 出て来いッ!」
倉庫の窓がびりびりと震えるほどの声で、クラウンを呼ぶ。
「よう、ウィアード」
ロウから50メートルほど離れたところに、クラウンが現れた。
「てめえ……! 俺の家族をどうしやがった!」
「お前が表彰式でヘラヘラしてる間に、ボロ教会からみぃんな、かっさらわせてもらったぜ。あと、闘技場にもガキが2匹いやがったから、そいつらもな。
まあ、安心しろや。まだ殺してねえからな」
「殺してみろや、クラウン」
ロウは三節棍を構え、クラウンににじり寄る。
「その時はてめーの命も、無えと思えよ」
「へっ、俺様がお前なんぞに殺されると思うのかよ」
「こないだボロ負けした奴が、何を偉そうに……!」
ロウは唾を吐き、クラウンをにらみつける。
一方のクラウンも、斜に構えてロウをにらみつける。
「まあ、大会ってのはルールに縛られてるもんだからな。ルールに護られたお前にゃ、そりゃ勝ち目なんぞあるもんか。
でもな、ウィアード。俺たちみてえな無法者は、手を汚せば汚すほど強くなるんだぜ?」
クラウンがそっと右腕を挙げる。その手には大口径のライフルが握られていた。
「闘技場じゃ禁止されてたがよ、こいつで頭撃ち抜けば、誰だろうが一発であの世行きよ」
「ヘッ、んなもん当たると思うのかよ」
ロウは三節棍を振り上げ、クラウンに飛びかかった。
「馬鹿が、真正面から……」
クラウンはニヤリと笑い、ライフルを構えた。
が、目の前からロウの姿が消える。
「……! 上か!」
クラウンは瞬時に上を向き、ライフルの引き金を引く。ドバ、と言う大量の火薬が弾け、噴き出す音が倉庫にこだまする。
だがロウは空中で体をひねって弾をかわしており、ロウの背後、倉庫の壁に大穴が開くだけに留まった。
「チッ……」
クラウンは舌打ちしながらボルトを引いて弾を装填し、もう一発発射するが、これも当たらない。
「りゃああッ!」
ロウはクラウンの間近に迫り、三節棍の両端を構え、真ん中の棍をクラウンのあご目がけて叩き付けた。
「うご……っ」
ポキポキと音を立て、クラウンの下奥歯が2本折れる。
「銃だろーが魔術だろーが、そんなもんがオレに当たると思ってんのかよ、このデブ熊」
「……っひ、ひひひ」
クラウンは後ずさり、銃を下げた。
「思ってるぜ、ひひひひ」
「あぁ……?」
クラウンは顔を挙げ、ニヤリと笑う。
次の瞬間、いくつもの破裂音と共に、ロウの体中から血しぶきが上がった。
「な、ん、……っ?」
ロウは三節棍を落とし、ガクリと膝を着く。
「何を目ぇ丸くしてやがる? まさか、この俺様が一対一で闘うとでも思ってたのか?」
クラウンは馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
「はっ、頭悪いなぁ、お前。こんなことも予想できなかったのかよ?」
「て、めえ……!」
ロウは憤怒と侮蔑に満ちた目で、クラウンをにらむ。
だが立ち上がることはできず、ロウはその場に倒れ伏した。
「この、クソ野郎め……!」
「何とでも言え、負け犬め。
……さーて、まだオッド先生は戻って来ないが、折角こうして来てくれたんだ。たっぷり、楽しませてもらうとするか。ひひっ、ひひひひっ……」
倉庫のいたるところから、硝煙を上げた銃を持った、クラウンの手下たちが現れた。
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卑劣な罠。
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「ガヤルド大倉庫に、ね」
フォルナと小鈴から話を聞いたジュリアは、眼鏡を外して眉間を揉む。
「なかなか信憑性の高そうな情報ね」
「では、すぐに向かわせて……」
「でも、タイミングが悪かったわね。
ついさっき、編成したチームを港湾区の北西側に向かわせちゃったのよ。……ガヤルド大倉庫は南東側。正反対の場所に行ってるのよ」
ジュリアの言葉に、二人の顔色が変わる。
「何ですって?」「どーにかなんないの?」
「増員して向かわせようにも、今は人員に空きが無いの」
「んじゃまさか、このまま放っておくつもり?」
突っかかる小鈴に、ジュリアは目をつぶって首を振る。
「まさか。……私が装備を整えて直接向かうわ。それにフェリオ君、エラン君も同行するし、民間人とは言えコウさんたちが向かっているなら、心強いわ。
任せておいてコスズ、それからフォルナさんも」
「……それなら、安心ですわね」
「ええ、早速準備するから、その、……本当に悪いけど、この辺で失礼するわね」
ジュリアは一礼し、そそくさと席を立った。小鈴は憮然とした顔で、ジュリアの態度を非難する。
「何、アイツ? すっごい冷たくなっちゃったわね。昔はもうちょい……」
「まあ、お仕事がお忙しいのでしょう。……ともかく、今はそんなことを論じている暇はありませんわ。わたくしたちも忙しい身ですし」
「そーね。さっさと向かいましょ」
フォルナたちは公安局を後にし、港湾区へと急いだ。
ドカドカと怒りに満ちた足音を立てて、ロウはガヤルド倉庫に飛び込んだ。
「クラウぅぅぅぅぅン! 出て来いッ!」
倉庫の窓がびりびりと震えるほどの声で、クラウンを呼ぶ。
「よう、ウィアード」
ロウから50メートルほど離れたところに、クラウンが現れた。
「てめえ……! 俺の家族をどうしやがった!」
「お前が表彰式でヘラヘラしてる間に、ボロ教会からみぃんな、かっさらわせてもらったぜ。あと、闘技場にもガキが2匹いやがったから、そいつらもな。
まあ、安心しろや。まだ殺してねえからな」
「殺してみろや、クラウン」
ロウは三節棍を構え、クラウンににじり寄る。
「その時はてめーの命も、無えと思えよ」
「へっ、俺様がお前なんぞに殺されると思うのかよ」
「こないだボロ負けした奴が、何を偉そうに……!」
ロウは唾を吐き、クラウンをにらみつける。
一方のクラウンも、斜に構えてロウをにらみつける。
「まあ、大会ってのはルールに縛られてるもんだからな。ルールに護られたお前にゃ、そりゃ勝ち目なんぞあるもんか。
でもな、ウィアード。俺たちみてえな無法者は、手を汚せば汚すほど強くなるんだぜ?」
クラウンがそっと右腕を挙げる。その手には大口径のライフルが握られていた。
「闘技場じゃ禁止されてたがよ、こいつで頭撃ち抜けば、誰だろうが一発であの世行きよ」
「ヘッ、んなもん当たると思うのかよ」
ロウは三節棍を振り上げ、クラウンに飛びかかった。
「馬鹿が、真正面から……」
クラウンはニヤリと笑い、ライフルを構えた。
が、目の前からロウの姿が消える。
「……! 上か!」
クラウンは瞬時に上を向き、ライフルの引き金を引く。ドバ、と言う大量の火薬が弾け、噴き出す音が倉庫にこだまする。
だがロウは空中で体をひねって弾をかわしており、ロウの背後、倉庫の壁に大穴が開くだけに留まった。
「チッ……」
クラウンは舌打ちしながらボルトを引いて弾を装填し、もう一発発射するが、これも当たらない。
「りゃああッ!」
ロウはクラウンの間近に迫り、三節棍の両端を構え、真ん中の棍をクラウンのあご目がけて叩き付けた。
「うご……っ」
ポキポキと音を立て、クラウンの下奥歯が2本折れる。
「銃だろーが魔術だろーが、そんなもんがオレに当たると思ってんのかよ、このデブ熊」
「……っひ、ひひひ」
クラウンは後ずさり、銃を下げた。
「思ってるぜ、ひひひひ」
「あぁ……?」
クラウンは顔を挙げ、ニヤリと笑う。
次の瞬間、いくつもの破裂音と共に、ロウの体中から血しぶきが上がった。
「な、ん、……っ?」
ロウは三節棍を落とし、ガクリと膝を着く。
「何を目ぇ丸くしてやがる? まさか、この俺様が一対一で闘うとでも思ってたのか?」
クラウンは馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
「はっ、頭悪いなぁ、お前。こんなことも予想できなかったのかよ?」
「て、めえ……!」
ロウは憤怒と侮蔑に満ちた目で、クラウンをにらむ。
だが立ち上がることはできず、ロウはその場に倒れ伏した。
「この、クソ野郎め……!」
「何とでも言え、負け犬め。
……さーて、まだオッド先生は戻って来ないが、折角こうして来てくれたんだ。たっぷり、楽しませてもらうとするか。ひひっ、ひひひひっ……」
倉庫のいたるところから、硝煙を上げた銃を持った、クラウンの手下たちが現れた。



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