「双月千年世界 5;緑綺星」
緑綺星 第3部
緑綺星・震世譚 2
シュウの話、第104話。
パトロン天狐。
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2.
エヴァと七瀬だけでなく、大野博士やラモンにも根掘り葉掘り話を聞き、一通りの取材を終えたシュウは、早速天狐のPCを借りて動画編集を行っていた。
「んー……やっぱ基地の話はオミットかなー。こっちの主張にあんまり関係ないし」
「しれっと隠しやがったな。ジャーナリストが聞いて呆れるぜ」
後ろでその作業を眺めていた天狐に突っ込まれるが、シュウは意に介していない。
「ジャーナリストだからですよー。主張したいコトは声を大にしてめいっぱい主張しますし、そうじゃないコトはきっぱり言いません。余計な舌禍筆禍は避けるのが鉄則ですもん」
「本当にコイツは図太てーんだよ」
と、有名ドーナツ店の紙箱を手に提げつつ、一聖がやってくる。
「自分の主張のためならマフィアにも喧嘩売るし、ウラの世界のやべーヤツらにも突撃取材かますヤツだから、な。オレとジャンニがケツモチしてなきゃ、そのうちマジで死んじまうぜ」
「えへへー、頼りにしてます」
「じゃなくてよ、もっと自衛と自制しろって言ってんだよ。二十歳超えたいい大人なんだからよ、自分のコトは自分で責任持てっての」
つんけんとした口調でトゲを刺すも、天狐はゲラゲラ笑っている。
「一聖、お前さぁ……いつからそんなに世話焼きキャラになったんだよ?」
「ああん? お前もだろ? じゃなきゃ200年もゼミやらねーだろーが」
「ホントにお二人とも、似た者同士ですねー」
シュウも笑いつつ、動画編集を終える。
「コレで完成。後はエンコード開始、っと。……うわっ、速い!」
「オレが500万エル出してEMDと共同開発して組んだ完全オーダーメイドパソコンだぞ。パフォーマンス低かったらレジにクレーム入れてんぜ」
「レジ? 買ったトコにってコトですか?」
尋ねたシュウに、天狐は自慢げに答えた。
「ちげーよ。レジーナ・サミットっつって、EMDのCEOやってるヤツだよ。ちなみにココの697年上半期卒業生。つまりオレの教え子さ」
「へー。……って言うか自作パソコンのために500万出資って、テンコちゃんって結構お金持ちなんです?」
「ま、ソレなりにはな」
謙遜してみせた天狐に対し、一聖は明け透けな口ぶりでからかう。
「そりゃ卒業生がみーんな大企業の重役だの技術責任者だのやってる上、ソイツらに絡んで共同研究して色んな特許技術に一枚も二枚も噛んでんだ。パテント料だけで年間数十億エルは稼いでるだろーぜ、コイツ」
「うひゃー……いっぺんじっくり独占取材してみたいですねー。……っと、そーだ」
ぺちん、と胸の前で両手を合わせ、シュウはこんな頼みを切り出した。
「お願いがあるんですよー。エヴァたち、テンコちゃんが雇うって形にできません?」
「は? ……あー、そーだな」
一瞬けげんな顔をしかけた天狐だったが、すぐにシュウの意図を察してくれたらしい。
「まず第一、ゼミ生でも共同研究者でもない素性不明のヤツがこんなトコに出入りしてたら怪しいもんな。まっとうな説明ができる形でオレんトコにいなきゃ、変なうわさが立つ。そーゆーコトだろ?」
「そーゆーコトです」
「んで第二、ジャンニのお坊ちゃんはともかく、その二人はカネに困る生き方してるもんな。出すトコから出して囲ってやらなきゃ、まーたウラに入り込みかねねー。そうなりゃオレたちが計画動かすって時に来られなくなる可能性があるし、なんなら敵対する可能性も出てきちまう。んなもん単純に不都合だから、な」
「そーですそーです。……で、オーノ博士と共同研究するってコトにしてるんですし、ジャンニくんたちを博士の研究チームのメンバーってコトにしとけば、オモテ向きの紹介も簡単でしょ?」
「ほんっとにズル賢いなー、お前さんは。ま、ソレが一番無難な説明だわな。いいぜ、ソレで雇用契約書作ってやる。少なくとも正義の味方やってる間はカネに困るなんてコト、絶対無いようにしてやんよ」
「ありがとーございますー」
この話はすぐ大野博士とジャンニたちに通され、ほぼ全員がその場で承諾した。
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エヴァと七瀬だけでなく、大野博士やラモンにも根掘り葉掘り話を聞き、一通りの取材を終えたシュウは、早速天狐のPCを借りて動画編集を行っていた。
「んー……やっぱ基地の話はオミットかなー。こっちの主張にあんまり関係ないし」
「しれっと隠しやがったな。ジャーナリストが聞いて呆れるぜ」
後ろでその作業を眺めていた天狐に突っ込まれるが、シュウは意に介していない。
「ジャーナリストだからですよー。主張したいコトは声を大にしてめいっぱい主張しますし、そうじゃないコトはきっぱり言いません。余計な舌禍筆禍は避けるのが鉄則ですもん」
「本当にコイツは図太てーんだよ」
と、有名ドーナツ店の紙箱を手に提げつつ、一聖がやってくる。
「自分の主張のためならマフィアにも喧嘩売るし、ウラの世界のやべーヤツらにも突撃取材かますヤツだから、な。オレとジャンニがケツモチしてなきゃ、そのうちマジで死んじまうぜ」
「えへへー、頼りにしてます」
「じゃなくてよ、もっと自衛と自制しろって言ってんだよ。二十歳超えたいい大人なんだからよ、自分のコトは自分で責任持てっての」
つんけんとした口調でトゲを刺すも、天狐はゲラゲラ笑っている。
「一聖、お前さぁ……いつからそんなに世話焼きキャラになったんだよ?」
「ああん? お前もだろ? じゃなきゃ200年もゼミやらねーだろーが」
「ホントにお二人とも、似た者同士ですねー」
シュウも笑いつつ、動画編集を終える。
「コレで完成。後はエンコード開始、っと。……うわっ、速い!」
「オレが500万エル出してEMDと共同開発して組んだ完全オーダーメイドパソコンだぞ。パフォーマンス低かったらレジにクレーム入れてんぜ」
「レジ? 買ったトコにってコトですか?」
尋ねたシュウに、天狐は自慢げに答えた。
「ちげーよ。レジーナ・サミットっつって、EMDのCEOやってるヤツだよ。ちなみにココの697年上半期卒業生。つまりオレの教え子さ」
「へー。……って言うか自作パソコンのために500万出資って、テンコちゃんって結構お金持ちなんです?」
「ま、ソレなりにはな」
謙遜してみせた天狐に対し、一聖は明け透けな口ぶりでからかう。
「そりゃ卒業生がみーんな大企業の重役だの技術責任者だのやってる上、ソイツらに絡んで共同研究して色んな特許技術に一枚も二枚も噛んでんだ。パテント料だけで年間数十億エルは稼いでるだろーぜ、コイツ」
「うひゃー……いっぺんじっくり独占取材してみたいですねー。……っと、そーだ」
ぺちん、と胸の前で両手を合わせ、シュウはこんな頼みを切り出した。
「お願いがあるんですよー。エヴァたち、テンコちゃんが雇うって形にできません?」
「は? ……あー、そーだな」
一瞬けげんな顔をしかけた天狐だったが、すぐにシュウの意図を察してくれたらしい。
「まず第一、ゼミ生でも共同研究者でもない素性不明のヤツがこんなトコに出入りしてたら怪しいもんな。まっとうな説明ができる形でオレんトコにいなきゃ、変なうわさが立つ。そーゆーコトだろ?」
「そーゆーコトです」
「んで第二、ジャンニのお坊ちゃんはともかく、その二人はカネに困る生き方してるもんな。出すトコから出して囲ってやらなきゃ、まーたウラに入り込みかねねー。そうなりゃオレたちが計画動かすって時に来られなくなる可能性があるし、なんなら敵対する可能性も出てきちまう。んなもん単純に不都合だから、な」
「そーですそーです。……で、オーノ博士と共同研究するってコトにしてるんですし、ジャンニくんたちを博士の研究チームのメンバーってコトにしとけば、オモテ向きの紹介も簡単でしょ?」
「ほんっとにズル賢いなー、お前さんは。ま、ソレが一番無難な説明だわな。いいぜ、ソレで雇用契約書作ってやる。少なくとも正義の味方やってる間はカネに困るなんてコト、絶対無いようにしてやんよ」
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