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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第5部

    蒼天剣・非道録 8

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    晴奈の話、第289話。
    事件の結末。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    8.
    「よう、遅いご到着で」
     ロウの死体の裏手から、クラウンが現れた。
    「ま、この通りだ。死んじまったわ」
    「クラウン……!」
     シリンが怒りに満ちた表情で、一歩詰め寄る。
    「おっと、動くな」
     クラウンが片手を挙げると、手下たちが一斉に銃を構えて牽制する。
    「……っ」
    「思ったよりタフなんでてこずったけどよ。まあ、流石にライフルの弾12、3発も弾食らったら死ぬわな。文字通り、蜂の巣だ」
    「貴様あ……ッ」
     楢崎もいつに無い形相で、クラウンたちをにらんでいる。
    「お前らも馬鹿だなぁ。何でどいつもこいつも、1人だの2、3人だので来るんだ?」
     クラウンは下卑た笑いを浮かべながら、ロウの死体を殴りつける。
    「もっと公安みたいによぉ、兵隊揃えてやってくりゃいいものを。下手に自信持ってやがるから、ノコノコ一人で来ようとしやがる。
     俺に言わせりゃ、どんな超人だろうと数の暴力にゃ敵わねえんだよ」
     勝ち誇った顔で、クラウンはロウをボコボコと殴り続ける。その度に赤黒く変色した液体が、ビチャビチャと体から漏れていく。
    「くくくっ……! コイツはよ、さっきまで何だかんだほざいてたけどよ、今じゃもうただの肉だ」
     クラウンの非道に、楢崎もシリンも歯軋りして憤るが、晴奈は黙ったままだ。それに気付いたクラウンが、嬉しそうに声をかける。
    「どうしたよ、セイナ? ショックか? こいつと、仲良かったもんなぁ。優勝決定戦で祝辞を述べてたらしいしなぁ」
    「……」
     晴奈はじっと、うつむいたままである。それを見て、クラウンはさらに上機嫌になる。
    「お? 悔しいか? 悔しいのか? 悔しいんだな!? そうか、そうか! いやーそうか、悔しがってくれたか! ひひひ、こりゃ殺した甲斐があったってもんだ!」
     楢崎とシリンはわなわなと震えながら、クラウンを非難する。
    「狂ってる……!」
    「めちゃくちゃや、アイツ……。人を嬲り殺しといて、何であんな楽しそうにしとるんや!?」
     その反応も、クラウンには快楽にしかならない。
    「いひひ、ひひひっ……。そうかそうか、そんなに悔しがってくれるのか! いやぁ……、堪能させてくれるなぁ、お前ら」
    「こいつ……! 何と言う下衆だ! 畜生にも劣るッ!」
     楢崎はたまらず、刀に手をかけた。シリンも怒りに満ちた目で、拳を固める。
    「アカン、コイツ絶対許したらアカンわ! 今ココで、絶対捕まえたらなアカン!」
    「……んだよ、お前らも死にに来たのか? じゃあお望み通り、殺してやらあッ!」
     クラウンがもう一度手を挙げ、手下たちに指示する。手下たちは一斉に、銃を構えた。

    「クラウン……」
     と――晴奈の声が、地の底から響くように、倉庫内にこだまする。
    「ん?」
    「貴様……の……」
     クラウンが晴奈に目を向けようとしたその時、晴奈の姿が消えた。
    「貴様の悪行、万死に値する!」
     銃を構えていた手下たちがぱた、ぱたっと倒れていく。晴奈が一瞬で間合いを詰め、斬り付け始めたのだ。
    「お……、お?」
     クラウンは目を丸くしたが、すぐに指示を送り直す。
    「なっ、何してんだ、撃て、撃てっ!」
    「は、は……」
     返事をしきらないうちに、手下が倒れる。
    「うおおああああああーッ!」
     晴奈が倉庫を揺るがすほどの怒声を上げ、襲い掛かった。
     その叫びには、涙が混じっていた。



     クラウンは晴奈たちを「寡数で向かってきた馬鹿共」と侮っていたが、結論から言えば、クラウン一味は彼女たちに為す術も無く、敗北した。
     この時、クラウン一味20名は全員ライフルで武装していたが、怒りに燃える晴奈たちに一発も弾を当てることができず、全員あっけなく倒されてしまった。
    「マジか……、予想外だったぜ、ここまでお前らが強ええとはな」
     だが、クラウンの顔に焦りの色は浮かんでいない。
    「だがよ、これで勝ったと思うな! 増員だ、増員!」
     クラウンは指笛を吹き、他の場所にいた手下を呼ぶ。
     すぐにドタドタと、手下たちが銃を持ってなだれ込んできた。
    「なっ、……どんだけ出てきよんねん、アホか!」
    「40、いや、50、……くそ、切りが無い!」
     楢崎もシリンも、肩で息をしている。
    「オラ、さっきまでの威勢はどうした、ゴミどもッ!」
     クラウンは喜色満面の笑みを浮かべ、ライフルを得意げに掲げる。
    「……流石に……分が悪いか……!」
     絶望的状況を前にし、晴奈も死を覚悟しかけた。

     ところが――。
    「全員動くなッ!」
     女性の声がその場に響き渡り、続いて、倉庫の四方から光が照らされた。
    「あ……っ」
    「ピサロ・クラウン及びその一味! 誘拐、脅迫、人身売買、重罪犯幇助容疑、及び殺人と私刑、集団暴行の現行犯で逮捕する!」
     硬直する手下たちの向こうに、大勢の公安職員を従えたジュリアの姿が見える。
    「くそ、騒ぎすぎたか……!」
    「抵抗すれば警告なく射殺する! 大人しく投降せよ!」
    「……チッ!」
     クラウンは身をひるがえし、倉庫の奥へと逃げ出した。すぐに公安職員全員が銃を構え、一斉になだれ込む。
    「わっ、わああっ!」
    「ひいーっ!」
    「投降、投降します!」
     親玉に逃げられた手下たちは全員しゃがみこみ、銃を捨てた。



     この大捕物の結果――クラウン一味、総勢126名が逮捕された。だが、主犯のクラウンは逃げおおせ、ゴールドコーストから姿を消した。
     また、オッドの身柄も拘束しようとしたが、市内で見つけることはできなかった。

     なお、誘拐された者たちは――バートや教会の皆も含めて――全員無事に発見、救助された。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    2016.07.05 修正
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