「双月千年世界 5;緑綺星」
緑綺星 第4部
緑綺星・福熊譚 4
シュウの話、第116話。
静かすぎる朝。
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4.
その日、ロロはそれまでの7年間ずっと続けてきたように、朝の7時半きっかりに小学校に出勤した。いつもなら既に鍵は開けられ、校門が全開となっているはずだったが――。
「あれ?」
校門は固く閉ざされたままであり、鍵もかかっている。
(なんだよ……? ハミルのやつ、珍しく寝坊したのか?)
とは言えロロも用務員なので、校門の鍵は持参している。それを使って鍵を開け、宿直室に直行した。
「おーい、ハミル。起きてっかー?」
寝ていることを予想し、ドンドンと荒めにドアをノックし、大声で同僚の名前を呼ぶが、返事はない。
(ありゃ? ドア、開いてんじゃねーか。いないのか?)
ドアを開け、中の様子を確かめたところ、やはり誰もいなかった。
(どうなってんだ……? ちょっと前に飛び起きて急いで校門に行ったもんだからすれ違った、……とかか? いや、それにしちゃ毛布も何も残ってないしなぁ)
あれこれ考えつつ、ロロはなんとなくテレビの電源を入れようとした。ところがリモコンを押しても、主電源のスイッチをカチカチ押し込んでも、まったく反応しない。
(ん……? これ、そもそも電気切れてないか?)
そう思って部屋の入り口にある壁スイッチもカチカチといじり、やはり電気が通っていないことが確認できた。
(変だな……なんか、今朝は妙な感じだぞ……?)
ブレーカーや屋外の配電盤を点検したものの、まったく異常は見られず、どうやら電気の供給自体がなされていないことだけが、どうにか理解できた。
(まあ、電気は別に何とでもなるしな。一応、非常用の発電機もあるし。みんなが登校してくる前に動かしとけば、今日一日くらいは問題ないだろ)
そう思って時計を確認し――とっくに始業時間が過ぎていること、にもかかわらず依然として校内が静まり返っていることに、ロロはようやく気が付いた。
(流石に……おかしいな? 誰も来ないなんて。今日、平日だし)
薄々感じていた不安が、ここでロロの心を覆った。
「……おっ、おーい! だ、誰か、いないのかー!?」
たまらず大声を上げたが反応するものは何もなく、ロロのバリトンボイスが薄暗い校内に響き渡るばかりだった。
どうしてよいか分からず、ロロはとりあえず宿直室に戻って来たが、やはり中には誰もいなかった。
「……ヘタなホラー映画よりゾッとすんなぁ」
電話も通じず、ガスも水道も止まっている。まるで街中で遭難したかのような感覚を覚え、ロロはばたりと寝転がり、大の字になった。
(落ち着け……落ち着けよ、俺……今、何が起こってんのか。それを確かめなきゃならねえよな。でもテレビも点かねえし、電話もダメ。……そう言や出勤中、誰にも会わなかったよな。自転車で10分くれー走ってたのに。いつもならゴミ収集車とジョギング中の『猫』のじいさんとすれ違うとこなのに、それもなかった。
まるで世界から俺以外の人間が消えたみてーじゃねえかよ……!?)
とんでもない想像が頭の中を駆け巡り、ロロはぶるっと巨体を震わせた。
「ばっ、バカ! んなわけあるかってんだ、なあ、はっ、ははは、はは……はは……」
気付けば時刻は昼に差し掛かろうとしており――そこでふと、ロロは宿直室にラジオがあったことを思い出した。
(そう言や去年辞めたセロンじいさん、いつも昼飯食う時にラジオ聴いてたよな。『たまーにリクエスト読んでくれるから』っつって。辞める時、『退職金で新しいの買うつもりだから置いとくよ』っつってたけど、俺も含めてみんなテレビ見る派だったから、段ボールん中にしまったままにしてたんだよな、そう言えば)
がばっと飛び起き、部屋の片隅にあった段ボール箱を開く。記憶通り、そこには古びた携帯ラジオが収められていた。
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静かすぎる朝。
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その日、ロロはそれまでの7年間ずっと続けてきたように、朝の7時半きっかりに小学校に出勤した。いつもなら既に鍵は開けられ、校門が全開となっているはずだったが――。
「あれ?」
校門は固く閉ざされたままであり、鍵もかかっている。
(なんだよ……? ハミルのやつ、珍しく寝坊したのか?)
とは言えロロも用務員なので、校門の鍵は持参している。それを使って鍵を開け、宿直室に直行した。
「おーい、ハミル。起きてっかー?」
寝ていることを予想し、ドンドンと荒めにドアをノックし、大声で同僚の名前を呼ぶが、返事はない。
(ありゃ? ドア、開いてんじゃねーか。いないのか?)
ドアを開け、中の様子を確かめたところ、やはり誰もいなかった。
(どうなってんだ……? ちょっと前に飛び起きて急いで校門に行ったもんだからすれ違った、……とかか? いや、それにしちゃ毛布も何も残ってないしなぁ)
あれこれ考えつつ、ロロはなんとなくテレビの電源を入れようとした。ところがリモコンを押しても、主電源のスイッチをカチカチ押し込んでも、まったく反応しない。
(ん……? これ、そもそも電気切れてないか?)
そう思って部屋の入り口にある壁スイッチもカチカチといじり、やはり電気が通っていないことが確認できた。
(変だな……なんか、今朝は妙な感じだぞ……?)
ブレーカーや屋外の配電盤を点検したものの、まったく異常は見られず、どうやら電気の供給自体がなされていないことだけが、どうにか理解できた。
(まあ、電気は別に何とでもなるしな。一応、非常用の発電機もあるし。みんなが登校してくる前に動かしとけば、今日一日くらいは問題ないだろ)
そう思って時計を確認し――とっくに始業時間が過ぎていること、にもかかわらず依然として校内が静まり返っていることに、ロロはようやく気が付いた。
(流石に……おかしいな? 誰も来ないなんて。今日、平日だし)
薄々感じていた不安が、ここでロロの心を覆った。
「……おっ、おーい! だ、誰か、いないのかー!?」
たまらず大声を上げたが反応するものは何もなく、ロロのバリトンボイスが薄暗い校内に響き渡るばかりだった。
どうしてよいか分からず、ロロはとりあえず宿直室に戻って来たが、やはり中には誰もいなかった。
「……ヘタなホラー映画よりゾッとすんなぁ」
電話も通じず、ガスも水道も止まっている。まるで街中で遭難したかのような感覚を覚え、ロロはばたりと寝転がり、大の字になった。
(落ち着け……落ち着けよ、俺……今、何が起こってんのか。それを確かめなきゃならねえよな。でもテレビも点かねえし、電話もダメ。……そう言や出勤中、誰にも会わなかったよな。自転車で10分くれー走ってたのに。いつもならゴミ収集車とジョギング中の『猫』のじいさんとすれ違うとこなのに、それもなかった。
まるで世界から俺以外の人間が消えたみてーじゃねえかよ……!?)
とんでもない想像が頭の中を駆け巡り、ロロはぶるっと巨体を震わせた。
「ばっ、バカ! んなわけあるかってんだ、なあ、はっ、ははは、はは……はは……」
気付けば時刻は昼に差し掛かろうとしており――そこでふと、ロロは宿直室にラジオがあったことを思い出した。
(そう言や去年辞めたセロンじいさん、いつも昼飯食う時にラジオ聴いてたよな。『たまーにリクエスト読んでくれるから』っつって。辞める時、『退職金で新しいの買うつもりだから置いとくよ』っつってたけど、俺も含めてみんなテレビ見る派だったから、段ボールん中にしまったままにしてたんだよな、そう言えば)
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