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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第5部

    蒼天剣・非道録 10

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    晴奈の話、第291話。
    物語、新天地へ。

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    10.
     ヘレン総帥は頭を下げ、依頼内容を話し始めた。
    「この事件、敵の本拠地は央北にあるので、金火公安として公式に捜査することができませんのんや。それに相当大掛かりな組織ですし、下手をするとどこかの王侯貴族なり、大臣なりが絡んどるかも知れません。あんまり財団や公安を挙げて積極的に動いてたら、無用な政治騒乱を起こしかねませんのんですわ。
     ですから秘密裏に少数精鋭のチームを結成し、表沙汰にならへんよう処理したい、そう考えてますのんや。そのチームに、あなた方を引き入れたいと思うとります」
    「我々を?」
    「ええ、皆さん全員を。セイナちゃん、ナラサキさん、シリンちゃん、コスズちゃんは戦闘要員として、そして現場判断を、フォルナちゃんに。
     こちらのジュリアちゃん、バートちゃん、フェリオちゃん、そしてエランの四人と合同で、総勢9名のチームを組んでもらいたいんですわ」
     フォルナはけげんな顔で、ヘレンに聞き返す。
    「わたくしも、ですか?」
    「ええ。なかなか聡い子ですし、エランにも良くしてくれてますからなぁ。それに……」
     ヘレンはにっこりと笑って、フォルナに笑いかける。
    「もし故郷に戻る気になった時、言い訳がいりますやろ? 私の口添えがあれば、なんぼでもご用意できますで」
    「……!」
     フォルナは口に手をあて、後ずさった。
    「私、よー覚えとりますよ。去年、会うてますやろ?」
    「……ええ。でも失礼ですが、あのお話はあまり気乗りがしなくて。あの方、ご自分が金火狐一族と言うことを一々、鼻にかけてきましたもの」
    「うんうん、断って正解やね。あの子は私の甥やねんけど、やっすいエリート意識丸出しのドアホやしな、こちらとしてもお勧めしとうない子でした。
     どっちか言うたら、エランの方が――まあちょっと、気弱で優柔不断なとこありますけども――真面目でええ子ですわ」
    「クス、そうですわね」
    「なぁなぁ、この作戦が終わったら、この子との縁談、考えてみてもろてもええ? フォルナちゃんやったら、ええお嫁さんになると思うんやけどねぇ」
    「また、ご冗談を。……でも確かに、故郷に背を向けたままと言うのはあまり気分がいいものではありませんし、チームの話はお受けいたします」
     二人の話を、そこにいた全員がけげんな顔で聞いている。
    「フォルナさん、あなたは一体……?」
    「エラン、総帥とどんな関係なんだ?」
     ジュリアとバートが率先して尋ねると、ヘレンがクスクス笑いながら答えた。
    「あー、フォルナさんはグラーナ王国の第3王女やねん。こないだからずーっと、捜索されてましたやろ?」
    「え」
     ジュリアたちはまじまじとフォルナの顔を見つめ、続いて手帳に挟んである手配書を確認し、もう一度顔を見る。
    「……あーっ!?」
    「何や、気付いてへんかったんか? まだまだやなぁ。ほんで、エランは……」
     ヘレンはエランの肩を取り、その顔に頬ずりした。
     その弾みで、エランのかぶっていた帽子が落ちる。
     現れたのは金髪に赤メッシュ――金火狐一族であることを示す証だった。
    「私の息子ですわ」
    「ちょっ……、母さま」
     エランとフォルナを除く全員が、目を点にして驚いた。

     結局、晴奈たちは全員、ヘレンからの依頼を引き受けた。
     憎むべき敵、クラウンも殺刹峰へと逃げ込んだ可能性が高いこと、また、楢崎も殺刹峰を長年追いかけてきたこと、晴奈が彼の手助けをしたいと申し出ていたことなどから、全員が快諾した。
    「ありがとうございます、皆さん」
    「いえ、礼など……」
     礼を述べたヘレンに、晴奈も頭を下げ返す。
    「援助は惜しみませんし、お礼も十二分に用意するつもりです。何でも用意しますさかい、何でも言うてください」
    「……であれば、2つ頼みがあります」
     晴奈はヘレンにもう一度頭を下げ、願いを伝えた。



    「うっ、うっ……」
     夫を失ったシルビアは連日、悲しみに暮れていた。
    「……」「……」
     子供たちも黙々と家事をこなしながら、父親を失った悲しみに打ちひしがれていた。
     と、教会の戸を叩く者がいる。
    「どなた……?」
    「黄です」
     シルビアは涙を拭きながら、戸を開ける。
    「どうしたんですか?」
    「今一度弔問をと思いまして、こちらをお持ちしました」
     晴奈の手元には、大きなかばんが1つ提げられている。
    「こちらは?」
     晴奈はまだ瓦礫の残る居間に入り、補修されたテーブルの上にそのかばんを置き、開いてみせた。
    「……!?」
     かばんの中には、沢山の金貨が詰まっていた。
    「この度、公安からクラウン逮捕への協力を要請されました。その謝礼金として、1千万クラムを受け取りまして。
     そちらを全額、香典として納めさせていただこうかと」
    「いっ、1千……!?」
     晴奈はシルビアの手を握り、こう宣言した。
    「シルビア殿。……きっと、仇を討ってまいります。ロウの無念、何としてでも晴らさねば。あなたのためにも、子供たちのためにも」
    「セイナさん……」
     シルビアは泣きながら晴奈に寄りかかる。晴奈は彼女の震える肩を、優しく抱きしめた。

    「そんで、もう一つは船でしたな」
    「ええ、よろしくお願いします」
     晴奈の願いはシルビアに渡した1千万クラムと、現在戦争中で封鎖されている北方への航路だった。
    「任務終了次第出せるよう、手配しときますわ。
     信じとりますで、皆さん」
    「はい!」
     ジュリアたちはきりっと直立し、ヘレンに敬礼する。晴奈たち五人も、同様に敬礼した。

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    2016.07.05 修正
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