「双月千年世界 5;緑綺星」
緑綺星 第4部
緑綺星・聖怨譚 5
シュウの話、第134話。
疑惑の新王。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
5.
《臨時ニュースが入りました。本日、トラス王室政府よりトラス王国国王、カレン・トラスの崩御が発表されました。67歳でした。また、同政府より第4代国王として、前国王の姪孫(てっそん)であるマーク・メルキン・トラス氏が即位する予定であると発表されました》
「なーにが『即位する予定』だ、クソが」
ミッドランド市国、天狐屋敷。間一髪で難を逃れた一聖は、白黒テレビに映ったアナウンサーの顔をにらみつけ、毒を吐いていた。
「王族が集合してるトコ襲撃したクセしやがって、何をいけしゃあしゃあと」
「ソレなんだが」
と、そこに天狐が、カップケーキとココアミルクの乗ったトレーを手にしつつやって来る。
「マジで犯人は王室政府のヤツらなのか?」
カップケーキを受け取りながら、一聖は神妙な顔を見せる。
「現時点で一番可能性が高いのは、って注釈は付くけどな。こうしてテレビ局が『王室政府からの発表がありました』って報道するくらいだ。発表した王室政府が襲撃の事実を知らずに現国王、……いや、もう、『現』じゃねーか、ともかくカレンの直系じゃねーヤツが即位するコトを容認・公表するなんて、理屈に合わねーだろーが。しかも事件のあったその日のうちにだぜ?」
「だろーな。オレも同意見だ。ただ、オレの方は別方向からの異議申し立てになるが」
そう言って、天狐はカップケーキを手にしつつ、肩をすくめて見せた。
「ウチにいたマーク・トラスを覚えてるか? メルキンじゃない方」
「そりゃ覚えてるに決まってんだろーが。メルキンがその孫だってのも知ってる」
「祖父の方のマークは文句なしの秀才だったし、王国の発展に貢献した偉人だった。だがメルキンはその才能をまったく継げなかった凡人だ。何年か前にゼミの試験受けに来たコトがあったが、中身がてんで無い見掛け倒しだってのが面接始めて3分で分かったから、その場で落とした」
「ソレも聞いた覚えがあるな。あのマークの孫だからと思って期待してたが、試験受けてからの音沙汰がぷっつりになっちまったから、あれっと思って一回お前に聞いてみたんだよな」
「そーそー、あん時は半ギレしてたなー。あん時ほど時間を無駄にしたと思ったのは数十年ぶりってレベルだったぜ。話せど話せど、中身がくだらねー自慢話ばっかりで、『これを研究したい』って話が一向に出てこねーもんで、段々イライラしてきてよ」
「言ってたなぁ。んで、『面接で泣かして追っ払った』って聞かされて……いや、今はそんなコトはどーでもいいな」
「よくねーんだな、コレが」
天狐は2つ目のカップケーキに手を伸ばしつつ、メルキンのその後について語った。
「『あのマークの孫だ』っつって鳴り物入りでミッドランドに来たってのに、オレに散々こき下ろされて門前払いとなっちゃ、そのまんま帰るワケにゃ行かねーだろ?」
「確かにな。ミッドランドに行ったって話を聞いたっきりで、その後のコトは何にもだった」
「だもんでその後、外国を周ってたらしい。どーやらその間天狐ゼミに在籍してたって体にするつもりだったか、『もっと自分の性に合ったところで勉強してた』みてーな言い訳するつもりだったのか。だがミッドランド以降音沙汰が無かったってトコを見るに、王室でも持て余してたんじゃねーかな」
「つまりそんなボンクラが次期国王になるなんて話が通るのはおかしい、……ってコトか」
「そーゆーコトだ。そもそもカレンの子供と孫を含めた王位継承権の順番を考えりゃ、メルキンは10位以内にも入れねー外様も外様のヤツだぜ? ところが実際には、王室政府はメルキンに決めたって言ってるワケだ。こりゃ何かカラクリがあるぜ」
「調べられるか?」
「卒業生何人かに当たってみる。首尾よく行けば一日、二日ってトコだろ。ソレまでウチでゆっくりしてけ。フェリスも……今はそっとしとく以外にねーだろ」
「ああ。助かる」
@au_ringさんをフォロー
疑惑の新王。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
5.
《臨時ニュースが入りました。本日、トラス王室政府よりトラス王国国王、カレン・トラスの崩御が発表されました。67歳でした。また、同政府より第4代国王として、前国王の姪孫(てっそん)であるマーク・メルキン・トラス氏が即位する予定であると発表されました》
「なーにが『即位する予定』だ、クソが」
ミッドランド市国、天狐屋敷。間一髪で難を逃れた一聖は、白黒テレビに映ったアナウンサーの顔をにらみつけ、毒を吐いていた。
「王族が集合してるトコ襲撃したクセしやがって、何をいけしゃあしゃあと」
「ソレなんだが」
と、そこに天狐が、カップケーキとココアミルクの乗ったトレーを手にしつつやって来る。
「マジで犯人は王室政府のヤツらなのか?」
カップケーキを受け取りながら、一聖は神妙な顔を見せる。
「現時点で一番可能性が高いのは、って注釈は付くけどな。こうしてテレビ局が『王室政府からの発表がありました』って報道するくらいだ。発表した王室政府が襲撃の事実を知らずに現国王、……いや、もう、『現』じゃねーか、ともかくカレンの直系じゃねーヤツが即位するコトを容認・公表するなんて、理屈に合わねーだろーが。しかも事件のあったその日のうちにだぜ?」
「だろーな。オレも同意見だ。ただ、オレの方は別方向からの異議申し立てになるが」
そう言って、天狐はカップケーキを手にしつつ、肩をすくめて見せた。
「ウチにいたマーク・トラスを覚えてるか? メルキンじゃない方」
「そりゃ覚えてるに決まってんだろーが。メルキンがその孫だってのも知ってる」
「祖父の方のマークは文句なしの秀才だったし、王国の発展に貢献した偉人だった。だがメルキンはその才能をまったく継げなかった凡人だ。何年か前にゼミの試験受けに来たコトがあったが、中身がてんで無い見掛け倒しだってのが面接始めて3分で分かったから、その場で落とした」
「ソレも聞いた覚えがあるな。あのマークの孫だからと思って期待してたが、試験受けてからの音沙汰がぷっつりになっちまったから、あれっと思って一回お前に聞いてみたんだよな」
「そーそー、あん時は半ギレしてたなー。あん時ほど時間を無駄にしたと思ったのは数十年ぶりってレベルだったぜ。話せど話せど、中身がくだらねー自慢話ばっかりで、『これを研究したい』って話が一向に出てこねーもんで、段々イライラしてきてよ」
「言ってたなぁ。んで、『面接で泣かして追っ払った』って聞かされて……いや、今はそんなコトはどーでもいいな」
「よくねーんだな、コレが」
天狐は2つ目のカップケーキに手を伸ばしつつ、メルキンのその後について語った。
「『あのマークの孫だ』っつって鳴り物入りでミッドランドに来たってのに、オレに散々こき下ろされて門前払いとなっちゃ、そのまんま帰るワケにゃ行かねーだろ?」
「確かにな。ミッドランドに行ったって話を聞いたっきりで、その後のコトは何にもだった」
「だもんでその後、外国を周ってたらしい。どーやらその間天狐ゼミに在籍してたって体にするつもりだったか、『もっと自分の性に合ったところで勉強してた』みてーな言い訳するつもりだったのか。だがミッドランド以降音沙汰が無かったってトコを見るに、王室でも持て余してたんじゃねーかな」
「つまりそんなボンクラが次期国王になるなんて話が通るのはおかしい、……ってコトか」
「そーゆーコトだ。そもそもカレンの子供と孫を含めた王位継承権の順番を考えりゃ、メルキンは10位以内にも入れねー外様も外様のヤツだぜ? ところが実際には、王室政府はメルキンに決めたって言ってるワケだ。こりゃ何かカラクリがあるぜ」
「調べられるか?」
「卒業生何人かに当たってみる。首尾よく行けば一日、二日ってトコだろ。ソレまでウチでゆっくりしてけ。フェリスも……今はそっとしとく以外にねーだろ」
「ああ。助かる」
- 関連記事



@au_ringさんをフォロー
総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

- ジャンル:[小説・文学]
- テーマ:[自作小説(ファンタジー)]
~ Trackback ~
トラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
~ Comment ~