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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
    双月千年世界 短編・掌編

    KCN 8

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    番外編。
    「KCN」とは?




    8.
    「……驚いたわ。まさかアイツが、アタシの正体に気付くだなんて。どうやって見破ったのかしらねーぇ?
     でも、いつも通りきちっと殺してやったから、もう安心よね。あんな夜中に訪ねてきたってコトは、気付いてすぐに行動に移したってコト。つまり、同僚に気付いたコトを知らせる時間的余裕も無かっただろうし、夜中に来たってコトは残業で単独行動を取っていたってコト。つまり、誰にも真相を知らせてないはずよ。知らせていたら、一人で来るはずが無いもの。
     結局、アタシの正体は誰も知らないまま。極めて、異常無し。これまで通りに過ごしても、なぁんの問題も無いわよねーぇ……」



    「まず、何でデルタは殺されなくちゃならなかったか、だ」
     ロメオとヘレンは多数のメモ用紙に、これまで起こった出来事や、気になった点を書き連ねていた。
    「あの殺され方と、KCN事件を手掛けていたことから、当然KCNに殺されたものと考えられる。ではなぜ、デルタはKCNに殺される羽目になったのか?」
    「恐らくは、何らかの真相にたどりついたんでしょうね」
    「そうだ。そしてその真相とは、間違いなく犯人を特定するものだろう。そうでなければ、KCNがデルタを殺せるわけが無い」
    「どう言うことですか?」
     話に割って入ったディーノに、ヘレンがややイラつきながら答える。
    「KCN本人の情報を手に入れたんやから、当然デルタさんは直接会いに行ったんや、KCNに。
     逆に言えば、デルタさんがKCNの情報つかんでへんかったら、KCNはデルタさんに会われへんし、ちゅうことは殺されることも無かったっちゅうことや」
    「あ、なるほど」
    「となると、デルタは事前に何を調べていたのか? これがキーポイントになるな」
     ロメオは顔を上げ、ディーノに質問する。
    「ディーノくん。君はデルタが殺される前の晩、デルタに会ったと言っていたな?」
    「ええ、はい」
    「その時彼は、何を調べていた?」
     ディーノは両手をこすりながら、その時のことを思い出そうとした。
    「えーと、確か……、KCN事件の資料と、カードを見てて……、机を叩いてましたね」
    「何やそれ」
    「何だか悔しそうにしてましたし、煮詰まってたんじゃないかなって。……あ」
     ディーノはあの時デルタに話をしたことを思い出した。
    「そうだ。あの時、僕の話を聞いたデルタさんが、血相を変えて飛び出したんですよ」
    「何やて? どんな話したん、ディーノ?」
    「えっと、それです」
     ディーノは机の隅に置かれたカードを指差した。



     デルタが殺される前夜。
    「でも変な犯人ですよね」
    「うん?」
     ディーノの唐突な言葉に、デルタは顔を向けた。
    「『KCN』って名前なのにほら、これ」
     そう言ってディーノは資料の中の、「死因」の項目を指差す。
    「……? 良く分からないんだが」
    「えっと……。KCNって言えば、あれですよね。あの薬品だと思ったんですけど」
    「薬品?」
    「ええ。化学式じゃないかなって、KCNって」
    「すまない、俺はあまり化学に詳しく無いんだ。それが何なのか、教えてくれないか?」
     ディーノは机からメモを取り、その化学式を書いた。
    「カリウム(K)と炭素(C)、それから窒素(N)です」
    「それはつまり、どんな物質になるんだ?」
    「シアン化カリウム、つまり『青酸カリ』です」
    「青酸カリ、だと?」
     その指摘を受け、デルタはもう一度資料を読み直す。
    「……無いな。青酸カリが死因となった件は、一つも無い」
    「変だなって思ったのは、それなんですよ。
     KCNって名乗ってるのに、一度も青酸カリで殺したことが無いんです。それが不思議だなーって」



    「確かに妙やな? KCN、何度も工場襲っとるのに」
     ヘレンの言葉に、ロメオもうなずく。
    「ああ。俺もあんまり詳しい方じゃないが、青酸カリってのは本来、金属加工に使われる薬品だったよな。工場を襲撃していたらいくらでも手に入る物のはずなのに、一度も使ってないと言うのは、ちょっと妙だ」
    「意図的に、使わへんようにしてたんかも知れませんね。元々、愉快犯的な傾向がありましたし、『自分自身が猛毒やぞ』って言いたかったんかも」
    「いや、そもそも最初の頃は殺人を犯してない。……純粋に、名前を指しているのかも分からんな」
    「と言うと?」
     ディーノの問いに、ロメオはカードをトントンと指で叩きながら答える。
    「毒を使う犯行から考えて、恐らく『KCN』が『青酸カリ』だと言うのは間違いないだろう。とすれば、そいつの本名なり経歴なりに、『青酸カリ』が絡んでいる、……と言うことも考えられる」
    「青酸カリが名前、かぁ。……!」
     ヘレンの頭に、何か光るものがあった。
    「ディーノ、青酸カリって何て言うてた?」
    「え?」
    「化学的な言い方してたやん、何やった?」
    「ああ、シアン化カリウムですか?」
    「……ロメオさん、良く公安に出入りしとる医者の名前、何でしたっけ?」
     ヘレンからの質問の真意に、ロメオは気が付いた。
    「シアン、……だったな、確か」
     ロメオの顔が、段々とこわばってくる。
    「まさかヘレンちゃん、公安の関係者が犯人だって言うのか?」
    「ええ、そう考えるといっこ、つじつまの合うことがあるんです」
     ヘレンはカードを何枚か机の上に置いた。
    「最初の方、『怪盗』っちゅう言葉が付いてました。でも殺人があってからは、その言葉が消えてます。これ、世間がKCNを殺人犯やと騒ぎ出す前なんです。
     デルタさんは犯人が自ら良心の呵責に耐えかねて文面を変えたと言うてましたけども、もしかしたら『他人に直接言われたから』変えたんかも知れません」
    「直接?」
    「最初の殺人の後、私はシアン医師に死因を詳しく聞くために会いまして。そん時に私、『人を殺してしもた以上、怪盗とは呼べへんようになった』って本人に言うたんですわ。
     その直後から、『怪盗』が消えたわけで」
    「なるほど。愉快犯だから、世間の評判には過敏だろうな。特に、面と向かってそう言われちゃあな」
    「今になって考えると、他にも何度か、シアン医師と話したことが少なからず、このカードに反映されたことがあります。
     何より、デルタさんが直接会うような相手です。少なからず面識が無いと、そんなことはなかなかでけへんでしょう」
    「……ほぼ決まり、だな」
     ヘレンとロメオ、ディーノは同時に立ち上がり、早足で医務室に向かった。
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