「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
双月千年世界 短編・掌編
KCN 10
番外編。
シアンの本性?
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シアンの本性?
10.
「は、ひっ……」
大ケガをしていた肩を叩かれ、シアンは悶絶している。
「当たりだな。……さあ、観念してもらおうか、極悪犯のKCNさんよ」
「……ひっ、ひっ、……ひひ、ふふふ、うふふふ」
悶絶していたシアンが、すっと立ち上がった。その手にはいつの間にか、注射器が握られている。
「……油断したわ。まだ、真相に気付いたヤツが残ってたなんてねーぇ」
「まさか、ホンマにアンタが……!?」
「うふふ、ふふ……」
シアンは後ずさり、持っていた注射器を自分に刺す。
「何をしてる?」
「大抵の毒とか薬は私には、……アタシには効かないけど、それでも自分で調合して、自分に効く麻酔とか向精神薬とかは造れるわぁ。
まあ、それだけ強力ってコトだし、体にも負担がかかっちゃうから、あんまり使いたくなかったんだけど、とりあえずピンチだし、今打っとかないと……」
シアンの顔に、ビキビキと筋が走る。
「逃げられそうにないものねーぇ」
「逃がすと思うんか!?」
ヘレンとロメオは警棒を構え、シアンとの距離を詰める。
「『逃がす』? ……違う違う、違うわよーぉ? 『逃げる』のよ」
シアンはそう言うと、すすっと後ずさりし――。
「……なっ!?」「くそ、しまった!」
くるりと身を翻し、奥にあった窓を破って外に飛び出した。
「ばぁいばーい、あっはははは……!」
ヘレンとロメオも窓から飛び出し、シアンを追いかける。
「は、速い!」「やっぱり『猫』はすばしっこいな、くそっ……!」
だが、角を二つ三つ曲がったところで、完全に振り切られてしまった。
公安職員は大別して、4つのセクションに分けられる。
一つ目は会計や庶務、営繕などを管理する「事務部」。
二つ目は実際に街を周り、犯罪の直接的な抑止・防止を行う「警邏部」。
三つ目はヘレンたちが属している、犯罪捜査を行う「捜査部」。
そして四つ目は、大掛かりな拿捕・強制捜査・暴動鎮圧などの際に出動する「機動部」である。
KCNが医師のシアン・チョウであると発覚し、ヘレンチームは機動部にゴールドコースト全体におけるシアンの捜索と身柄確保・拘束を依頼した。
すぐに街全体に武装した職員が散らばり、ゴールドコーストは物々しい雰囲気に包まれた。
「捕まりますかね……?」
大人数で街を練り歩く職員たちを見て、ディーノが不安そうにつぶやく。
「捕まえなアカンのや」
それにヘレンが応えつつ、サンドイッチをほおばった。
時間がたまたま空いたので、ヘレンたち二人は公安局近くの喫茶店で昼食を取っていた。
「もぐ……。しかし何で、シアンさんは、……その、女装してたんでしょうね?」
「さあ……? 捜査を撹乱させようと思てたんかもな」
「あるいは、趣味、……とか」
そう言ったディーノの鼻を、ヘレンがつまむ。
「ふがっ!? あ、あ、はなひてふだはい(離してください)!」
「何を妙なこと言うてんねや、アンタはぁ……」
「だべだばらはだつばばれると、びびのおぶばいだいんですっでば(食べながら鼻つままれると、耳の奥が痛いんですってば)」
「そんな気色悪いこと、よー考えるなぁ」
ヘレンはここで鼻から手を離す。ディーノは耳をトントンと叩きながら、軽くえづいている。
「うぅ、ゲホ、うー……、そう言う考え方もあるかなと思って言ってみただけじゃないですか、もう。
……ああ、まだ耳がおかしい。ちょっと、水取ってきます」
「はいはい」
ディーノは耳を押さえながら席を離れる。
一人になったヘレンは2つ目のサンドイッチに手を伸ばしつつ、「なぜシアンが女装していたのか」を論理的に考えていた。
(やっぱり一番納得行くんは、捜査の撹乱やんなぁ。確かに女や女や思て捜査しとったから、シアン先生が犯人やって結論になっても、まさかって言う気持ちはちょこっとあったしなぁ。
それ以外ないやろ……。まさか本当に)「本当に、趣味なんだけどねーぇ」
後ろからかけられた低い声に、ヘレンはぎょっとした。
だが振り向いた瞬間、チクリと首筋に痛みが走る。
「っ……?」
「分からないかしらねーぇ、自分を飾る楽しさってヤツ」
体から力が抜けていく。抵抗することもできず、ヘレンはそのまま意識を失った。
「は、ひっ……」
大ケガをしていた肩を叩かれ、シアンは悶絶している。
「当たりだな。……さあ、観念してもらおうか、極悪犯のKCNさんよ」
「……ひっ、ひっ、……ひひ、ふふふ、うふふふ」
悶絶していたシアンが、すっと立ち上がった。その手にはいつの間にか、注射器が握られている。
「……油断したわ。まだ、真相に気付いたヤツが残ってたなんてねーぇ」
「まさか、ホンマにアンタが……!?」
「うふふ、ふふ……」
シアンは後ずさり、持っていた注射器を自分に刺す。
「何をしてる?」
「大抵の毒とか薬は私には、……アタシには効かないけど、それでも自分で調合して、自分に効く麻酔とか向精神薬とかは造れるわぁ。
まあ、それだけ強力ってコトだし、体にも負担がかかっちゃうから、あんまり使いたくなかったんだけど、とりあえずピンチだし、今打っとかないと……」
シアンの顔に、ビキビキと筋が走る。
「逃げられそうにないものねーぇ」
「逃がすと思うんか!?」
ヘレンとロメオは警棒を構え、シアンとの距離を詰める。
「『逃がす』? ……違う違う、違うわよーぉ? 『逃げる』のよ」
シアンはそう言うと、すすっと後ずさりし――。
「……なっ!?」「くそ、しまった!」
くるりと身を翻し、奥にあった窓を破って外に飛び出した。
「ばぁいばーい、あっはははは……!」
ヘレンとロメオも窓から飛び出し、シアンを追いかける。
「は、速い!」「やっぱり『猫』はすばしっこいな、くそっ……!」
だが、角を二つ三つ曲がったところで、完全に振り切られてしまった。
公安職員は大別して、4つのセクションに分けられる。
一つ目は会計や庶務、営繕などを管理する「事務部」。
二つ目は実際に街を周り、犯罪の直接的な抑止・防止を行う「警邏部」。
三つ目はヘレンたちが属している、犯罪捜査を行う「捜査部」。
そして四つ目は、大掛かりな拿捕・強制捜査・暴動鎮圧などの際に出動する「機動部」である。
KCNが医師のシアン・チョウであると発覚し、ヘレンチームは機動部にゴールドコースト全体におけるシアンの捜索と身柄確保・拘束を依頼した。
すぐに街全体に武装した職員が散らばり、ゴールドコーストは物々しい雰囲気に包まれた。
「捕まりますかね……?」
大人数で街を練り歩く職員たちを見て、ディーノが不安そうにつぶやく。
「捕まえなアカンのや」
それにヘレンが応えつつ、サンドイッチをほおばった。
時間がたまたま空いたので、ヘレンたち二人は公安局近くの喫茶店で昼食を取っていた。
「もぐ……。しかし何で、シアンさんは、……その、女装してたんでしょうね?」
「さあ……? 捜査を撹乱させようと思てたんかもな」
「あるいは、趣味、……とか」
そう言ったディーノの鼻を、ヘレンがつまむ。
「ふがっ!? あ、あ、はなひてふだはい(離してください)!」
「何を妙なこと言うてんねや、アンタはぁ……」
「だべだばらはだつばばれると、びびのおぶばいだいんですっでば(食べながら鼻つままれると、耳の奥が痛いんですってば)」
「そんな気色悪いこと、よー考えるなぁ」
ヘレンはここで鼻から手を離す。ディーノは耳をトントンと叩きながら、軽くえづいている。
「うぅ、ゲホ、うー……、そう言う考え方もあるかなと思って言ってみただけじゃないですか、もう。
……ああ、まだ耳がおかしい。ちょっと、水取ってきます」
「はいはい」
ディーノは耳を押さえながら席を離れる。
一人になったヘレンは2つ目のサンドイッチに手を伸ばしつつ、「なぜシアンが女装していたのか」を論理的に考えていた。
(やっぱり一番納得行くんは、捜査の撹乱やんなぁ。確かに女や女や思て捜査しとったから、シアン先生が犯人やって結論になっても、まさかって言う気持ちはちょこっとあったしなぁ。
それ以外ないやろ……。まさか本当に)「本当に、趣味なんだけどねーぇ」
後ろからかけられた低い声に、ヘレンはぎょっとした。
だが振り向いた瞬間、チクリと首筋に痛みが走る。
「っ……?」
「分からないかしらねーぇ、自分を飾る楽しさってヤツ」
体から力が抜けていく。抵抗することもできず、ヘレンはそのまま意識を失った。



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