「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
双月千年世界 短編・掌編
KCN 15
番外編、おしまい。
昔のつながり、今のつながり。
さてさて、番外編も一段落着いたところで、
またキャラ紹介をはさみつつ、いよいよ第6部に突入です。
明後日の更新から開始の予定です。
ご期待いただければ幸いです(*゚ー゚)
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昔のつながり、今のつながり。
さてさて、番外編も一段落着いたところで、
またキャラ紹介をはさみつつ、いよいよ第6部に突入です。
明後日の更新から開始の予定です。
ご期待いただければ幸いです(*゚ー゚)
15.
「あれ?」
新聞を読んでいたロメオが声を上げる。
「どないしはりました、ロメオさん?」
「いやね、この見出し……」
ロメオが指し示した紙面を見て、ヘレンも首をかしげた。
「『KCN事件終結 犯人ドクター・オッド 自爆』……? どこからドクター・オッドって名前が出てきたんでしょうね?」
「だよねぇ……。あいつが自分でそう名乗ってたけども、それを聞いてたのは俺たち公安職員だけ、のはずだよねぇ」
「誰かがペラペラしゃべりよったんでしょうね。……まったく」
「ああ。まったく、だよ」
ロメオは呆れた顔で、新聞を机に置いた。
「……にしてもさ、この『オッド』ってのはなかなか、いいネーミングだよなぁ」
「へ?」
ロメオは茶をすすりながら、そう思った理由を挙げる。
「オッドアイって言うのと、オカマだったって言うのと、優越感に浸ってたクセに劣等感引きずってたってのと……。
どこから見ても、オッド(奇妙)な奴だったなぁ」
「……そうですねぇ、本当に」
ヘレンも自分の椅子に座り、茶をすすった。
事件の真相が明らかになるにつれ、事件は「KCN事件」から、奇妙な医師シアン・チョウの起こした事件――「ドクター・オッド事件」と呼ばれるようになっていった。
この事件による被害は、次の通り。経済的被害、1億4千万クラム。負傷者及び中毒患者、64名。そして死者、51名である。
なお、この事件で亡くなった公安職員全員に、二階級特進の措置が下された。
「デルタ・ヴィンチ警部補、か。折角俺のすぐ下まで来られたのになぁ」
ヘレンとロメオは事件の後始末が一段落したところで、デルタの墓参りをしていた。
「……」
ヘレンは神妙な顔で、デルタの墓を見つめている。
「……もう、私たちのチームも解散、ですね」
「そうだな……」
ロメオは墓の横に座り込み、煙草をくわえる。
「俺も、もう半月くらいで退職だからな。ヘレンちゃんも公安に来て3年くらい経つし、そろそろ家に戻る時期だろう?」
「ええ……」
ヘレンも墓の横に座る。デルタの墓を挟むように座りながら、ヘレンとロメオは空を見上げていた。
「……陳腐な言い方かも知れませんけど」
「ん?」
「一生の思い出になりました、この3年間。私、絶対忘れませんわ」
「……俺もだ。最後の最後で、いい奴らと組めて嬉しかった」
「へへ……」
ヘレンはくしゃ、と顔を歪ませ、泣きながら笑った。
「……なあ、ヘレンちゃんよ」
ロメオは帽子を深く被り、ヘレンにある頼み事をした。
「もしさ、俺の孫が公安に入ったらさ――その時、ヘレンちゃんがどこで仕事をしてるか分かんないけど――大事にしてやってくれないか?」
「……ええ。もし私が総帥にでもなっとったら、直属の調査員にしますよ。……ふふ」
「そりゃいいや、はは……。
よろしく頼むわ、ヘレン総帥」
「……すい、総帥」「……んあ?」
誰かに体を揺さぶされ、ヘレンは目を覚ました。
「総帥、コウさんたちがいらっしゃいました。私が先に応接室へ向かい、簡単な説明を行いますので、……総帥はお顔を洗ってから、いらしてください」
「ふえ? ……あ、こらアカンわ、やってしもた」
椅子に座ったまま眠ってしまったため、ヘレンの口からあご、のどにかけて、だらりとよだれが付いていた。
「クス、……ヘレンお姉さんは相変わらずですね」
「……せやね、アンタと一緒に遊んどった時、よーうたた寝しとりましたな、そう言えば」
ヘレンはハンカチでポンポンとよだれを拭き、洗面所へと向かおうとした。
「あ、そうそう」
「はい?」
一足先に客を出迎えようとしていた女性を呼び止め、ヘレンはニッコリと笑った。
「懐かしい夢、見とりましたわ。アンタのおじいさんと、一緒にお仕事しとった時の夢」
KCN 終
「あれ?」
新聞を読んでいたロメオが声を上げる。
「どないしはりました、ロメオさん?」
「いやね、この見出し……」
ロメオが指し示した紙面を見て、ヘレンも首をかしげた。
「『KCN事件終結 犯人ドクター・オッド 自爆』……? どこからドクター・オッドって名前が出てきたんでしょうね?」
「だよねぇ……。あいつが自分でそう名乗ってたけども、それを聞いてたのは俺たち公安職員だけ、のはずだよねぇ」
「誰かがペラペラしゃべりよったんでしょうね。……まったく」
「ああ。まったく、だよ」
ロメオは呆れた顔で、新聞を机に置いた。
「……にしてもさ、この『オッド』ってのはなかなか、いいネーミングだよなぁ」
「へ?」
ロメオは茶をすすりながら、そう思った理由を挙げる。
「オッドアイって言うのと、オカマだったって言うのと、優越感に浸ってたクセに劣等感引きずってたってのと……。
どこから見ても、オッド(奇妙)な奴だったなぁ」
「……そうですねぇ、本当に」
ヘレンも自分の椅子に座り、茶をすすった。
事件の真相が明らかになるにつれ、事件は「KCN事件」から、奇妙な医師シアン・チョウの起こした事件――「ドクター・オッド事件」と呼ばれるようになっていった。
この事件による被害は、次の通り。経済的被害、1億4千万クラム。負傷者及び中毒患者、64名。そして死者、51名である。
なお、この事件で亡くなった公安職員全員に、二階級特進の措置が下された。
「デルタ・ヴィンチ警部補、か。折角俺のすぐ下まで来られたのになぁ」
ヘレンとロメオは事件の後始末が一段落したところで、デルタの墓参りをしていた。
「……」
ヘレンは神妙な顔で、デルタの墓を見つめている。
「……もう、私たちのチームも解散、ですね」
「そうだな……」
ロメオは墓の横に座り込み、煙草をくわえる。
「俺も、もう半月くらいで退職だからな。ヘレンちゃんも公安に来て3年くらい経つし、そろそろ家に戻る時期だろう?」
「ええ……」
ヘレンも墓の横に座る。デルタの墓を挟むように座りながら、ヘレンとロメオは空を見上げていた。
「……陳腐な言い方かも知れませんけど」
「ん?」
「一生の思い出になりました、この3年間。私、絶対忘れませんわ」
「……俺もだ。最後の最後で、いい奴らと組めて嬉しかった」
「へへ……」
ヘレンはくしゃ、と顔を歪ませ、泣きながら笑った。
「……なあ、ヘレンちゃんよ」
ロメオは帽子を深く被り、ヘレンにある頼み事をした。
「もしさ、俺の孫が公安に入ったらさ――その時、ヘレンちゃんがどこで仕事をしてるか分かんないけど――大事にしてやってくれないか?」
「……ええ。もし私が総帥にでもなっとったら、直属の調査員にしますよ。……ふふ」
「そりゃいいや、はは……。
よろしく頼むわ、ヘレン総帥」
「……すい、総帥」「……んあ?」
誰かに体を揺さぶされ、ヘレンは目を覚ました。
「総帥、コウさんたちがいらっしゃいました。私が先に応接室へ向かい、簡単な説明を行いますので、……総帥はお顔を洗ってから、いらしてください」
「ふえ? ……あ、こらアカンわ、やってしもた」
椅子に座ったまま眠ってしまったため、ヘレンの口からあご、のどにかけて、だらりとよだれが付いていた。
「クス、……ヘレンお姉さんは相変わらずですね」
「……せやね、アンタと一緒に遊んどった時、よーうたた寝しとりましたな、そう言えば」
ヘレンはハンカチでポンポンとよだれを拭き、洗面所へと向かおうとした。
「あ、そうそう」
「はい?」
一足先に客を出迎えようとしていた女性を呼び止め、ヘレンはニッコリと笑った。
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