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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第6部

    蒼天剣・旅賢録 4

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    晴奈の話、第296話。
    焔流の弱点。

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    4.
     モールは晴奈から刀を借り、両方の手のひらに載せるように持ち上げた。
    「刀が何でできているか、当然知ってるよね?」
    「勿論。鉄でできている」
     晴奈の回答に、モールは深くうなずいた。
    「そ。で、どうやって打つかも知ってるよね?」
    「ええ。鉄を熔かし、高温の状態で叩いて強度を上げ、それを冷やして研いでいく」
    「うん、そんな感じだね。……でさ、打つ上でやっちゃいけないコト、何だか分かるね?」
    「え?」
     モールは刀をトントンと叩き、三人の目を順番に見る。
    「金属ってのは、簡単に言えば高温で熱して、そこから適切に冷やしていくと靭性、延性が上がる。言い換えれば、金属の質が上がるんだ。
     逆に、低い温度でぬるーく熱してそのまんま放置なんかしちゃったりすると、酸化したり靱延性が損なわれたりなんかして、脆くなるんだね」
    「……!」
     ここで、フォルナが弱点に気付いた。
    「つまり、焔流の火は……」
    「そ。鍛える時の1千度近い熱さに比べて、焔流の火は恐らく5、600度前後。これは鋼に対して、あまりにも温いね。しかも火を点けて熱した後、大抵そのまんま鞘に収める。刀は温く熱されて、ゆっくり冷えていく。
     ろくに手入れもせず、何度も『燃える刀』を使えば、大抵の刀はボロボロになっていくだろうね」
    「焔流が、……剣術が、刀を駄目にする、と」
    「そう言うコトだね。まあ、なるべく刀に影響を与えない方法は、いくつもあるけどね」
     楢崎と晴奈は真剣な面持ちで、モールの話に耳を傾ける。
    「1つ目は、その剣術を使った後すぐに冷やして、刀に変なストレスを与えないコト。コレが一番無難な方法じゃないかね。
     2つ目、熱を加えられても耐えうる素材を使って刀を作るか。ま、コレは無茶苦茶な話。んな素材、調達・加工しようと思ったらコスト高すぎて、刀を造るにはもったいなさすぎるね。普通そんなもん造る酔狂なヤツはいない、……と思ったんだけどね、ふざけたコトに晴奈の刀はそーゆー素材と製法で作ってあるね――何考えてこんな高コストでマニアックなもの造ろうと思ったんだか――ま、ともかく。この刀なら焔流を使っても問題無さそうだねぇ」
    「それで、3つ目は?」
     楢崎が鼻息荒く尋ねると、モールは口をわずかに曲げて答えた。
    「暑っ苦しいねぇ、君は。もっとクールになれないね?
     ……んで、3つ目だけどもね、いっそ焔流を使わない。言い換えれば、火系統の術を使わないコト。例えば雷や、地系統の術とかを代用してみるとかね」
    「あっ」
     そこでフォルナが、ポンと手を打った。
    「セイナ、昔お話されてた隠密たちが使っていたのって、そう言う類のものではないでしょうか?」
    「うん?」
    「ほら、央南のテンゲンで戦ったと言うお話。敵の剣士が地面を叩き割ったと……。それはまさに、火属性の代わりに別の属性の要素を、その剣術に代入したのではないでしょうか?」
    「……うーむ?」
     魔術知識が無い晴奈には、フォルナの言わんとすることがさっぱり理解できない。が、楢崎は納得してくれたようだ。
    「それは篠原一派の話だね? 実は『焔流が欠陥』と言っていたのは、その頭領だった篠原なんだ。
     なるほど、これで合点が行ったよ。『新生』焔流と名乗っていたのは、そう言う意味があったんだな」
    「なーに内輪で納得してるのか知らないけどね」
     モールがつまらなそうな顔で話に割り込んでくる。
    「ともかく、焔流の弱点を補うにはその方法しかないと思うね。焔流に関して私が言えるコトは、こんなもんだね」
    「ありがとうございます、モール殿」
     楢崎は深々とモールに頭を下げる。モールは顔を背け、うざったそうに手を振った。
    「いーから、いーから。そーゆー堅っ苦しいのは勘弁してほしいね。
     ……そう言や、君らは悪の組織だか何だかを追ってるって晴奈から聞いたけども、何をしに央北まで行くね?」
    「あ、実は……」
     晴奈は金火公安の調査により、その「悪の組織」――殺刹峰の本拠地が央北にある可能性が高く、現地で調査・討伐を行おうとしていることを説明した。
    「……殺刹峰、ねぇ」
     モールはその名前を、非常に嫌そうな顔をしてつぶやいた。
    「知っているのか?」
    「んー……、ご存知って言うか、狙われたコトがあるね。
     ほら、さっきも言ってた『とっておき』、アレを無理矢理私から手に入れようと襲ってきたんだよね。いやぁ……、あの時は流石に死ぬかと思ったね」
    「モール殿でも、か」
    「いわゆる多勢に無勢、ってヤツだね。いくら私が大魔術師だ、賢者だって言っても、相手は大組織だからねぇ。央北の主要都市であっちこっち待ち伏せされて、一回二回死にかけたね」
    「それで、あの、お姿が……?」
     モールは頬をポリポリとかきながら、小さくうなずく。
    「まあ、そんなトコだね。他にも旅してた女の子二人に助けてもらったり、克のヤツと取引したりして、何とか央北から脱出できたんだよね。
     正直、今はあんまり行きたくない場所だねぇ」
    「ならば何故、この船に?」
     晴奈に尋ねられ、モールは袖からもそもそと木板の束を取り出して膝に並べた。
    「占いの結果、だね。探し物は央北で見つかると出たから、渋々足を向けたってワケだね」
    「探し物?」
    「『魔獣の本』ってのを探してるね。友達の呪いを解くのに、どうしても必要だから」
    「友達、とは雪花殿のことか?」
     晴奈の言葉に、モールは帽子のつばを上げた。
    「君……、ドコで、その名前を聞いたね?」
    「私の師匠は柊雪乃。雪花殿の娘なのだ。訳あって、雪花殿のことを知った次第でな」
    「へぇ……、そうだったのか。あの雪ちゃんの、ねぇ。
     なんだよ君、聞けば聞くほどビックリ要素がポロポロ出てくるじゃないね」
     モールはまた、まじまじと晴奈を見つめた。

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    2016.07.11 修正
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    こちらこそ、いつもありがとうございます。

    RPGなどのTVゲームのイメージが先行するせいで、
    最強の武器とまで思われがちな刀(日本刀)ですが、
    それなりに弱点・欠点はあるわけで。
    「折れない、曲がらない、壊れない」と言う武器があれば、
    それこそ本当に幻想、ファンタジー世界の存在ですね。

    NoTitle 

    先日はありがとうございました。
    才条 蓮です。
    う~~む、やはり刀も耐久度というものがありますよね。それを度外視するとどうしても度外視した刀を作らないといけない・・・というジレンマに駆られるわけですからね。刀は耐久性が比較的他の武器に比べて低いですからね。欠点にもなりますよね。
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