FC2ブログ

黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第6部

    蒼天剣・出立録 1

     ←キャラ紹介;藤川父娘(第3部)、楢崎(第5、6部) →蒼天剣・出立録 2
    晴奈の話、第298話。
    大火と中央政府、金火狐との確執。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    1.
     央北の港、ウエストポートで旅の準備を進めながら、フォルナとエラン、そして晴奈は話をしていた。
    「本当に、息が詰まりそうな街ですね……」
    「そうですわね。どこを見ても、軍人さんばかり」
     フォルナの言う通り、大通りは軍服を着た者たちがしきりに行き交っている。
    「しかし、何故この街にも軍人が? 戦争はこの街の反対、東海岸側で起こっているのだろう?」
    「あ、東岸の街――ノースポートにも結構多いらしいですよ、軍や官僚」
     晴奈の疑問に、エランが答える。
    「でも、もう3年くらい戦争してますから、ノースポートの軍備も少なくなってきたみたいで。だからこの街や、南の方にある街からも、軍備をかき集めてるらしいですよ」
    「だから、この街でも軍人を良く見かけるのか」
    「それに昔から、この街は海軍の演習場になっていると聞いていますわ。普段から多いのでしょうね」
    「ふむ……。そう言えば、ゴールドコーストでは軍関係の施設や人間を見た覚えが無いな。あれだけの大都市なのだから、そう言った者に会っても良さそうなのだが」
    「あー、いないんですよ、軍って」
    「いない?」
     エランの回答に、晴奈は少し驚いた。
    「昔からゴールドマン家って、『自分で戦争を起こすよりも、他人の戦争を助けろ』って言う精神なんですよ。自分たちが最前線で戦うより、どこかで起こっている戦いに参加するタイプなんです」
    「いわゆる『外馬』か。……あまりほめられたものでもないな」
     率直な感想を述べた晴奈に、エランが反論する。
    「まあ、周りから見ればそうかも知れませんけど、戦争に加担するのは何もお金を稼ぐことだけが目的じゃありません。
     長い間戦争を続ければ物価は高騰する、物資は尽きる、人間は困窮すると、ろくなことになりません。だから積極的に介入して、早め早めに戦争を終わらせてあげるんです。早めに終われば国も人も、ウチも安定し、みんなが平和になります。それはいいことでしょ?」
    「ふ、む……」
     エランの主張ももっともだと、晴奈は納得しかける。
    「しかし金、金と躍起になるのも、何だか……」
    「そこがゴールドマン家のゴールドマン家たる由縁ですよ」
     反論する晴奈に対し、エランも折れようとしない。
    「ウチは金で悪魔を倒した家柄ですから」
    「悪魔? 黒炎殿……、克大火のことか?」
    「ええ。ニコル3世の時代に、彼は戦争ではなく交渉でカツミを倒したんです」
    「ほう……。しかし克大火が、金で動く男とは思えぬがな」
    「逆ですよ、逆。ニコル3世は『世界中に出回っているクラム通貨を、金火狐の総力を上げて無力化するぞ』と脅して、カツミ率いる中央政府の政治的圧力に、経済的圧力で対抗したんです。
     これは歴史に名を残す『サウストレードの大交渉』と言われて……」「エラン」
     エランが雄弁に語り始めたところでフォルナが帽子を取り上げ、話をやめさせた。
    「あっ、何するんですか」
    「セイナがぽかんとしてらっしゃいますわ。エラン、あなたはもう少し、空気を読まなければなりませんわね」
    「……母さまと同じこと、言わんといてくださいよ」
     エランはフォルナから帽子を奪い、目を隠すようにかぶる。そこで晴奈は我に返り、小さく手を振った。
    「あ、いや。ぽかんとしていたのは確かだが、少々気になることがあったのでな」
    「気になること?」
    「克大火が中央政府を率いた、と言うのが良く分からぬ。あの方は独立独歩、孤高の人であると思っていたのだが」
    「まあ、厳密に言えば、中央政府を実際に率いたのは3年か、4年くらいですよ。さっき言ってた『大交渉』の後、カツミは手を引いたんです」
    「ほう」
    「恐らく、ニコル3世との交渉で辟易したんでしょうね。
     全権を元いた大臣や共に戦ってきた人たちに譲渡して、それからずっとお金――中央政府の税収の何%かだけ取るだけになったとか」
    「ふーむ……」
     晴奈は昔見た大火の姿を思い出しながら、「やはりあの人は孤高の人――政治に手を出すような器ではないのだろうな」と考えていた。
     そうしている間に、またエランが饒舌になってきた。
    「でもこのことが、現在の中央政府の内乱・政治混乱の根源にもなってるんですよね。つくづくカツミは、政治をかき回す『乱世の奸雄』ですよ」
    「エラン、また……」「あ、いや」
     さえぎろうとするフォルナを、晴奈が止めた。
    「よければ詳しく聞きたい。私は政治方面に疎くてな、央北が今どんな状況にあるのか、教えて欲しいのだが」
    「あ、えっと、じゃあ。そこの喫茶店でお茶でも飲みながら……」
     積極的に尋ねてきた晴奈に気を良くしたエランは、嬉々として語り始めた。
    関連記事




    ブログランキング・にほんブログ村へ





    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    総もくじ 3kaku_s_L.png イラスト練習/実践
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    もくじ  3kaku_s_L.png DETECTIVE WESTERN
    もくじ  3kaku_s_L.png 短編・掌編
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
    もくじ  3kaku_s_L.png 携帯待受
    もくじ  3kaku_s_L.png 今日の旅岡さん
    総もくじ  3kaku_s_L.png イラスト練習/実践
    • 【キャラ紹介;藤川父娘(第3部)、楢崎(第5、6部)】へ
    • 【蒼天剣・出立録 2】へ

    ~ Comment ~

    管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    トラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【キャラ紹介;藤川父娘(第3部)、楢崎(第5、6部)】へ
    • 【蒼天剣・出立録 2】へ