「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第6部
蒼天剣・出立録 5
晴奈の話、第302話。
中枢への出発。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
5.
ジュリアが部屋を移動した、その翌朝。
「よっ、おはようお前ら。夕べは良く眠れたかっ?」
昨夜とは打って変わって上機嫌になったバートが、食堂で向かい合って朝食を取っていたフェリオとシリンに話しかけてきた。
「え、ええ、まあ。それなりに、ぐっすり眠れたっス」
「う、うんうん」
二人はバートの首筋に注目していたが、バート自身はその視線にまったく気付いていない。
「よっしゃ、それじゃ今日も一日頑張っていくか、はははは……」
バートは朗らかに笑いながら、食事を取りに向かった。
フェリオたちはバートが離れたところで、顔を近づけてコソコソと話し始めた。
「……見た?」
「うん。首のところ……」
「キスマークだよな」
「せやな。……言うた方がええかな」
「やめとけ。多分怒る。スーツ着れば隠せるトコだったし、黙っとこう」
「あいあい」
二人はクスクス笑いながら、バートの後姿を見ていた。
一方、こちらはジュリア班。
「おはよう」
楢崎の挨拶に、ジュリアは軽く手を挙げて応える。
「おはよう、ナラサキさん」
「ふあ、あー……。んふふ、おはよー」
今度は小鈴がニヤニヤしながら挨拶してくる。
「おはよう、コスズ」「夕べはお楽しみ?」
挨拶を返したところで、間髪入れず小鈴がカマをかけてきた。
「ふふ、内緒よ」
「あら残念、んふふ……」
3班とも旅の準備が整い、いよいよ中央政府の本拠地、クロスセントラルに向けて出発した。目立たないように、そして情報収集と、全滅の可能性を避けるために、3班はそれぞれ別に行動している。
ジュリア班は港町ウエストポートから海岸沿いに南下し、崖のそばに作られた戦艦製造の街、ソロンクリフから東南に進み、首都に入るルート。
バート班はまっすぐ東に進み、西と北、二つの港からの物資が集められる街、ヴァーチャスボックスから南に方向転換、首都を目指すルート。
フォルナ班は最初から南東に進み、ウエストポートと首都の中継地点、エンジェルタウンを抜けてそのまま首都に進むルートを執る。
「みんな無事に、首都で会いましょう!」
ジュリアの檄に、皆がうなずく。
「おう!」
「必ず!」
3班は互いの無事を祈りつつ、バラバラに歩き始めた。
と――。
「やれやれ、ようやく出発か。なーにをダラダラやってたんだかねぇ」
フォルナ班の後を、モールがこっそりつけていた。
「このモール様を2日も待たせるなんて、いい度胸してるじゃないね(晴奈一行はモールが付きまとっていることなど知る由も無いので、こんな文句はまったくの見当違いなのだが)。
ほれほれほれほれ、早く進めっての」
100メートルほど距離を開け、他の旅人に紛れながらそっと足を進めている。本人は気付かれていないと思っているのだが――。
「……あの、セイナ」
「ああ。つけられてるな」
しっかり、ばれていた。
三人は後ろを振り向かないように、ヒソヒソと言葉を交わす。
「誰なんでしょう、あの魔術師? まさか、もう敵にマークされて……?」
「いや、私とフォルナの知り合いだ。……非常に気紛れな人だよ」
「そう、ですか。……じゃ、心配ない、ですかね?」
心配そうにするエランを見て、フォルナはクスクス笑いながらうなずく。
「ええ。ちょっと偏屈な方ですけれど、悪い人ではありませんわ」
「まあ、本人は気付かれて無いと思っているようだから、このまま放っておこう」
晴奈の提案に、フォルナはもう一度うなずいた。
「ええ、その方がよろしいですわね。あの人の性格でしたら、気付かれていると分かったらぷい、とどこかに去ってしまうかも知れませんわ」
「あの人の腕前は黒炎殿に並ぶと言われているからな。助けを期待するわけではないが、近くにいるだけでも心強い」
晴奈たち三人はしれっと、モールを味方に付けることにした。
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中枢への出発。
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5.
ジュリアが部屋を移動した、その翌朝。
「よっ、おはようお前ら。夕べは良く眠れたかっ?」
昨夜とは打って変わって上機嫌になったバートが、食堂で向かい合って朝食を取っていたフェリオとシリンに話しかけてきた。
「え、ええ、まあ。それなりに、ぐっすり眠れたっス」
「う、うんうん」
二人はバートの首筋に注目していたが、バート自身はその視線にまったく気付いていない。
「よっしゃ、それじゃ今日も一日頑張っていくか、はははは……」
バートは朗らかに笑いながら、食事を取りに向かった。
フェリオたちはバートが離れたところで、顔を近づけてコソコソと話し始めた。
「……見た?」
「うん。首のところ……」
「キスマークだよな」
「せやな。……言うた方がええかな」
「やめとけ。多分怒る。スーツ着れば隠せるトコだったし、黙っとこう」
「あいあい」
二人はクスクス笑いながら、バートの後姿を見ていた。
一方、こちらはジュリア班。
「おはよう」
楢崎の挨拶に、ジュリアは軽く手を挙げて応える。
「おはよう、ナラサキさん」
「ふあ、あー……。んふふ、おはよー」
今度は小鈴がニヤニヤしながら挨拶してくる。
「おはよう、コスズ」「夕べはお楽しみ?」
挨拶を返したところで、間髪入れず小鈴がカマをかけてきた。
「ふふ、内緒よ」
「あら残念、んふふ……」
3班とも旅の準備が整い、いよいよ中央政府の本拠地、クロスセントラルに向けて出発した。目立たないように、そして情報収集と、全滅の可能性を避けるために、3班はそれぞれ別に行動している。
ジュリア班は港町ウエストポートから海岸沿いに南下し、崖のそばに作られた戦艦製造の街、ソロンクリフから東南に進み、首都に入るルート。
バート班はまっすぐ東に進み、西と北、二つの港からの物資が集められる街、ヴァーチャスボックスから南に方向転換、首都を目指すルート。
フォルナ班は最初から南東に進み、ウエストポートと首都の中継地点、エンジェルタウンを抜けてそのまま首都に進むルートを執る。
「みんな無事に、首都で会いましょう!」
ジュリアの檄に、皆がうなずく。
「おう!」
「必ず!」
3班は互いの無事を祈りつつ、バラバラに歩き始めた。
と――。
「やれやれ、ようやく出発か。なーにをダラダラやってたんだかねぇ」
フォルナ班の後を、モールがこっそりつけていた。
「このモール様を2日も待たせるなんて、いい度胸してるじゃないね(晴奈一行はモールが付きまとっていることなど知る由も無いので、こんな文句はまったくの見当違いなのだが)。
ほれほれほれほれ、早く進めっての」
100メートルほど距離を開け、他の旅人に紛れながらそっと足を進めている。本人は気付かれていないと思っているのだが――。
「……あの、セイナ」
「ああ。つけられてるな」
しっかり、ばれていた。
三人は後ろを振り向かないように、ヒソヒソと言葉を交わす。
「誰なんでしょう、あの魔術師? まさか、もう敵にマークされて……?」
「いや、私とフォルナの知り合いだ。……非常に気紛れな人だよ」
「そう、ですか。……じゃ、心配ない、ですかね?」
心配そうにするエランを見て、フォルナはクスクス笑いながらうなずく。
「ええ。ちょっと偏屈な方ですけれど、悪い人ではありませんわ」
「まあ、本人は気付かれて無いと思っているようだから、このまま放っておこう」
晴奈の提案に、フォルナはもう一度うなずいた。
「ええ、その方がよろしいですわね。あの人の性格でしたら、気付かれていると分かったらぷい、とどこかに去ってしまうかも知れませんわ」
「あの人の腕前は黒炎殿に並ぶと言われているからな。助けを期待するわけではないが、近くにいるだけでも心強い」
晴奈たち三人はしれっと、モールを味方に付けることにした。
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NoTitle
ちなみに尾行は相当テクニックを要しますよね。
探偵では必須ですからね。大手の探偵事務所では尾行の訓練もしないといけないですから、なかなか大変ですよね。
・・・まあ、浮気調査も多いですけど。
探偵では必須ですからね。大手の探偵事務所では尾行の訓練もしないといけないですから、なかなか大変ですよね。
・・・まあ、浮気調査も多いですけど。
- #637 LandM
- URL
- 2011.12/16 18:14
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