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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第6部

    蒼天剣・橙色録 4

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    晴奈の話、第307話。
    最初の衝突。

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    4.
     結局、1日目の情報収集では何の成果も得ることができなかった。と言ってもシリンが足を引っ張ったわけではなく、本当に何の情報も無かったのだ。
    「ま、仕方ないっちゃ仕方ないんスけどね」
    「だな。さすが秘密結社と噂されるだけはある」
     バートとフェリオはがっかりした顔で、夕食のパスタをのろのろと口に運ぶ。
     一方、シリンはいつも通りの健啖ぶりを見せていた。
    「ちゅるるるるー」
    「……うるせえ」
    「んー?」
    「麺をすするな」
    「ちゅるるー、あ、ゴメンゴメン」
     既にシリンの横には皿が4枚、空になって置かれていた。
    (うーん、総帥が他の班より多めに調査費用出してくれたのはコレだったんだな)
     フェリオはヘレン総帥の慧眼に感心しつつ、シリンの食べっぷりを眺めていた。
    「すいませーん、こちらー、空いてるお皿をー、お下げしますねー」
     と、妙に語尾を延ばすウエイトレスが三人のところにやって来た。
    「あ、すんません」
    「いーえー」
     褐色の肌に、目が覚めるようなきついオレンジ色の髪をしたその猫獣人は、ゆっくりした仕草で皿をつかもうとする。そこでシリンが5皿目を食べ終え、ウエイトレスに注文する。
    「あ、もう一杯ミートソースパスタおかわりー」
    「まだ食うのかよ」
     バートが突っ込むが、シリンはニコニコしながら深くうなずいた。
    「うん。ココのん美味しいもん。それにホラ、常連さんばっかりみたいやで。やっぱ美味しいねんて」
    「へ?」
     シリンの言葉に、フェリオがきょとんとする。そしてこの時、バートはウエイトレスの目がピクリと震えたのを見逃さなかった。
    「……」
    「何で常連って分かるんだ?」
    「だってホラ、さっきからウチらのコト、みーんなチラチラ見とるもん。『珍しい客が来たなー』とか思てるんとちゃう?」
    「そりゃ違うな」
     バートが煙草に火を点け、黒眼鏡をかけ直す。
    「あれは警戒している目つきだ――標的を逃さないように、ってな」
    「……!」
     ウエイトレスがビクッと震え、持っていた皿を一枚割ってしまった。
     その音を聞きつけ、奥にいた店主らしき人物がこちらに向かってくる。
    「何やってんだてめえ! 後で給料から……、あ?」
     店主は急にいぶかしげな顔になり、そのウエイトレスをにらみつけた。
    「誰だ、お前? ウチの店にいたか?」
    「……いーえー」
     にらまれたウエイトレスは悪びれるどころか、にっこりと笑う。
    「ちょっと服をー、お借りしてましたー」
    「は?」
    「この服気に入ったからー、ちょっといただいちゃいますねー」
    「お、おい?」
     店主が聞き返そうとした瞬間、店主の顔に皿が叩きつけられた。
    「ふげっ……」
    「『オレンジ』隊、作戦開始ですー。目標抹殺、始めまーす」
     そのウエイトレスの号令と共に、先ほどからこちらを注視していた食堂内の客たち全員が、揃って立ち上がった。

     即座に反応したのはバートだった。テーブルを勢い良く蹴り上げ、自分の正面にいた男2名にぶつけた。
    「うおっ!?」「ぐっ!」
     続いて銃を抜き、後ろにいた女にも振り向かずに射撃し、全弾命中させる。
    「ぐは……」
     撃ち尽くしたところで素早く弾を再装填しながら、シリンたちに声をかける。
    「何ボーっとしてやがる、お前ら! 敵襲だ、敵襲!」
    「はっ、はい!」「あ、うん」
     二人は慌てながらも構えを取り、戦闘体勢に入る。バートがリーダー格らしいウエイトレスに銃を向けながら尋ねる。
    「俺たちをいきなり襲ってくるってことは、もしかして……」
    「はーいー。殺刹峰の命令でー、こちらまでやって来ましたー。あ、あたしはですねー、ペルシェって言いますー。ペルシェ・『オレンジ』・リモードですー。
     自己紹介も済んだのでー、この辺でさよならですー」
     ウエイトレス――ペルシェはニッコリ笑いながら、バートに右手を向けた。
    「『ホールドピラー』!」
     食堂の床がバリバリと裂け、バートの四肢を囲むように石の柱が伸びていく。
    「せっ、先輩!?」
    「……」
     石の柱は互いに融合し、あっと言う間にバートを飲み込んで一つの太い柱になった。わずかに空いた穴からは、もくもくとバートの吸う煙草の煙が漏れている。
    「あらー、3人一気に倒しちゃった人なのでー、ちょっとはやるかなーと思ってたんですがー?」
    「……ふー」
     柱の穴からぽふっと煙が吹き出る。
    「甘く見ない方がいいぜ、お嬢ちゃん」
     特に動じてもいない声色で、バートが応えた。
    「『サンダーボルト』」
     バートが術を唱えると、柱にパリパリと電気が走る。
    「あらー?」
     途端に柱は崩れ落ち、バートの姿が現れた。
    「『土』の磁気は『雷』の電気で打ち消せる。魔術の基本中の基本だ」
    「おー、なかなかやりますねー」
     ペルシェはまた、ニッコリと笑った。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    魔術々々、と言いながら、科学的な見方もしていたり。
    科学も元々は魔術の一分野、「錬金術」だったことを考えると、
    親和性は意外に高いです。
    魔術を考えるために科学を紐解いてみると、案外参考になります。

    今年は大変お世話になりました。
    来年もよろしく、お願いいたします。
    ゲーム化、応援しています。

    NoTitle 

    魔法の因果関係!!土の磁気と電気。!!
    おお~~魔法の双方関係が素晴らしいですね。そこまで考えて書いたことなかったですね。ファンタジー物書きなんですけどね。。。勉強になります。

    今年一年、コメントなどありがとうございました。
    今年はブログで公開している小説をゲーム化して販売したりなど、など色々無茶なことをやった年ではありましたが、来年はもっと無茶ができるようにがんばってまいりたいと思います。来年もよろしくお願いします。
    • #652 LandM(才条 蓮) 
    • URL 
    • 2011.12/27 08:55 
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