FC2ブログ

黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第6部

    蒼天剣・赤色録 1

     ←キャラ紹介;ロウ(第5部)、シルビア(第5部)、シリン(第5,6部) →蒼天剣・赤色録 2
    晴奈の話、第311話。
    フォルナ班にも敵の影。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    1.
    「……は!?」
     晴奈は目を丸くした。
     いや、彼女だけでは無い。フォルナも、エランも、そして敵――殺刹峰の戦闘員8名も、そして彼らの動向を隠れて見ていたモールさえも含め、全員呆然としている。
     両者の中間に立つ「マゼンタ」こと、レンマと名乗る短耳の青年を除いて。



     時間は1時間ほど前に戻る。
     エンジェルタウンに到着したフォルナ班は、他の班と同様に情報収集を始めていた。この街は首都と港町の中間にあり、一般的な旅人たちの休憩地点として栄えている。
     そのため、各地の地域情勢や央北各地の情報が良く集まる場所でもあり、情報収集にはうってつけの街である。
     とは言えバートたちの状況と同じく、秘密組織の情報などそうそう集まるものではない。
    「はー……」「あーあ……」
     3時間ほど市街地をうろつき聞き込みを行っていたが何の成果も挙げられず、晴奈たち三人は揃ってため息をついていた。
    「まあ、予想はしていたのですけど」
    「そうだな」
    「ちょっと休みませんか? ずっとしゃべりっぱなしで、のどが渇いちゃいましたよ」
     エランの提案に、二人は素直にうなずいた。
    「そうですわね。それじゃ……」
     フォルナが喫茶店や食堂を探し、辺りを見回したところで、不審な人物に気が付いた。
    「……セイナ、エラン」
    「うん?」
    「どうしました?」
    「あの、あちらの方」
     フォルナが視線だけで、その怪しい者を指し示す。
    「……む?」
    「あれ、あの人……」
    「ええ。先程から何度かお見かけしているような気がしたのですけれど、気のせいでは無さそうですわね」
    「ああ。私も見覚えがある」
    「ええ、僕もです」
    「どうも監視されているようだな」
     三人は見張っている人物に気付かれないよう、そっと顔を寄せ合い小声で話す。
    「どうします?」
    「何の目的かは知らぬが、気持ちのいいものでも無い」
    「じゃ、撒きましょうか」
    「それが得策ですわね」
     三人は同時にうなずき、一斉に駆け出す。と同時に、見張っていた者も走り出した。
    「やはり追いかけてくるか」
    「そのようですわね」
    「どこに逃げましょう?」
     エランは不安そうな顔でフォルナに尋ねる。
    「人通りの多い場所を抜けましょう。人ごみに紛れれば、追跡もしにくいでしょう」
    「あ、そうですね」
    「……」
     うなずいたエランを見て、晴奈は少し呆れた。
    (まったく、どちらが公安職員だか)

     フォルナの提案に従い、三人は大通りへ二度、三度と入り、監視を逃れようとした。が、時間が経つにつれ、三人の顔に不安の色が浮かぶ。
    「む……」
    「あの方、さっきも前にいらっしゃいましたわね」
    「ふ、増えてますよね、追いかけてくる人」
     最初は後ろから1名追いかけてくるだけだったのだが、やがて前からも同様に不審な男が1名、2名と現れた。それに合わせるように、追いかけてくる者も2名、3名と増えていく。
     敵らしき者たちに囲まれつつあることを悟った三人は、もう一度相談する。
    「ど、どうしましょう?」
    「どうもこうも無い。どうにも撒けぬようであるし、こちらから包囲を押し破るしかあるまい」
    「えっ、えぇ!?」
     晴奈の提案に、エランが情けない悲鳴を上げる。それを聞いて、今度はフォルナが呆れた。
    「エラン、あなたは公安職員でしょう? 民間人のセイナに気後れしてどうするのですか」
    「そ、そんなこと言っても」
    「覚悟を決めろ、エラン。……行くぞ!」
     まだおどおどしているエランを引っ張るように、晴奈とフォルナは前にいる敵に向かって駆け出した。
    「……!」
     晴奈たちに迫られた敵は、一瞬ビクッと震えて動きを止める。その隙を突き、フォルナが先制攻撃した。
    「『ホールドピラー』、脚をッ!」
     敵の足元から石柱が伸び、その脚を絡め取る。
    「お、わ」
     敵は前のめりに倒れそうになり、大きく姿勢を崩す。そこで晴奈が、敵の頭に峰打ちを当てた。
    「たあッ!」「ご、ッ……」
     敵はくぐもった声を上げ、脚を石柱に取られたまま、逆V字の姿勢で倒れ込んだ。
    「よし!」
     晴奈とフォルナは倒れた敵の横を抜け、彼らの包囲から脱出した。その後をバタバタと走りながら、エランが追いかける。
    「……僕、何のためにおるんやろ」
     エランのつぶやきには、誰も答えてくれなかった。



     包囲をかいくぐったかに見えたが、倒したはずの敵はすぐに復活し、他の仲間と一緒に追いかけてきた。
     さらにもう一重包囲がかけられていたらしく、晴奈たちの前に武器を持った敵4名と、赤毛の青年が現れた。
    「く……!」
     前後から敵に挟まれ、うなる晴奈に、その青年が穏やかに声をかけた。
    「止まってください、……コウさん」
    「何?」
     名前を呼ばれ、晴奈は面食らう。
    「何故私の名を?」
    「ファンだから」
    「ふぁ、ファン?」
     思いもよらない敵の台詞に、晴奈は硬直した。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    2016.07.18 修正
    関連記事


    ブログランキング・にほんブログ村へ





    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    総もくじ 3kaku_s_L.png イラスト練習/実践
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    もくじ  3kaku_s_L.png DETECTIVE WESTERN
    もくじ  3kaku_s_L.png 短編・掌編
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
    もくじ  3kaku_s_L.png 携帯待受
    もくじ  3kaku_s_L.png 今日の旅岡さん
    総もくじ  3kaku_s_L.png イラスト練習/実践
    • 【キャラ紹介;ロウ(第5部)、シルビア(第5部)、シリン(第5,6部)】へ
    • 【蒼天剣・赤色録 2】へ

    ~ Comment ~

    管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    トラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【キャラ紹介;ロウ(第5部)、シルビア(第5部)、シリン(第5,6部)】へ
    • 【蒼天剣・赤色録 2】へ