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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第6部

    蒼天剣・赤色録 3

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    晴奈の話、第313話。
    ツンデレ賢者。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    3.
    「はーっ、はーっ……」
     晴奈はまだ青ざめた顔で、椅子にへたり込んでいる。
    「まあ、その、……災難でしたね、ホントに」
     エランは同情した顔で、晴奈に水を差し出す。
    「……んぐ、うぐっ」
     晴奈は半ばひったくるように水を受け取り、一息に飲み干した。
     モールの助けでレンマの襲撃を回避したフォルナ班は、ともかく晴奈を落ち着かせるため、近くの喫茶店で休憩していた。
    「はー……」
    「なるほどねぇ、晴奈はあーゆータイプが大嫌いか」
     気味の悪い敵から逃げ回り、疲れきった三人を尻目に、モールだけがケラケラと笑っている。
    「誰でも嫌悪すると思いますわ、あのような方だと」
    「ま、私だってあんなアホは大っ嫌いだけどもね、晴奈の怯え方は激しすぎじゃないかって思うんだけどね」
    「……うーむ、何と言うか」
     晴奈はコップを両手で握りしめながら、己の動揺を思い返す。
    「生理的に苦手、と言うか。ともかく、殴られても蹴られても嬉々として向かってくるような輩を好きになれる神経は、私には無い」
    「まあ、それは同感だねぇ。……ところで、気になってたことがあるんだけどね」
     モールは杖を撫でながら、敵への考察を話す。
    「あのレンマってヤツ、晴奈の攻撃ボコボコ食らってたわりには平然としてたよね」
    「ああ、確かに」
    「手加減なんかしてないよね」
    「当たり前だ」
    「女で猫獣人だから、腕力は元々そんなに無いとは言え、それでも一端の剣士だ。その拳で目一杯殴りつけて平気、ってのはちょっと気になるねぇ」
    「ふむ」
     モールの指摘に、三人は一様にうなずく。と、エランが恐る恐る手を挙げて発言する。
    「あの、それに、レンマが連れていた部下も異様にタフだったような。セイナさん、思いっきり刀で叩いてましたよね、頭」
    「ああ」
    「僕だったら、あんなの食らったら死んじゃいますよ」
    「いや、君じゃなくとも重傷は免れないね、峰打ちとは言え」
     モールの言葉にフォルナが「あら」と声を上げ、にっこりと微笑んだ。
    「いつからご覧に? そのご様子だと、ずっと前から後をつけていらしたのですね」
    「ん? ああ、あー、と、その、まあ。偶然だね、偶然。うん、偶然通りかかったね」
     モールはしどろもどろに返答しながら、ぷいと顔を向けた。
    「ま、まあ。それは置いといて、ね。
     峰打ちとは言え、刀は金属製の武器だ。そんなもんで頭を叩かれたら、間違いなく重傷を負うはずだね。でも、敵は平気で襲い掛かってきた。異様に頑丈だと思わないね?」
    「ふむ、確かに」
    「どうやら魔術か何かで、相当体を強化してるみたいだねぇ。……ま、役に立つかどうかわかんないけどね」
     モールは自分のかばんをもそもそと漁り、一冊のノートを取り出した。
    「何て言ったっけ、狐っ娘」
    「わたくしですか? フォルナ・ファイアテイルです」
    「あ、そうそう、フォルナだったね。ちょっと耳貸し」
    「はい?」
     モールはノートを紐解きながら、フォルナに何かを教えた。
    「……はあ、……ええ、……なるほど」
    「この術を使えば、しばらくはどんな術効果も無効化されるはずだね」
    「でもこの術、『フォースオフ』と同じような……」
    「ちょっと違うね。それよりもう一段効果的な術になってる。いっぺん、機会があったら試しに使ってみな、超面白いコトになるからね」
    「はあ……」
     ニヤニヤしているモールに対し、フォルナはどうにも納得がいかなそうな顔をしている。
    「あ、そうそう。コレも教えとく。さっき使った、姿を消す術。割と便利だから、しっかり覚えとくようにね」
    「はい」
    「あ、それからね……」
     その後も、モールはあれこれと術を教えてくれた。

    「それじゃ、私はこの辺でね。気を付けなよ」
     モールはひとしきり術を教えたところでそそくさと席を立ち、そのままどこかへ去ってしまった。
    「……あの人、何だかんだ言って僕たちのこと、助けてくれるんですね」
    「ああ」
    「面白い方ですわね」
     三人はモールの素っ気無い口ぶりと態度の違いに、クスクスと笑っていた。
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