「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第6部
蒼天剣・紫色録 1
晴奈の話、第316話。
風の魔術剣。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
1.
バート班がペルシェの襲撃を受け、フォルナ班がレンマに追い回されていたのと同様に、ジュリア班も殺刹峰からの襲撃を受けていた。
ウエストポートを発って1週間後、ジュリア班は軍艦製造の街、ソロンクリフに到着していた。
「ふーん……」
街は崖を挟んで上下に広がっており、崖上の街からは船を造っている様子が見渡せる。それを眺めていた小鈴は、率直な意見を述べた。
「でっかいわねぇ」
「そりゃ、船だもの。でも、軍艦じゃ無さそうね。普通の商船みたい」
「まあ、軍事機密をこーんな真上から見れるわけないしねぇ」
ジュリアと小鈴は半分観光しているような気分で、下の街を見下ろしていた。2人の後ろにいる楢崎も、同様にのんびりとした様子で声をかける。
「お嬢さん方、ひとまず休憩してはどうだろう?」
「そーね、歩き通しだったし。んじゃ、どっかに宿取ろっか」
「ええ。……商業関係は、上の街が担当してるみたいね。宿もこっちの方かしら」
ジュリアは辺りを見回し、そしてある一点に目を留めて硬直した。
「……ん? どしたの、ジュリア」
「あれ、ちょっと見て」
ジュリアが顔を向けている方向に、小鈴も楢崎も目を向けてみた。
「おや……?」
「何か、睨んできてるわね」
「ええ、明らかに敵意を抱いているようね」
三人の視線の先には、紫の布で頭と口元を覆った短耳の女性と、武器を持った4名の男女がいた。「どーする?」
「うーん」
「こちらへ向かってくるな……」
「逃げとく?」
「そうね。変な争いはしたくないし」
三人は同時にコクリとうなずき、一斉に身を翻した。
「あ……」
だが、反対側からも同じような者たちが4名やってくる。
「囲まれちゃった?」
「そのようだね」
「参ったわね……」
そうこうしている内に、敵らしき者たちが小鈴たちの前後に立ち止まった。
「そこの三名、大人しくしなさい」
「してるじゃない。今までじっとしてたでしょ、ココで」
声をかけてきた紫頭巾に、小鈴はふてぶてしく返す。頭巾は言葉に詰まり、憮然とした目を小鈴に向ける。
「……ええ、そう、ね。……コホン。我々は殺刹峰の者よ。我が組織を調べようとしているあなたたちを、看過することはできない。よって」
頭巾は片手を挙げ、小鈴たちを囲んでいる者たちに指示しようとした。
「抹殺開始よ。全員、かか……」
だが頭巾が手を挙げたところで、楢崎が彼女の鳩尾に、鞘に納めたままの刀を突き込んだ。
「……っ」
「僕らはこんなところで足止めされるわけには行かない。強行突破させてもらうよ」
「……そうは、行かない!」
楢崎の初弾を食らった頭巾は、鳩尾を押さえながらもう一度指示した。
「かかれ! 全員、生かしてこの街から出すなッ!」
「はい!」
小鈴たちを囲んでいた者たちが武器を構えるのを見て、小鈴とジュリアも武器を手に取った。
「しょーがないわね」
「やれやれ、って感じね」
楢崎も依然鞘に納めたまま、刀を構える。
「ふーむ……」
楢崎は納得が行かなさそうな顔をして、小鈴たちに小声で話しかけた。
「妙だよ、どうも」
「え?」
「今の一撃、普通は悶絶するくらい痛いはずなんだ」
それを聞いた二人は、事も無げにこう返した。
「んじゃ、普通じゃないってコトね」
「面倒臭そうね、戦うのは」
年長者で、様々な経験を積んでいるからだろうか、この三人は他の2班に比べてとても冷静だった。
「じゃ、やっぱり逃げよっか」
「ええ、そうしましょ」
楢崎の言葉を聞いて、ジュリアは武器の警棒を納める。そして小鈴は何か、もごもごとつぶやいている。楢崎はジュリアに耳打ちした。
「どうするんだい? 三方に敵、後ろは崖。何かいい策が?」
「ええ。こっちには水に土、おまけに風の術まで使える魔法使いがいるもの」
「なるほど」
小鈴が呪文を唱え終わり、楢崎とジュリアに声をかけた。
「準備できたわ! つかまって!」
「おう!」「了解よ!」
二人が小鈴の巫女服の袖をつかんだところで、小鈴が術を発動した。
「『エアリアル』、さいならー」
三人は空に浮き上がり、そのまま崖を滑り降りていった。
「あっ、逃がすかッ!」
頭巾は眼下へ逃げていく小鈴たちをにらみつけ、腰に佩いていた剣を抜いた。
「くらえッ!」
ごう、と風のうなる音が響く。
「……?」
次の瞬間、三人は強い衝撃を受けて弾き飛ばされた。
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風の魔術剣。
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バート班がペルシェの襲撃を受け、フォルナ班がレンマに追い回されていたのと同様に、ジュリア班も殺刹峰からの襲撃を受けていた。
ウエストポートを発って1週間後、ジュリア班は軍艦製造の街、ソロンクリフに到着していた。
「ふーん……」
街は崖を挟んで上下に広がっており、崖上の街からは船を造っている様子が見渡せる。それを眺めていた小鈴は、率直な意見を述べた。
「でっかいわねぇ」
「そりゃ、船だもの。でも、軍艦じゃ無さそうね。普通の商船みたい」
「まあ、軍事機密をこーんな真上から見れるわけないしねぇ」
ジュリアと小鈴は半分観光しているような気分で、下の街を見下ろしていた。2人の後ろにいる楢崎も、同様にのんびりとした様子で声をかける。
「お嬢さん方、ひとまず休憩してはどうだろう?」
「そーね、歩き通しだったし。んじゃ、どっかに宿取ろっか」
「ええ。……商業関係は、上の街が担当してるみたいね。宿もこっちの方かしら」
ジュリアは辺りを見回し、そしてある一点に目を留めて硬直した。
「……ん? どしたの、ジュリア」
「あれ、ちょっと見て」
ジュリアが顔を向けている方向に、小鈴も楢崎も目を向けてみた。
「おや……?」
「何か、睨んできてるわね」
「ええ、明らかに敵意を抱いているようね」
三人の視線の先には、紫の布で頭と口元を覆った短耳の女性と、武器を持った4名の男女がいた。「どーする?」
「うーん」
「こちらへ向かってくるな……」
「逃げとく?」
「そうね。変な争いはしたくないし」
三人は同時にコクリとうなずき、一斉に身を翻した。
「あ……」
だが、反対側からも同じような者たちが4名やってくる。
「囲まれちゃった?」
「そのようだね」
「参ったわね……」
そうこうしている内に、敵らしき者たちが小鈴たちの前後に立ち止まった。
「そこの三名、大人しくしなさい」
「してるじゃない。今までじっとしてたでしょ、ココで」
声をかけてきた紫頭巾に、小鈴はふてぶてしく返す。頭巾は言葉に詰まり、憮然とした目を小鈴に向ける。
「……ええ、そう、ね。……コホン。我々は殺刹峰の者よ。我が組織を調べようとしているあなたたちを、看過することはできない。よって」
頭巾は片手を挙げ、小鈴たちを囲んでいる者たちに指示しようとした。
「抹殺開始よ。全員、かか……」
だが頭巾が手を挙げたところで、楢崎が彼女の鳩尾に、鞘に納めたままの刀を突き込んだ。
「……っ」
「僕らはこんなところで足止めされるわけには行かない。強行突破させてもらうよ」
「……そうは、行かない!」
楢崎の初弾を食らった頭巾は、鳩尾を押さえながらもう一度指示した。
「かかれ! 全員、生かしてこの街から出すなッ!」
「はい!」
小鈴たちを囲んでいた者たちが武器を構えるのを見て、小鈴とジュリアも武器を手に取った。
「しょーがないわね」
「やれやれ、って感じね」
楢崎も依然鞘に納めたまま、刀を構える。
「ふーむ……」
楢崎は納得が行かなさそうな顔をして、小鈴たちに小声で話しかけた。
「妙だよ、どうも」
「え?」
「今の一撃、普通は悶絶するくらい痛いはずなんだ」
それを聞いた二人は、事も無げにこう返した。
「んじゃ、普通じゃないってコトね」
「面倒臭そうね、戦うのは」
年長者で、様々な経験を積んでいるからだろうか、この三人は他の2班に比べてとても冷静だった。
「じゃ、やっぱり逃げよっか」
「ええ、そうしましょ」
楢崎の言葉を聞いて、ジュリアは武器の警棒を納める。そして小鈴は何か、もごもごとつぶやいている。楢崎はジュリアに耳打ちした。
「どうするんだい? 三方に敵、後ろは崖。何かいい策が?」
「ええ。こっちには水に土、おまけに風の術まで使える魔法使いがいるもの」
「なるほど」
小鈴が呪文を唱え終わり、楢崎とジュリアに声をかけた。
「準備できたわ! つかまって!」
「おう!」「了解よ!」
二人が小鈴の巫女服の袖をつかんだところで、小鈴が術を発動した。
「『エアリアル』、さいならー」
三人は空に浮き上がり、そのまま崖を滑り降りていった。
「あっ、逃がすかッ!」
頭巾は眼下へ逃げていく小鈴たちをにらみつけ、腰に佩いていた剣を抜いた。
「くらえッ!」
ごう、と風のうなる音が響く。
「……?」
次の瞬間、三人は強い衝撃を受けて弾き飛ばされた。
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今日の旅岡さん

~ Comment ~
NoTitle
雰囲気ってありますよね。敵意・・・みたいな。
言葉を交わすわけではなく、感じるっていうものですけど。
・・・あれは五感では言い表せない何かがありますよね。
第6感みたいなものですよね。
それが鋭すぎるのも難儀ですけどね。
言葉を交わすわけではなく、感じるっていうものですけど。
・・・あれは五感では言い表せない何かがありますよね。
第6感みたいなものですよね。
それが鋭すぎるのも難儀ですけどね。
- #697 LandM
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- 2012.02/14 08:03
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NoTitle
時折、勝手に敵と見なされて攻撃されることが、多々あります。
敵意もガンガンぶつけられるので、かなり辟易しますね。
ああいう雰囲気は、実に感じたくない。