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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第6部

    蒼天剣・紫色録 2

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    晴奈の話、第317話。
    ドSな小鈴。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    2.
    「きゃ……!?」
     弾かれた衝撃で、ジュリアは小鈴の袖を離してしまう。
    「ジュリア!」「なんのッ!」
     小鈴は一瞬顔を青くしたが、術の集中に戻る。その間に楢崎が豪腕を活かし、空中でジュリアの腕をがっちりとつかんだ。
    「……あ、ありがとう、ナラサキさん」
    「お安い御用だよ」
    「よっし、バランス回復っ!」
     小鈴も何とか体勢を立て直し、三人は無事下町に着地した。
    「チッ……!」
     崖の上で三人の動きを見ていた頭巾は舌打ちし、連れて来た兵士たちに号令をかける。
    「急いで追うわよ! もう一度言うわ、ここから生かして返さないで!」
    「了解!」
     頭巾と兵士たちは、大急ぎで下町への長い階段を下りていった。

    「んっふっふ」
     一方、こちらは小鈴たち。
    「そー簡単に追いつかれてたまるもんですかっての」
    「どうするんだい?」
    「こーすんのよ」
     小鈴は杖を、頭巾たちが下りている最中の階段に向けた。
    「秘術、『クレイダウン』!」
    「……?」
     小鈴が叫んだ術の名前を聞いて、ジュリアはきょとんとしている。
    「何それ? 聞いたことない術ね?」
    「あたしのオリジナル。ま、見てて見てて」
     小鈴はニヤニヤしながら敵の動きを眺めている。と――。
    「きゃあっ!?」
    「おわああっ!?」
     階段の一部がぐにゃりと曲がり、敵全員が落下した。
    「……うわあ、容赦無しね」
    「そりゃ、敵だし。ちなみに落ちた先も粘土層に変えてあるから、あいつらめり込んでしばらく動けなくなるはずよ」
    「コスズ、あなたって本当にアコギな術ばっかり作るわね。昔も土の術で舟作って、私を無理矢理乗せて……」
    「え、まだ覚えてたの? ……んふふふ、ふ」
     小鈴は口に手を当て、クスクス笑っている。楢崎はその様子を見て、呆れ気味にこうつぶやいた。
    「……ひどいなぁ、橘君は」

    「く、そっ」
     小鈴の目論見通り、頭巾たちは揃って地面にめり込んでいた。だが他の2隊同様、彼女らも薬や魔術で体を強化している。
    「全員、動ける!?」
    「はい、大丈夫です」
    「でも、足がめり込んで……」
     頭巾はため息をつき、地面に半分沈みかかった剣を抜いて掲げた。
    「全員、動かないでよ! はあッ!」
     頭巾が剣を振るい、地面がズバッと裂ける。
    「さあ、全員抜けて!」
    「は、はい!」
     兵士たちは裂けた地面からゾロゾロと抜け出し、体勢を整え直す。
    「あいつら、どこッ!?」
    「風向きなどから考えて恐らく、ここからそう離れていないかと」
    「それじゃ追うわよ!」
     頭巾と兵士たちは足並みを揃え、小鈴たちが着地した地点へと急いだ。

     が、これも小鈴は予想済みだった。
     着地した場所からはとっくに離れていたし、敵が追いついてくることも想定していた。
    「……ふーん」
     小鈴たち三人は物陰に隠れ、追いついた敵の様子を伺っていた。
    「ここから見る分にはまだ皆、普通の人間に見えるんだけどね」
    「そうね。でもナラサキさん、戦ってみた感じは……」
     楢崎は小さくうなずき、ジュリアに同意する。
    「ああ。結構力を入れて峰打ちしたのに、手ごたえが異様に硬かったんだ。まるで、岩を相手にしている気分だった。まともにやりあってたら、かなり苦戦しそうだよ」
    「敵にはあのドクター・オッドが付いてたのよね、そう言えば。
     性格はともかくとして、医者としての腕は確かだったらしいから、何らかの外科手術か投薬をされている可能性は、非常に高いわ」
     ジュリアの考察に、小鈴が付け加える。
    「それに、魔術による強化も施されてるかもね。
     二人にはあんまり感じられないかもだけど、あいつらの体から、魔術使用時に良く見る紫色の光って言うか、もやみたいなのがチラチラ見えてる。
     正直、大口径のライフルで撃っても大して効かないんじゃないかしら」
    「それは穏やかじゃないね。……おや」
     楢崎が敵の様子を見て、声を上げる。
    「一人、倒れてる」
    「え?」
     小鈴とジュリアも、楢崎の視線の先に目をやる。
    「う……、うっ……、がっ……」
    「ど、どうしたの!?」
     兵士の一人が胸を押さえ、悶絶している。間もなく黄色い液体を吐き出し、動かなくなった。
    「な……、え……?」
     頭巾はうろたえ、倒れた兵士を揺する。
    「どうしたのよ!? ねえ、ねえってば!」
    「……」
     だが、頭巾の呼びかけに兵士は応えない。口からダラダラと、黄色く濁った血を吐き出すばかりである。
    「これって……、え、ねえ、何……?」
     頭巾は困惑しているらしく、周りの兵士をきょろきょろと見ている。
     と――楢崎が声を上げる。
    「おや、口布が取れたね。……なるほど、口布を当てていたわけだ」
     楢崎の言う通り、頭巾が口に当てていた紫色の布が落ち、彼女の顔があらわになる。
    「……!」「うわ、えぐっ」
     その素顔を見て、小鈴もジュリアも口を抑え、うめく。
     頭巾の顔には、左目の上から右頬にかけて刀傷がついていたからだ。いや、それだけではない。刀傷に沿うように、火傷も重なっている。
    「……っ!」
     頭巾は慌てて口布を拾い、顔を隠しながら叫んだ。
    「プラン00よ! これは不測の事態だから、私たちは十分な活動ができないと判断したわ! 撤退よ、撤退!」
    「りょ、了解!」
     兵士たちと頭巾はバタバタと騒がしい音を立てて、その場から立ち去ってしまった。
    「……えーと」
     振り返った楢崎に、ジュリアが冷静な声でこう返した。
    「危険回避ね。もう少し様子を見てから、あの倒れてる兵士を調べましょう」

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    2016.07.18 修正
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    お久しぶりです。
    長らく休養されていたようで、心配していました。
    どうにか復帰されたようで、何よりです。

    発売、おめでとうございます。
    イラストが確認できないのは残念ですね。
    また時間が空けば、購入させていただきます。

    あまり無理されぬよう、くれぐれもご自愛ください。

    NoTitle 

    最近寄れてなくてすいません。
    風邪で休養中でした。
    なかなか今年は思うように体調面がいかないもんですね。
    それでもやることはやっております。
    明日!!!!!
    GH1900年~焔の刀にて正義をなす~の2部が発売になりました!!ユキノのシェクスピア絵がすごいです!!最近、ファイル共有が厳しくなり、ゲームを渡すことができました・・・。。。児童ポルノ関係やFBIの監査などで、ファイル共有のサイトが少なくなりましたからね・・・。すいません、プレイをしたかたら、105円なので購入してください。。。。というスタンスになりました。協力していただいているのに本当にすいません。
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