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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第6部

    蒼天剣・紫色録 3

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    晴奈の話、第318話。
    マヌケな鉢合わせ。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    3.
     敵が完全に逃げ去ったのを確認したところで、小鈴たちは倒れた兵士を観察することにした。
    「あんまりココでじっとしてちゃ、人が来るわ。何だかんだ問いつめられたら面倒だし、ぱぱっと見ちゃいましょ」
    「そうね。……身分を証明するものは無し。武器は小剣と、短剣だけ。……これは何かしら?」
     兵士のポケットから、青い液体の入った薬瓶がころんと出てきた。
    「見た目からすると、毒かな?」
     楢崎の意見にジュリアがうなずきつつ、こう返す。
    「もしくは、身体強化の薬かも。押収しておきましょう」
    「他には何にも無さそーね。じゃ、撤収しましょ」
     小鈴たちは急いでその場を離れ、人通りの多い港へ入った。
    「さてと、上町にはしばらく行けなさそうだし、今日、明日くらいはこっちにいることになりそうね」
    「あなたが階段壊したんじゃない」
     ジュリアの突っ込みを流しつつ、小鈴は今後の行動を尋ねてみる。
    「んで、これからどうしよっか? まず宿探しの方が先よね」
    「……ええ、そうね。こっちは工場や造船所ばかりだし、数は少なそうだから、あなたが階段を壊したせいでこっちに締め出された旅人とかが、慌てて宿探しを始めるでしょうから、早めに探さないとね」
    「押すわねぇ、アンタも」
     小鈴が口をとがらせたところで、楢崎が話に加わる。
    「でも、さっきの敵も恐らくこちらに閉じ込めらているだろうし、ここで2日泊まるとなると、鉢合わせするかも知れないね」
    「あー」
     小鈴はそっぽを向いて、杖の鈴をいじり始めた。
    「あなたが……」「しつこいっ、ジュリア」

     楢崎の読み通り、先程の頭巾たちは上町に上る階段の前で舌打ちしていた。
    「チッ……」
    「これじゃ登れそうにありませんね」
    「仕方ない、全員擬装用意!」
     頭巾の号令に従い、兵士たちは羽織っていた黒いコートを脱ぎ、どこにでもいそうな町民の姿になった。
     頭巾自身も顔を隠していた布をフードに変え、街娘の姿になる。
    「階段が修復されるまで、各自散開して行動すること! 修復され次第この場所に集合し、本拠地に帰還! 以上、解散!」
     頭巾の号令に従い、兵士たちは街路の奥に消えていった。全員の姿が見えなくなったところで、頭巾も歩き出した。
    「……さてと。私もどこかに身を潜めなきゃ」



     どうにか下町での宿を見つけた小鈴たちは、黙々と昼食を取っていた。
    「なーんか美味しくないわね、この魚」
    「うーん、確かに」
    「栄養無さそうね、何と言うか」
     食堂で出された魚料理は妙に味気なく、調味料の味しかしない。
    「まあ、造船所のすぐ近くだろうしねぇ」
    「魚の健康に悪いんだろうね」
     味にうるさい小鈴がぼやいているが、ジュリアは気に留めていない。
    「食事を楽しみに来たわけではないし、別にいいじゃない」
    「ま、そーだけどね」
     と、一足先に料理を平らげ、水に手を伸ばした楢崎が顔を上げた。
    「ん……?」
    「どしたの?」
    「いや、何か……」
     言いかけた楢崎の顔がこわばっている。
    「うーん……。参ったね、どうも」
     楢崎の視線の先には、先程の紫頭巾の姿があった。
    「……あっ」
     食堂の入口で立ち止まったまま、頭巾は硬直している。口に手を当てたり、フードを直したりと、混乱しているのが良く分かる。
    「えっと、……君?」
     おろおろしている頭巾に、楢崎が声をかけた。
    「ひゃ、ひ?」
     恐らく「はい?」と言おうとしたのだろう。頭巾は変な声を上げて反応した。
    「そこで突っ立っていたら、他のお客さんの邪魔になる。とりあえず、こっちに来たらどうだい?」
    「な、何で敵の命令なんかっ」
     うろたえる頭巾に対し、楢崎は妙に飄々とした態度を執る。
    「命令じゃないよ、提案だ。それとも敵を前にして背を向けるのが、央北の剣士の戦い方なのかな?」
    「ちが……、違うわよ、色々っ。……ま、まあ、応じない理由なんてないし、行ってあげるわ」
     頭巾はギクシャクとした足取りで、楢崎の隣に座った。座ったところで、楢崎が質問を投げかける。
    「他の人は?」
    「へ?」
     楢崎の応対に、頭巾は一々妙な声を上げている。
    「君と一緒にいた、他の人はどこに行ったのかな?」
    「え、あの、……あなたたちを倒すのに、不都合が生じたのよ。だから今回は、何もしないであげるわ」
    「答えになってないよ。どこに行ったの?」
    「うっ……」
     フードで隠れてはいるが、頭巾の顔色が悪くなっているのが伺える。横で見ていた小鈴は半ば呆れつつ、頭巾を哀れんでいる。
    (まあ、3対1だもんねぇ。そりゃ顔色悪くなるってもんよ。……にしても、マヌケねぇ)
    「その態度だと、近くにはいないみたいだね。……君、名前は?」
    「も、モエ。藤田萌景」
    「ふむ、央南人か。その傷、焔流の者と戦ったのかな?」
    「えっ?」
     楢崎に指摘され、モエは両手で顔を隠す。
    「み、見たの!?」
    「ああ、悪いとは思ったんだけど。それで、どうなんだい? 戦ったの?」
    「……」
     モエは何も言わずにうつむく。
    「どうしたのかな?」
    「……言う理由なんか無い」
    「そうか。それじゃ次、聞くけど」
     楢崎は先ほど倒れた兵士から入手した薬瓶を見せる。
    「これ、何の薬かな?」
    「それ、は……」
     モエは一瞬顔を上げるが、またうつむく。
    「教えて欲しいんだけど、ダメかな?」
    「言いたくない」
    「そうか。それじゃ、さ」
     楢崎はぐい、とモエの腕を取った。
    「飲んでみてくれるかな?」
    「え」
     楢崎の言葉に、モエの顔色が変わった。
    「やっぱり毒なのかい?」
    「ち、違うわ。それ、飲み薬じゃないもの」
    「なるほど。どうやって使うのかな?」
    「……」
     また黙り込んだモエを見て、ジュリアが声をかけた。
    「モエさん、でしたか。あまり我々を手間取らせないでいただきたいのですけれども」
    「えっ?」
    「お分かりでしょうが、これは既に尋問です」
    「……」
     モエの顔色が、一層悪くなった。

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    2016.07.18 修正
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    地味な尋問から派手な一騎打ちまで。
    広く書いてますね、この第6部は。
    「蒼天剣」の中で一番、ファンタジーの王道を行く展開だと思います。

    販売、おめでとうございます。
    これからも頑張ってください。

    NoTitle 

    おお~~完全なる尋問ですね。。。
    なかなかこういう手の尋問って自分では書いたことはないですね。
    まあ、ファンタジーも結構派手なファンタジーですからね。
    こういうアンダーなところも好きですね。

    おかげさまで、GH1900年2部のゲーム販売開始しました!!
    ありがとうございます!!
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